宴会2日目と来客
リリアーヌさんを連れてきた。
転移門を見せたらかなり驚かれた。
そして、屋敷から出たら顔を引き攣らせた。
何か、問題でもあったかな?
その後、薬草畑を見せたら売ってくれとせがまれた。
めっちゃ興奮している。
胸を押し付けるの止めてくれませんか?
イヤじゃないですけど。
興奮していた理由は、何でも生育した状態で見るのは、初めてのモノばかりだそうだ。
いや、アンタのところから買った乾燥物を植えたら復活したんだが……
ここのなら種あるからいるか?
あっ、いるのね。後であげるよ。
その代わり、雑草取りしてくれない?
「喜んでやります!」
「じゃあ、任せた。終わったら温泉入るといいよ。汗をかくだろうし」
小さい畑だから直ぐに終わるだろ。
俺は、厨房へと向かう。
宴会2日目が決定した。
さすがに2日目だと準備が疲れる。
昨日の後片付けもあるからな。
「夜は、焼き肉にする」
もう、一思いに各自に焼いて貰おう。
こっちも楽だし。
各種肉と野菜をトレイに乗せて出すだけ。
果物も用意しておこう。
デザートには、冷凍ミカンでも出すかな。
これは、俺の魔剣運用実験の成果でもある。
普通に氷魔法で凍結させると、カチカチに凍り過ぎて食えたものではない。
瞬間冷凍させるがスプーンで掬えるくらいの固さ。
これを叶えたのは、氷魔剣のナイフだ。
氷魔剣のナイフには、下級の凍結魔法を刻印したので、凍結の効果が発動する。
ナイフを果物に刺して10秒もすれば完成だ。
「それより、昼は何にしよう」
今は、午前中。
晩飯の前に、昼飯だ。
何処ぞの主婦かと言いたい。
いつもは、夜以外はフィーネとミズキに任せている。
だが、今は人数が多いので俺も当然参加だ。
「昼は、パスタにしよう」
生地を練って、手巻き式の機械に通す。
構造は、水鉄砲みたいな物だから直ぐに作れた。
今では、家の愛用品だ。
「ニンニクが足りないから取ってくる。2人は、麺造りを続けていてくれ」
「あっ、トマトもお願いして良いですか?」
「分かった」
畑に採取へ向かう。
今、リリスたち指導の元、カトレアたちが働いている。
働いているはず……。
「何、休んでキュウリ食ってんだよ」
わざわざ塩まで出して食っていた。
「少しくらいケチケチしなさんな。ほれ、ちゃんと働いたよ」
指差された場所は、耕されて更地になっていた。
「私たちが雑草取りしている間にカトレアさんが一人でやりました」
リリスが説明に来た。
「マジで?」
「本当さね。私も親父にやらされた口でね。こういうのは、慣れてるのさ」
「なら、自由にして良いよ。暇なら図書室に行くといい。絵本とか小説とか置いているから」
俺がこの世界の事を知ろうと少しずつ集めている。
「活字ちょっとパス。疲れるのよぉ。探索していいかい?」
「あの建物と屋敷の上に上がらなきゃ良いよ。シオンたちが少しは知ってるから聞くといい」
地下の工房は、今何もしてないから大丈夫だろう。
「分かった」
ニンニクとトマトを採取して戻った。
昼は、ミートソースとペペロンチーノの2つを出してあげた。
麺料理はあるが、こんなに細くないらしい。
「ユーリ。アンタ、店を出す気はないのかい?」
「今の所は無いね」
店を出すなら商会ギルドで登録しないといけないし。
土地の確保、人手を集め、環境整備。
色々と面倒だ。
情報収集の場としては、有効そうだけど取り急ぎ必要ない。
「残念だよ。あれば行くのにさ」
「それ分かる。美味しいものね」
「どれも食べた事が無いものばかり」
「料理もですが、魔法も一流、武芸も一流、知識も一流。しかも、お金持ちって、どんな優良物件ですか」
「俺は少し出来る程度の認識なんだが?」
『いやいや、違うでしょ』
アイリスたちまで一緒になってツッコまれた。
昼のパスタも好評だった。
宴会2回目。
各丸テーブルに七輪を設置。
足りないので追加で作った。
メニューは、焼き肉。各種肉と野菜を置くだけだ。
今回は、四グループに分かれた。
俺と獣人組。
アイリス、マリー、フィーネ、ミズキの組。
リリアーヌさんを含むハイエルフ組。
カトレアたちの組。
後は、自由にやって貰おう。
突発の来客があった。
「ほぉ、今日は焼き肉か?儂も良いかのう?あっ、ギルも連れて来たわい」
ギルさんが済まなそうに横に立っている。
「すまん。勝手に転移門使って。ユーリとローゼンセフィアに急用があったんだ」
「別に良いよ。鍵持ちの案内ならいい事にしてるし。それより、急用って飯を食ってからでもいい?」
「急用だが、今すぐどうにか出来る問題でもないから大丈夫だ」
「なら、飯食べて行ってよ。今日のは、各自で焼くだけだし」
「良いのか?」
「良いよ。ギルさんはこっち、ガイアス爺さんはマリーの所に参加して」
「おうよ」
「恩にきる」
2人を参加させて焼き肉が始まった。
「美味いな、この赤身肉。何の肉だ?」
「シルバーディアー」
「「「「ぐっ!?」」」」
おっ、吹き出さなかった、カトレアたち。
「頭は、あるのか?」
「あるよ、当然。売れるでしょ」
「……角を粉末にしてスープにすると美味いぞ」
「マジで!?よし、作ってくる」
「「「ぶふっ!?」」」
あっ、吹いた。
「いやいやいや、売れよ!」
「頭部は、高価なのよ!」
「金貨50枚はくだらない」
「そうです、師匠!美味しいものがたくさんあるんだから売りましょう!」
「でもねぇ〜」
ギルさんの顔を見た後、席を立つ。
「これ以上、売られても困る。今、加工している分で精一杯だ」
「はぁ?」
「どういう事なの?」
「加工出来ない理由でも?」
「ですよね?珍しい魔物ですし」
「複数売られたので買い取った」
「はい?シルバーディアーを?」
「そうだ」
「私たちも生きた状態で見たこと無いんですけど」
「俺ですら、2度程だ」
「売ったのは、ユーリ?」
「師匠ならあり得るよね」
「正解。3匹売ったな。ほら、スープだぞ」
「ありがとう」
「あっ、ありがとうございます」
皆の机にスープを置いて回る。
何も具が無い、シンプルなスープ。
『美味っ!?』
皆の反応は、上々だな。
ただ、お湯に溶かして味見してみたけどかなり美味かった。
「次から角だけ狩るのも有りかな?」
「ごく稀でいいから卸してくれ。多過ぎると値崩れする」
「はいよ〜」
「あの〜、師匠。このスープは?」
「えっ、シルバーディアーの角スープ。早速作ってみた」
「oh……」
「なぁ、マスター、ギルフォードさん。コイツ、もうSランクで良いんじゃないか?」
「クエスト数が足りなさ過ぎるんだ」
「狩ってはいるけど、クエストじゃないしね」
「だから、討伐をギルド依頼にしてポイント変換する流れで検討中だ。それと世間に周知する為にも、今回のSランク冒険者複数によるクエストにコイツを組み込む予定だ」
「待ちな。それはきな臭いね。うちでも私を入れて2人だけだよ」
「そういえば、カトレアともう一人は?」
「シオンです。私とセレナは、まだAランクなので」
「チームとしては、完全にSランクなのだけどねぇ〜」
「後は、数を稼げはなれると思う」
「今回のクエストクリアしたらSランクにする予定だ。実力は、共に申し分ないしな」
「やったー!」
「なら、さすがに属性剣を買おうかしら。カトレアみたいな馬鹿力じゃないし」
「おい、誰が馬鹿だって?」
「冗談よ。冗談」
「セレナ。今の剣は、普通のか?」
「そうよ。見る」
手渡された剣は、本当にただの剣だった。
ミスリルも黒星石も魔鉄すら使われていない鋼鉄の剣だ。
これで、Sランク間近。剣技だけで登り詰めたと。
「セレナ。この剣、鍛えていい?代金は取らないから」
「えっ、銃を見るに貴方の実力なら良いけど、直ぐに出来るの?」
「明日には、出来る」
「なら、お願いしようかしら。失敗したら代わりの剣を頂戴ね」
「分かった」
セレナから剣を預かった。