何でいたの?
「いや〜、良い湯だったぜ!」
「石鹸とかも良いものを使っているのね。アレ、貴族の間で有名なモノよ」
鍋が出来る前に2人は帰ってきた。
「へぇ〜、そこまでは知らなかった」
1番良いやつ。
って、感じで購入したからな。
「うんんっ……主様」
「あっ、ごめん」
膝の上に座ったイナホの髪を梳いていた手を再開させる。
イナホたちは、風呂まで同行したらしい。
髪を湿らせた状態で帰ってきた。
だから、特別にやってあげている。
フランとユキは、髪が短いので直ぐだが、イナホは長いので時間がかかる。
最初は、お願いされた時だけだった。
お願いしてくれる程に心を許してくれたのは嬉しく思う。
だからか、たまにしてあげる様になった。
「見せつけてくれるな。アンタの嫁かい?」
「違うよ。家族なのは確かだけど。この娘が望むなら、それも良いかもしれないけどね」
「主様……」
「……よし、これで終わりだよ」
最後にいつものなでなでが入って終わり。
「ありがとございます」
鍋の方もそろそろ良い頃合いだろ。
「シオンたちはまだ戻ってないのか?」
「そういえば、アイツら何やってるんだ?」
「庭の散策。うちの桜に興味が湧いたみたいだったからな。他の場所も散策してるんじゃないか?」
屋敷の地下と2階はマズいが、それ以外は見られても問題はない。
農業試験場は、マズいな。
今、ある実験中だし。
さすがに施設には、入らないだろ。
「「ただいま」」
噂をすれば帰ってきた。
「遅かったな」
「果樹が目について見に行った」
「施設には、入ったか?」
「社には行きましたけど、他の建物には入ってません」
「なら、いいや。鍋も出来たし食べるとするか」
全員で席に着く。
今日は、丸テーブルに変更。
鍋なら丸テーブルでしょ。
3台用意して、グループに分かれる。
俺、アイリス、マリー、ミズキ。
ハイエルフ組と獣人組。
カトレア組とフィーネ。
フィーネに食べ方等を教えて貰う予定だ。
だって、箸だもん。
フォークやスプーン用意した方がいいかな?
「おっ、間に合ったわい」
ガイアスの爺さんが登場した。
「いつもより遅かったな。来ないかと思った」
俺たちの席にガイアス爺さんを呼ぶ。
「なに、ちょっとばっかし戦況報告を受けていてな。時間かかったのよお」
「「「「竜王!?」」」」
カトレアたちが驚いている。
「戦況報告って、どっかと戦争中なのか?」
今更なので気にしない。
「他国の奴じゃ。勝敗が決しそうでの」
「ちなみに、どこの国?」
「クズノズク王国じゃ」
『っ!?』
皆に動揺が走る。
「悪い。だが、お主らにとっては良い話じゃ。後、1ヶ月程でクズノズク王国は崩壊して消える」
「はぁ?何でまた」
「何でって、お主が契約書破壊したからだろ」
「したけど、それはここの皆のだろ?」
「そこが違う。ここの娘たちとクズノズク王国にいる者たちも皆じゃ」
「えっ……。じゃあ、何?内乱?」
「そうじゃよ。更に、そこにベルトリンデ王国が介入した。奴隷たちと共闘して王族を倒したそうじゃ。未だに貴族が抵抗しておるが時間の問題じゃろ」
俺が原因なのね……。
『よし!』
皆、喜んでいるし。気にしないでいいか。
「まぁ、俺も悪いと思ってないし。自業自得ってことで。という事なので、カトレアたちも他言無用で頼むな」
カトレアたちの方を向く。
「それ、アタシら聞いたらマズいんじゃあ……」
カトレアたちが冷や汗を流している。
「マズいのか?」
「別に直ぐに分かる事じゃろ」
「だそうだから大丈夫じゃねぇ?言い振らさなきゃ」
「言わねぇよ」
「なら、問題なかろう」
「それじゃあ、話は終わり。飯にしよう」
皆の分を取り分ける。
「いただきます」
『いただきます』
カトレアたちもつられて行った。
「今更じゃが、この作法は何じゃ?」
「うん?ただの感謝だけど」
「感謝?」
「故郷の作法さ。生きる上では食べなきゃいけない。食べるってのは他の命を奪う行為だな。だから、命を頂きますってね。食前の祈りと根本は同じさ。同じ」
「なるほどの」
「それより、食え食え。味噌とクマ肉の相性最高だろ!」
「確かに、濃厚な味わいがなんとも」
「この肉の食感も良いよね!」
「だろ!弾力が良いから厚切りにしたのさ!」
「本当に美味いね。これは何の肉だい?」
クマって言ってるけど気付いてないのか?
「グランドベア」
俺が答えるより先にシオンが答えた。
「さっき、庭で解体してましたもんね」
「はあぁ!?」
「んぐっ!?」
2人は気付かなかったのだろう。
「グランドベアを1人で解体したのかい?」
「いや、アイリスと2人で」
「まぁ、なら、出来なくないわな」
「いや、1人で解体してましたけど……」
「アイリスには、血抜きして貰ったからな」
「ユーリ。アンタ、何でも有りだな。さっきの武器にしても」
なんか、呆れた顔をされた。
「そうじゃ、武器。造ったのなら見せい」
「そうだった。ほらよ。ただ、この引き金引くなよ。危ないから」
俺の武器を渡した。
「ふむ。レア度がSになっておるな。これ程の逸品を造るとは……。武器の等級なら幻想級になるじゃないか?」
「マジで!?」
幻想級とは。武器にある等級の最上位だ。
フラガラッハや真紅のコートの神衣・真紅がそれに入る。
武器の等級は、こうだ。
普通、希少、特殊、伝説、幻想。
同じレア度でも階級が違ったりするがその逆もしかり。
フラガラッハは、レア度EX。
神衣・真紅は、レア度S。
でも、階級は共に幻想級。
魔剣イフリートは、レア度Sだが、伝説級になる。
ぶっちゃけ何を基準に振ってるのか、よく分からん。
とりあえず、魔法銃はそれだけ希少という事だ。
「うちの娘たち全員に護身用として持たせてるんだけど……。皆、見せてあげて」
皆が手に取ってアピールする。
「おぉ……見なかった事にするとしよう。マリーも持っておるのかい?」
「対アンデッド用に聖属性で造って貰いました。ちゃんと他の属性にも切り替えできますよ」
一応渡した他のマガジンも見せている。
「属性変換出来る武器とは……」
「ガイアス爺さんもいる?特注で作るけど」
「マリーと同じタイプで頼む。アンデッドは、竜も好まぬ。聖属性か、跡形も無く消し去るしかないからな」
「代金は、請求するからな。聖属性の竜鱗とかないか?有れば強力なのが作れるけど」
「なら、倉庫にある妻の竜鱗を一枚渡そう」
「マジで。なら、代金は要らないよ。一部を貰うから」
交渉成立。
奥さん、聖属性なのね。
「しかし、どうりで凄い威力だった訳か」
何やら勝手に納得しているカトレア。
「そういえば、実験見てたな。ってか、何でいたの?」
「採取クエスト途中だったのさ」
「討伐でなく、採取?わざわざこの森に?」
「Sランクのアイテムなのさ」
どうやら本当に採取目的で来たらしい。