未開のダンジョン 前編
休みが欲しい。そして社用ケータイが怖い……。
二連休が夜勤明けと非番(自宅待機)って鬼。
要望もあったし、溜まったので放出します。遅くなってすみません。
〜前回までのあらすじ〜
戦闘狂の奥さんたちは欲求不満。デスバトルを繰り返し生存本能が限界突破! 主人公を巻き込んでバトルに夜戦にと超ハッスル!!
そして、干からびる主人公、孕んだ奥さんズ。
だけど、ダンジョン探索は待ったなし。ユーリは進化した精霊妻のみ連れて向かうことになるのでした。
〜 〜 〜
さてさて、そんな訳でやって来ましたダンジョン。
事前説明と注意事項オーケー!物資と武器共に準備全員オーケー!!
それではーー
「レッツ! ダンジョン!!」
「「「「オォォォーーッ!!」」」」
ヴィヴィアの元気な掛け声の元、ダンジョン探索が今始まった。
「「「「マスター!?」」」」
早速、チームの意識が統一されたぜ。やったね……じゃない!?
「なんで、いるんだ!?」
「着いてきちゃった♡」
「いや、可愛く言ってもダメだろマスター!? ギルドは!?」
「部下に丸投げ〜」
「「「「………」」」」
どうしよう?
転移魔法でギルドに送り返すか? お帰り願うか?
「ちょっ、冗談よ! 冗談!! そんなに真剣に悩まないで!? ちゃんとギル君と話し合って、サポート役として参加させて貰ってるから!!」
「あっ、そうなんだ」
さすがに何処のマスター室でも見かけるブラック企業ばり書類の山が放置されないと知ってホッとした。
しかし、ギルドマスターが同行か……。
何かしらの思惑があるんだろうけど、言ってこないってことは気にする必要は無さそうだな。
「それじゃあ行きましょか。今日中に3階層に到着して、調査拠点を設置。道中のマッピングと生態調査も一緒にするわよ」
「では、事前の打ち合わせ通り、早速始めますか。エリス、力を貸してくれ」
「もうしょうがないわね。カグヤに頼まれたし、頑張るわ」
俺はエリスと手を握り合い額を近付ける。そのままキス出来そうな距離の中で数刻見つめ合い、お互いにゆっくりと目を閉じた。
「「同調【精霊纏い】」」
薄手の衣を身に纏う様な感触と後ろから抱きしめる様なエリスの存在感に目を開けた。
不定形である筈の水が羽衣の様にたゆたい水の衣がその身を包み込んでいた。
「すごい魔力だ!!」
「はぁ……綺麗……」
「ゴクリ。コレが精霊魔法の奥義か」
皆、めったに見る事の出来ない魔法に興味深々だ。
「それでは索敵とマッピングはお任せを。罠の解除はココさん、よろしくお願いしますね」
「うん、アタシに任せなさい!どんな罠もちょちょいのちょいよ!!」
俺とカルテットで斥候を担当するココさんが前に出て、間に他の女性陣、殿に男性陣が付きダンジョンを進み始めた。
1時間後ーー3階層の階段前に到着。
「「「「着いちゃたんですけど!?」」」」
「ん? 何か問題有りましたっけ?」
「問題というか、なんというかね……」
「どうぞ、ここまでの階層の地図です。下に魔物の種類も書いておきました」
「あっ、ありがとう。……本当に地図まで出来てるのね」
地図を受け取ったヴィヴィアは困惑の声を漏らした。
「えっ、速すぎでしょ? まだ、半日も立ってないよ……」
「わっ、私たちは何を見せられたの? 夢?」
「少なくとも現実だな。確認の為に魔物とも戦ったし」
「むしろ戦ったからここまで来るのに時間が掛かったとも言えるな」
「もう一回おさらいしても良い? ユーリさんは何をしたんだっけ?」
「えっと、まずはーー」
再び時はスタート時点に遡る。
「水精霊魔法【惑いの霧】」
ユーリの手から生まれた霧が通路を流れていき、前方の視界を真っ白に覆い尽くした。
「ちょっ、ユーリ君!? 何を考えているの!! これじゃあ、魔物が来た時分からないじゃない!?」
「何って、索敵ですよ。索敵。いつもみたいに広範囲の魔力感知や音響感知が出来ないですからね。階層内を霧で満たしたんです。今の状態だと水の変化を細かく感知出来るので、霧に触れた魔物やギミックをしっかり把握出来るんですよ。ほら、早速魔物ですよ」
そう言うと近くの霧にダンジョン内の魔物の様子を映し出した。
「「「「!?」」」」
「こっ、コレは?」
「霧と言っても水の粒なので、そこに映ったモノを反射させて拡大してます」
そう言いながらユーリは虚空から真っ白な紙とインクが入っているだろう小瓶を取り出した。
「霧が満ちてダンジョンの構造が把握出来たので、次はマッピングですね。これも超簡単。水で薄めたインクを操作して紙に落とし込むだけですから」
そして、あっという間に階層の地図が完成した。
「さて、探索ルートはヴィヴィアさんに任せます。コレが現実の魔物の分布です」
今度は霧にマップを投影し、魔物の位置と種族を表示させた。
「とりあえず、この内容が合ってるのか確認の為に戦闘しましょう。準備して下さい」
各々が武器を手に隊列を組み直し、緊張が高まる。
「あっ、そんなに緊張しなくて大丈夫です。今なら精霊魔法でこっちの姿は見えないし、匂いも分からなくしてるので不意打ちやり放題ですからどんどん殺っちゃいましょう」
そう言うユーリの後について歩くと霧の中で、周囲をキョロキョロと見渡すコボルトに遭遇した。
堂々と接近するユーリ。しかし、匂いや音に敏感なコボルトは全くその存在に気付く様子がない。
「えい」
「ぐげ? グギャアァァ!?」
「ねっ?」
ナイフで首を斬られて初めて気付いたコボルトはそのまま絶命してしまった。
「「「「…………」」」」
あまりにもあっけない最後に皆は目が点となった。
その後、カルテットが代行して戦闘するも結果は似た様なものであった。
「これはこっちに置いて、アレはそっちかな?」
そして、現実逃避から帰ってきた彼らの目の前には並べられたベッドとキッチンスペースが広がっていた。
「あれっ? ここってダンジョンだよね? こんなに簡単に進めるもんだっけ……うんうん? 何処かの宿かな? あっ、それともやっぱり夢なんだ!!」
「ふわぁ……ふかふかベット……」
「おっ、鍋から漂う良い匂い……。温かい食事……。やはり宿だな!」
「お〜い、お前たち帰ってこ〜い。現実見ろ〜」
「皆、正気に戻りなさい! これは現実よ!! さぁ、集まって。今後の活動を話し合うわよ」
呼ばれるままに集まり、現実から目をそらすように話し合いが始まった。
「それでどうします? マスター?」
「予定通り、今日はもう休みましょう。料理を作ってくれてるみたいだし。開始早々って言って良い時間だけど、誰か異論は有りますか?」
「無いです」
「アタシも賛成〜」
「気疲れというか? なんか色々疲れたな」
「でも、簡単な階層偵察くらいはしません? 時間はたっぷりありますし」
「それは私が代わりに行くわ。貴方たちは休んでいなさい。今の内に力は温存するのよ」
「わかりました」
「皆さん、料理が出来ましたよぉ〜」
ちょうど料理を手にしたユーリが戻ってきた。カルテットの面々は湯気が登る温かな食事が配られると歓喜した。
そんな彼らを横目に先程話し合った内容を伝えた。
「偵察? あっ、俺も手伝いますよ」
「良いの? ここまでして貰ったのに?」
ここがダンジョンとは思えない程の快適空間と温かく美味しい食事で緊張が解れる。
「休息時間は長くして貰ったので大丈夫です。それにマッピングだけでも先に済ませたいですから」
「そうね……(うん?これはチャンスでは?)」
この時、ヴィヴィアの脳裏に勝利の方程式が思い浮かんだ!
「では、行きましょうか? 貴方と私のふたっりきりで?」
「あっ、はい(何故だろう。悪寒が……)」
肉食獣の口に自ら飛び込んだことに全く気付かないユーリであった。




