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決着

 渾身の一撃は、閃光と共に激しい衝撃を生み出した。

 その影響は会場の防御機構を発動し、周囲の魔力を霧散させる。障壁も消え、代わりに土煙が周囲に立ち込めた。


「………」


 まさか……殺してないよね?


 拡散した魔力が土煙に混じり、ガイアス爺さんの様子を見ることが出来ない。

 真剣勝負の自己責任とはいえ、義父殺しとか冗談じゃない。マリーに嫌われたくないので考える。


 こういう時は……アレだな。


「やったか!?」


 生存フラグ!

 爺……オヤジは存在自体がギャグキャラみたいなものだからイケるはずだ!!


(ラド)


とはいえ、姿が見えないと心配になってくる。

 ルーンで巻き起こした疾風で土煙を晴らす事にした。


「よし、ーーきたぁぁっ!!」


 バキッ!


 死角からの不意打ちだったが、警戒していた事もあって無事にガードに成功。

 ただし、盾代わりにした紋章神撃砲(シュテルンイェガー)は、その刻印板を砕かれ、砲身に拳が深々と突き刺さり、くの字に折れ曲がってしまった。


「チッ……仕損じたわい」


 それを行ったのは、誰であろうボロボロになったガイアス爺さんである。やはり、G並みのしぶとさである。


「……これ、ミスリル製なんですが?」

「道理で妙に硬かった訳じゃ」


 うん、バケモノですね!


「とりあえず生きてて「フンッ!」ーーはあぁっ!? 何してくれてんのさっ!?」


 腕を引き抜こうと裂け目に手を入れ力を込めると、魔力砲は紙屑の様に引き裂かれてしまった。


「また、鍛えれば良かろうて。ちなみに儂がその顔が見れて超スッキリ!」

「ふざけんな!材料が貴重なんだよ!!」


 強制起動。俺は鉄屑と化した魔力砲を投げ付けた。


「そう言いつつ、使えぬと分かると爆弾代わり……どの口が言っとんじゃか?」


 あっさりその手で払われ、魔力砲は爆発と共に粉々に砕け散った。


「ふむ……これでやっとこさ五分って所か?」

「んっ? 何が?」

「儂とお主の差じゃよ。さっきのを防ぐので儂の魔力は空っ欠。肉体もボロボロ。それに引き換え、お主の方はちゃっかり身体強化一回分くらいは残してる」

「………」


 しっかりとバレてらぁ……


「武器は出せない。魔法も使えない。つまり、最後に残ったのはコレだけよ」


 心底楽しそうに笑い、拳を構えて腰を落とす。俺も何故か最後はそんな気がしていたので、つられるように自然と構えをとった。

 最後の魔力で身体強化を施すと自然と同じ様な笑みが浮かんでくる。


「さぁ、決着をつけようか」


 お互いに構えをとってから数刻、張り詰めた緊急の糸が何かの拍子にぷつりと切れた。


「フン!」

「ハッ!」


 一気に縮まる間合い。振り抜く拳。

 決して狙った訳ではないが、互いの拳がぶつかり合い衝撃が駆け抜ける。それでも互いに一歩も引く事はなく、更に足を踏み入れた。


そこからのことはよく覚えていない。


「ぐふっ!!?」

「かはっ!?」


 拳を振るえば何処かに当たるそんな距離だ。拳が交差する度に顔へ腹へと突き刺さり、口から苦悶が洩れた。


「おい、てめえぇ! 顔ばっか狙ってんじゃねぇぞ!!」

「おっ、口調が変わってんな? そうれ、イケメン死すべし!イケメン死すべ……ごふっ!!」

「へっ、がはっ!?」

「顔狙いはガードを誘導する罠だ!」


 一撃一撃でロジカルを組み手数をもって翻弄する俺に対して、重装砲兵の様な拳が隙間を縫うように重い一撃を叩き込む。そんな拳の乱舞が幾度となく繰り返された。


「あはっ、あはははっ!」

「なになに、頭を打たれ過ぎて気でも狂った?」

「いや、何……楽しくて楽しくて仕方ないんじゃ。ギルは冷めてて相手をしてくれぬしの。レギアスは、ほら歳じゃから。全く、よい息子を持てたもんじゃ!」

「義理とはいえ孝行息子に感謝しろ」


 しかし、正直驚いた。何故ならガイアス爺さんは今までマリーの旦那と認めて扱ってきたものの、自身の家族として認める明言を避けていたのだ。


「……てっきり、まだ正式な家族とは認めてないんだと思ってたわ」

「ううん、そうか? そんなものはとっくの昔に認めてたつもりなんじゃがな。ただ、お主が儂の事を爺さん爺さん呼ぶから……」


 そういえば、老体なのは世間のイメージの為にそうしてるのであって、本来はそこまで老いてないんだっけ?


「あっ、それはその……悪い。言い易かったし。改める。何て言えばいい?」

「そうじゃな。色々あるが……ここはやっぱりオヤジじゃな。あ奴らは絶対に呼ばぬから」

「分かった。これからはそう呼ぶわ。だから、さっさと沈んで勝利を譲ってくれませんかね? 迷惑オ・ヤ・ジ?」

「……はっ、嫌なこった! そっちこそ儂に譲れ、色ボケ息子。お主の色事には前々から文句を言いたかったんじゃ。次の拳でその根性叩き直してやる」

「こっちこそ、日々、アンタに迷惑かけられてんだよ。その恨み……この拳に込めてやる!!」


 どうやらこれが最後の戦い。

 お互いに呼吸を整えて、いざ勝負。


「色ボケ息子更生ーー」

「迷惑オヤジ撲殺ーー」


「「キック!!」」


 殴ると見せかけて、顔を狙った渾身の蹴りだった。


「「あっ、ズルッ「いい加減にしろ、このバカ野郎共!!」ーーえっ!?」」


 ゴォーーン♪♪

 決着のゴングが鳴り響く。


「「のぉおぉぉーーっ!?」」


 横から飛んできた大きな鐘。蹴りの途中で踏ん張りの効かない俺たちは仲良く吹き飛ばされるのであった。

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