クラス分けとは一体何ぞ?
色々問題が起こっても、寛容な心で受け止めてくれるのが竜王国という国だ。
「まぁ、なんだ。王妃様も竜種だし……きっとストレスが溜まってたのさ!」
といった具合で流されたのであった。
残念ながらストレスではない。
孫の声援にテンションMAXになっただけのお婆ちゃんです。
その後、遅れながらも表彰式は無事に終わり、これにて一般の部はこれにて終了。ここから危険なので一般人は観客に徹する事となる。
「それでは、"ゾマー"への参加者は控え室に移動して下さい」
アンナさんの指示の元、参加者の移動が始まった。
「観客の皆様方、これより当闘技場は魔法戦闘に備えた防衛機構を起動させます。移動は控え、衝撃に備えてください」
そして、小さな揺れが会場を襲う。
スクリーンには会場が塔の様に競り上がる姿が映し出されていた。
揺れが治まり、俺はギルさんに尋ねてみる。
「どういう仕組み?」
「簡単に言うと大砲の筒だな。方向性を用意することで、威力を逃がすんだ。基本は上だけで済むが、高域魔法使い同士だと、その威力は予想できないから下にも逃がすんだよ」
通りで障壁が筒っぽいなと思っていた。
「まぁ、実際問題。下の機構が使われる程の威力が出たことはない。だから、安心だ」
「なんか、フラグっぽい」
「そうは言うが、竜種が三つ巴でブレスをしても発動しなかったんだぞ? アレを超えるとなると父上だが……本人曰く、"儂のでも発動せぬよ。二人居れば別じゃがな!"と笑っておられた」
「それなら安心だね」
でも、本当に大丈夫かな?
妙な不安を残しつつ、俺は変形した闘技場を見つめるのであった。
その後、防衛機構が起動する気配は無い。
冒険者たちは木製武器を手に壇上へと上がり、戦いを繰り広げていく。
それを見つめるギルさんの表情もとても穏やかだ。
「あぁ、なんか……ほっこりする」
「あっ、それ。なんか分かる」
戦い自体は殺伐としているものの、安全策はしっかりと取られて実力も拮抗。誰かが死ぬ心配もせずに安心して見てられた。
「それでは始めて下さい!」
「ハァアァッ!」
「ウォオオッ!」
もう何度目かになる気合いを込める掛け声と交差する武器。
均衡するのは一瞬の出来事。すぐに崩れ去り、攻防へと移行した。
その結果、武器が触れて飛び散るーー鮮血。
「血? えぇーー!?」
血に驚いた訳では無い。
驚いたのは、お互いの選手が武器に魔力を纏わせていた事だ。
「おぉっと! 躱した筈なのに飛び散る血!! 木製武器なのにどういう事だ? ササクレが酷かったか!?」
「どうやら、木刀を魔力で強化している様ですね」
「ええっ、そうです。彼はそれによって刀身の長さを自在に変える事が出来ます。鍔迫り合いで刀身を把握しても、次が同じとは限りません」
「なるほど! だから、間合いの認識がズレてダメージを受けた訳ですか?」
「恐らくそうでしょう」
まともな繰り広げられる解説。
「いや、その前に突っ込もうよ! どうして、このレベルの人物がこのクラスに出場してるの!?」
「ユーリ、そんなに慌てる事でもないだろ? ドラゴンとアリの勝負じゃあるまいし」
「そうだけどさ!」
「母様の事に比べれば、これくらいは些事さ些事。……胃が締め付けられることも無い」
凄く爽やかな笑顔をしてやがる。
それほどまでに胃に負担をかけたのだろう。
「試合終了!」
いつの間にか試合は終わり、魔力で刀身を変えていた冒険者が勝利を納めていた。
「それに奴だけじゃない」
次の相手が壇上に上がってくる。その選手を見るとーー。
「バルトォォ!! お前、何やってのっ!?」
なんと、相手の選手はバルトであった。
「あーっ、ユーリの旦那。今年の"ヘルプスト"のクラスなんですが、……旦那の奥さんたちに加えて、"巨姫"カトレアも出ますよね?」
まぁ、うちの奥さんたちは平均的にAランクだし、カトレアに至ってはSランクだから当然だわな。
しかも、カトレアは産後のウォーミングアップとばかりに暴れる気満々の様だ。
「俺たちは彼女たちにトラウマや何やらで……勝てる気がしないです」
そう言ったバルトは、とても遠い目をしていた。
相手の選手もそれに同意する様に頷いている。解せぬ。
「つまり、そういう事だ。高位の冒険者たちがクラスを下げて出いるのは、……全部ユーリが悪い」
「横暴だ! 責任転嫁すな!!」
コイツらはただ女性陣に負けたくないだけだろ!
出場者リストを貰い、うちの嫁さんの一人くらい出てないかと探してみる。
……残念ながら居ませんでした。
「その攻撃はフェイクだ。本命は別にあるぞ! あと、バルトは防御の瞬間に左からに弱い!!」
「手の内を晒さないでくれます!?」
仕方ないので、早くやられる様に相手を応援する俺なのであった。




