トラップにご注意を!
「うぅ……背中痛い……」
「大丈夫ですか!?」
そう言って背中を擦ってくれるナミエル。
「何もわざわざ下にならなくても……。私は鎧に守られているんですよ?」
「いや、まぁ、ナミエルは女の子だし……」
「レン……」
「男は女を護る!当然のことさ!」
と、カッコ付けてみるも実際の所は違う。
ナミエルが浮けるのを忘れて引き寄せた結果、落下スピードの遅い彼女の下に俺が移動してしまった。
しかも地面との高さが殆ど無かったものだからナミエルの下敷きになったという訳だ。
(流石に恥ずかしくて言えないわな……。)
「それでこれからどうしましょう? 落ちてきた天井は既に再生していますし」
どうやら建物自体に形状記憶の魔法がかけられているらしく、ハンマーで塞がれた天井は見る見る内に再生し、あっという間に塞がってしまったのだ。
「こうなったら進むしかない。問題は上か下かだけど……。わざわざダンジョンを用意したという事は、猫ゴーレムの羽根はフェイクで本物は地下にある気がする」
「なら、地下へ?」
「それが良いかも。それで無ければ上に戻って猫ゴーレムと戦うしかなさそうだ」
一応、二人なら勝てなくないがさっきみたいな攻撃が続くとどうなるか分かったものではない。
「そうと決まればダンジョンを進みましょう! 感知とマッピングは任せて下さい」
「あぁ、期待してるよ」
それから数十分後。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
必死に頭を下げるナミエルの姿があった。
そんな彼女の先にはダンジョンのトラップによってボロボロになったレンの姿があった。
「本当にごめんなさい。まさか、ギミックだけ感知出来ないなんて!」
ナミエルの魔力感知によってダンジョンの階層と道は把握出来た。
しかし、ダンジョンに隠されたギミックまでは感知出来ず、スイッチを押してはトラップが2人を襲った。
「……大丈夫、こうなる事は分かった」
鎧に守られたナミエルにトラップによるダメージはなく、結局レンだけが被害を被る事になったのだ。
「私、鎧を脱ぎます!!」
「脱げたらとっくに脱いでるよね?」
「わぁーん、着なきゃ良かった!!」
それは真の愛を求めて着てしまったアンタが悪い。
「あぁ、でも、何とか回避出来るし。致死性は無いから大丈夫だって」
例えば、飛んでくる矢なんかは鏃が加工されているのか、当たっても刺さらず痛いのみ。その分、数は異様に多い。
横からの飛び出す板は顔を狙ってくるが、インターバルがあるのでしゃがめば避けられる。だが、しゃがんだ所をスネを狙って違う板が来るので気を抜けない。
製作者の根性の悪さをしっかりと垣間見ることが出来た。
「トラップと言っても嫌がらせ目的なんだよ。気を抜かなければーー」
ガコッ。
「………すみません」
「だっ、大丈夫。死なないレベル」
ゴトン! ゴゴゴォオオーーッ!
天井が開き落下してきた大岩。通路の先から転がってきている。
「アレも死なないレベル?」
「いや、死ぬわ!? ルート案内頼む!!」
俺たちはダンジョン内をなりふり構わず全力で走り出した。
当然ながらトラップを起動させまくる訳で……。
ガンッ。
「なんで、上から金ダライ!?」
ダダダダダダダダダダッ。
「種鉄砲!? イタタタタタッ!」
バシャ!
「ゴバッ!? 水!?」
バチバチッ!
「「ギャッ!?」」
「あっ、コレは効くのね」
ノーダメージで走っていたナミエルも水からの電気は効くようだ。
まぁ、鎧は一応鉄だしね。電気は通すわな。
「そこの分かれ道を左です!」
「了解!」
「そこから更に左へ。その後、右に逃げれば大丈夫な筈です!」
俺はナミエルの指示に従い最後の曲がり角に滑り込んだ。
大岩は分かれ道の壁で止まったがコレだけ曲がれば大丈夫だろう。
「ふぅ〜〜っ、助かった……」
「確かに、一時はどうなるかと……えっ?」
「うん? どうし……」
ゴロゴロゴロッ。
何かが転がる音が近付いてくる。
「まっ、まさか!?」
そして、それは角から姿を表した。紛れもない大岩だった。
「さっき壁で止まってましたよね!?」
「その筈です。なのに、一人でに動き出したんです!!」
「とりあえず、もう一回逃げるよ!」
「あっ、そっちはダメ!?」
俺はナミエルの制止を聞かず、彼女の手を引いて走り出した。
「いっ、行き止まり!?」
その結果は、当然ながら行き止まり。
まだ距離は有るが今なお大岩が背後から迫っているので、完全に追い詰められた形となる。
「こうなったら迎え撃つしかない!」
俺は矢を番えると貫通力を上げる為に雷魔法で強化し大岩を穿った。
まぁ、当然ながらそれで止まる大岩ではない。
「ん? おかしくない?」
でも、そのかいあってかある事に気がついた。なんと、刺さった矢が折れていないのだ。
「レンさん。どうしましょう!? 火だと窒息するし、雷だと壊すのに時間がかかります!!」
「ナミエル! 大岩のスピードを落とすだけでいい! 出来ないか!?」
「えっ? それくらいなら……」
そう言うとナミエルは魔法で吹雪を起こした。
正面から吹く風と大岩を通り抜ける際にダンジョンの壁が凍り、転がるスピードが格段に落ちた。
俺は新たに矢を番えると先程刺さった矢へと向けて放った。
放たれた矢は魔法の誘導も有り、元々刺さっていた矢を竹割りの様に引裂き、先程より深く大岩へと突き刺さった。
手応えを感じた俺はそれを繰り返すと穴が徐々に広がっていく。
「レンさん! 弓じゃ穴を掘るだけで、大岩へのダメージは殆ど与えれていません! 他の手をーー」
「大丈夫。コレで終わる」
準備は上々。後は、止めの一撃を繰り出すだけだ。
矢に纏わせていた雷に火を加えて狙いを澄ます。
「二重魔法"爆彩"!」
放った矢はその穴へと吸い込まれていった。そして、
「嘘っ……」
大岩は穴を中心にヒビ割れて砕けていった。
「この大岩……ゴーレムだったんですね」
破壊した大岩を調べるとゴーレムによく使われる核や手足と思われるものが見付かった。
「道理で曲がっても曲がっても追い掛けてくる訳です。レンさんは最初から気付いていたんですか?」
「うん? いや、今知った。違和感には気付いていたけどゴーレムだとはね。俺が気付いていたことといえば大岩が転がってなかったことさ」
「えっ?」
「大岩は転がるものっていう完全な思い込みさ。暗がりでよく見えないから気付き難いけど、刺さった矢が折れないのを見て気付いたんだ。前方に転がれば当然折れる筈だからね」
「よく考えれば刺さった矢も見える位置から動いて無かった様な……」
「そんで後は楔を打って大岩を採掘するやり方を参考に中心から爆発した訳よ。勿論、酸欠にならないレベルを考慮してね」
まぁ、最後の矢で壊すのは賭けだったけどなんとかなった様だ。
「さてと先に進もうか。これからは俺も感知を手伝うよ。大岩で確信が持てたし。どうして魔力感知で見えないか? このダンジョンを作った人を考えれば一発だったわ」
「それはユーリさんでは?」
「違う違う。もう1人作れる人が居るんだわ」
俺は修行中に契約した下位の風精霊を呼び出した。
「やっぱり、リリンさんの仕業だわ。風精霊に探知して貰うとあっさり見付かったわ」
その後、ナミエルの魔力感知と俺の精霊感知を組み合わせて、俺たちは最下層へと辿り着いてた。




