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レン、振られる

 ナミエルへの対処について真剣に考えたいレンをセリシールにある転移門を使って、妖精の箱庭(フェアリーガーデン)に連れ帰った。


「お帰りなさい」


「マリー、ただいま!」


「きゃっ!? レンさんが見てますよ!!」


「いいの、良いの♪」


 ゲテモノを見た後の様な何とも言えない気分を一度リセットする為にも、出迎えてくれたマリーへ人目も気にせず思いっきり抱き付いた。


「う〜ん、癒やされる……」


 特に彼女のお腹は最高だ。胸とはまた別の柔らかさと匂いに癒やされる。俺はしっかりと顔を埋めて堪能した。


「うわぁ……犯罪……」


「今すぐ、ナミエルの前に突き出してやろうか?」


「夫婦だからセーフですね! 夫婦仲が宜しいようで!」


 レンの変わり様は見事なまでに清々しかった。そこまで嫌なのかね?

 人当たりの良いレンにしては珍しい事なので少し不思議に思った。


「ナミエルさんですか?」


 俺たちの会話を聞いていたマリーが彼女の名前を口にした。


「あっ、マリーの知り合いだった?」


 ルイさんの関係で、マリーは多くの天使と顔見知りになっている。その中の一人なのかもしれない。


「はい、知り合いです。何度か旅に行った先でお世話になりました」


 マリーの旅というとアイリスたちと一緒だった奴だよね?

 という事は、アイリスも知り合いなのだろうか?


「そうなんだ。また、会うだろうし……その時は御礼をしないとね」


「そういえば以前に言っていた天使の大罪の話なんですけど、彼女はその内の『暴食』で認知されてましたよ」


「………」


 まさか、そんな昔からあの状態だったとかではないよね?


「あっ、そうだった。マリー、数日滞在する事になったのでお世話になります」


「あら、そうなんですか?」


「ちょっと悩みがあって……」


「じっくり考えたいみたいだから俺が誘ったんだよ。ゲストハウスも空いてるしね」


「あっ……」


 それを聞いたマリーは"しまった"という顔に変わった。


「誰か使ってるの?」


「えぇ、実は……」


 何でも、マリーの話だとルイさんにゲストハウスにとめてくれないかと頼まれていたそうだ。


「てっきり、ユーリさんには既に伝えたものだとばかり……ごめんなさい」


「良いよ、別に。そもそも最近は全く使ってなかったしね」


「そう言って貰えると助かります。あっ。でも、今使ってるのは一室だけだなので……ダメでしょうか?」


 俺の方は特に問題ない。後は、レン次第だ。

 俺たちはレンの反応を伺うと……。


「あっ、全く問題ないです。寧ろ、泊めて貰う方なんで従います!」


 アッサリとしたものだった。全く問題ないらしい。

 一応、埋め合わせとして食事は豪華な物を用意してやろう。


「そうですか。それは助かります。では、ごゆっくり過ごして下さいね」


 そして、俺たちは地下をあとにしてゲストハウスへと向かった。








「あっ、また会いましたね!」


「「………」」


 俺は無言で逃げようとしたレンを捕まえた。

 レンはこのまま逃してくれと目で訴えているがそんな事は知らない。


「なるほど。ゲストハウスへの宿泊客とはナミエルさんの事だったんですね」


「はい。ルイ様に薦められました。少しの間お世話になります」


 タイミング的にもそんな気がしていたが、やはり合っていたらしい。


「あの……レンさん?」


「はっ、はい!」


「先程は突然告白してしまい……すみませんでした」


「「えっ?」」


 突然頭を下げたナミエルに俺たちは困惑した。


「私、嬉しさのあまり舞い上がってしまいました。冷静に考えるとなんて事を……」


 先程の告白を思い出すと恥ずかしいらしく、ナミエルは顔を手で覆ってしまった。


「……ですので、先程の件は忘れて貰って構いません。そもそも内面の事を全く知らない状態な上に、外見はこんなですからね。困惑するのも無理はありません」


「……でも、その容姿は呪いが原因なんですよね? ユーリさんに聞きました」


「あっ、この呪いの事をお二人は御存知なんですね。なら、話は早いです。着ている理由なんて凄く単純ですよ。少し考えれば分かります」


 わざわざ容姿を隠す理由とは……。


「「内面をちゃんと見て欲しい?」」


「そうです!!」


 ナミエルは握り拳を作って強く叫んだ。


「天使は全て美人揃い! どいつもこいつも外見だけに釣られて言い寄ってくるんです!! 挙げ句の果てに、"天使なら優しいのは当たり前"って内面も勝手に判断するし!!」


 ステータスを見るに天使の中でもスタイルが良い方だったし色々あったのだろう。


「だからって、外見を隠すと今度は声すら全く掛けなくなる! 稀に声をかけられても扱いは男! 女だと伝えても扱いは一緒だし!!」


「「………」」


 これについては何とも言えない。

 女と知っても男扱いする奴らは置いといて、見た目だけならオッサンだと俺たちも思ってしまったし。


「なので外見だけの男は願い下げです!!」


「なら、レンへの告白は無しで良いの?」


「はい、大丈夫です。」


「………」


 それを聞いて、レンはホッとした嬉しそうな顔をしている。

 しかし、次の瞬間彼の表情は一変する。


「でも、内面以前にレンさんの実力だと試練が……無理ですね♪ 知識は有りそうですけど」


「!?」


 まさか、逆に振られるとは思っていなかったのだろう。

 レンはショックのあまり目を見開いている。


「あっ、そういえばアディに急ぎの用があったのを思い出しました。それでは失礼します」


 ナミエルが去った後、残されたレンは振られた事に釈然としていない様子だ。寧ろ、少しイラってしている気がする。


「ユーリさん……試練とは?」


「そういえばそんなのあったな。確か、天使との結婚条件には力と金と知識を示せって」


「ほぉ……なら、俺は実力は低く、金もない奴だと?」


「まぁ、バルトと同ランクで安定した収入は欲しいわな」


「馬鹿にしやがってっ!! 良いぜ。内面だろうと試練だろうと全ての条件を満たした上で再度告白させてフッてやる!!」


 どうやら今回の一件でレンの心に火が付いたらしい。


「ユーリの兄貴! バルトさんにした鬼訓練をお願いします!!」


 こうしてレンとナミエルの戦いは始まった。

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