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忘れてたって、どうなのよ?

 リリィの悪戯? によって俺たちは薬品倉庫に閉じ込められた。

 マーシャはこの機会を逃すべきかと積極的に誘惑。当然ながら俺が耐えきれる訳もなく、理性が崩壊してしまった。

 トリシャさんだけでも隔離しておいて正解だったよ。


 ……というか、相変わらず弱過ぎでしょ! 俺!!


 まぁ、そんな訳で責任を取ってマーシャを嫁にする事が決定したのだ。

 だが、彼女の目的は俺の金なのでどうなんだろう?


「どうしてくれるのよ! 貴方無しで生きられない身体になっちゃったじゃない!!」


 そう思ったが杞憂だった様だ。

 俺の積み重なった経験が彼女を虜にしてしまったらしい。


「……来なくねぇ?」


「そうよねぇ。もう3時間くらいかしら……?」


 やる事をやって、更に時間も経過したが一向に扉を開けてくれる気配がしない。


「最悪、扉を壊して出ればいいか。……寝よう」


「アレだけしたのに、まだ出来るの!?」


 マーシャはかなり驚いている。

 でも、これでもかなりセーブした方なんだけどね。本気で相手してたら彼女がどうなることやら?


「違う違う。別にもう一回する訳じゃない」


 運動した後って、何故か眠くなってくるよね?


「今から昼寝をするだけさ。起きる頃には開けてくれてるだろうし」


「あぁ、そういうこと」


「それじゃあ、寝るかな」


 俺は薬品倉庫に置いてあるベットへ大の字に寝転がった。


「ねぇ、今更何だけど……何で薬品倉庫にベットがあるの?」


「………」


「………」


 ベットの横に座ったマーシャが不思議そうに俺を見てくる。

 コレは何か言わないとダメかな?


「……人体実験の為?」


「人体実験!?」


 嘘ではない。

 俺が定期的に犠牲となっているので事実である。


「まっ、まぁ、気にしない気にしない。今は身体が痛くならずにラッキーって考えるだけで良いんじゃん!」


 無理やりにでも話を流して、俺たちは眠りについた。






「……きて。ユ………起き……ユーリ、起きて!」


「う〜〜ん」


 誰かが俺を起こす声が聞こえてきた。

 寝起きのボーッとした頭の中で、やっと助けに来たのかと思い俺が目を開けた。


「マーシャ! 貴方って子は!!」


「痛い!痛いです!ルイ様!!」


「………」


「きゅ〜〜っ……」


 そこに飛び込んで来たのは、ルイさんによりアイアンクローされるマーシャ。

 それと何故かボロボロになって遠い目をしているトリシャさん。

 ついでに彼女の足元には目を回したリリンが転がされていた。


「あっ、ユーリ君。おはよう」


「挨拶の前に謝罪したらどうですか、母さん?」


 諸悪の根源であるリリィの声に目を向けた。

 彼女は罪人の様に胴をロープで縛られ、娘のリリスに引率されていた。


「ごめんね。ルイさんが来るまですっかり忘れてたのよ」


 どうやら、マーシャは内緒で抜け出してきたらしい。

 それに気付いたルイさんが慌てて追い掛けてきて発覚した様だ。


「リリィ。忘れてたって、アンタ……」


 この状況を作っておいて忘れるか?

 一体全体、どういう神経しているのだろうか?


「歳を取ると忘れっぽくなるので許してやって下さい」


「私、そんなに老けてないよ!? まだ、心と身体はピチピチだもん!! 子供だって、まだまだイケる!!」


「でも、実年齢はユーリさんが知ってる年齢よりも……」


「よし、私が悪かったわ。ごめんさいね、リリスちゃん!」


 今、一瞬聞いてはいけない事が聞こえた気が……?

 尋ねたが最後、お互いに後悔しそうなので聞こえなかったことにした。

 とりあえず、必要なのは現状確認。俺は母娘喧嘩を放っておいて、起こしてくれたアイリスに尋ねた。


「……何、この状況? なんでリリンもいるの?」


「う〜んとユーリの救出に来たら一緒のベットで気持ち良さそうに寝ているマーシャさんにルイさんが気付いて(物理的に)お説教?

 リリンはトリシャさんを回収しに行ったら転がってた」


 リリンはトリシャさんと一緒にいたから絶対に関係していると思い連れてきたそうだ。


「話はトリシャさんから聞いたよ。マーシャさんに手を出しちゃったんだって?」


「うっ!?」


 この件については、申し開きようが無い。

 俺はアイリスたちから文句を言われるのを覚悟した。


「大丈夫よ……。彼女たちには私から説明したわ」


 なんと、閉じ込められていた間にルイさんがアイリスたちを説得してくれたらしい。

 アイリスたちからは「大変だったね」と同情された。

 ホッとする反面、本当に良いのか心配になってくる。


「今後については談話室で話しましょう。それに擦り合わせも必要な様だしね」


 俺たちは談話室へと移動した。


「まずは確認。何でトリシャさんはそんなにボロボロなの?」


「それはこうさせた本人が言いますか? ユーリさんのせいで私は女としてだけでなく、身体までボロボロになったんですけど?」


「ごめん……」


 トリシャさんの笑顔が怖くて俺は素直に謝った。


「でも、牢屋に隔離しただけだよね?」


「その過程は……?」


「うん? すべり台からの転移で牢屋直通じゃないの?」


 俺の記憶が確かなら、その様に設定していたはず……?


「最終的にはそうですが、落ちて直ぐに待ち受けていたのは悪魔の選択でした」


 彼女の話によると辿り着いたのは謎の小部屋だった。

 出る為にはどちらかの扉を選択し、書かれた条件を満たさねばならなかったらしい。


「あっ、それってリリンが現在作成している迷宮だよね? でも、アレって2人以上じゃないと起動しない……揃ったのか?」


「うん。助けに行ったら2人揃ってた」


「なるほど。直ぐに使われないとリリンは思って、先に空間を繋いでいたのか。しかもそこへトリシャさんが来たもんだから……」


 迷宮は起動して、2人はボロボロになったと。


「うぅ……思い出しただけでも恥ずかしい。あんな……あんな事までさせられるなんて……。場合によってはお嫁にもいけなくなっちゃう……」


 そういえば選択肢を用意したのは俺だった。

 一体、彼女は何を引き当てたのだろうか?


「………」


 聞かないでおこう。聞いたが最後、地雷を踏み抜いてしまいそうだ。


「よし、トリシャさんの事情も分かったし。お仕置きを執行するか」


『お仕置き?』


「リリス。リディア。リリア。3名に許可します。リリィに『こちょこちょの刑』を執行」


 最近見付けたリリィの弱点。有意義に使ってあげよう。


「ちょっ!? 無罪を主張します!」


「却下。ギルティ」


「えっ? 嘘よね? リリスちゃんたちはそんな事をしないよね?」


「「「いえ、全力でします」」」


「ちょっ、まっ、アハハハ……!!」


 イヤイヤしながら後退るリリィに、3人は笑いながら飛びかかった。

 彼女の笑い声が周囲に木霊する。こうして悪は無事に討たれたのであった。

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