現行犯逮捕!
「逃さない!!」
「っ!?」
俺が咄嗟に壁へ手を伸ばす。
バンッ!という激しい音が周囲に響き、逃げようとした彼女の足が止まった。それからすかさずもう片方の手も突いて、彼女を完全に追い詰める事に成功した。
「ずっと気になってたんだよね。俺たちのBL本が何処から来てるのか?」
女性陣は問い詰めてもその結束は固く、絶対に口を割らない。
俺たちは仕方なく自衛する事にした。特にネタになりそうな行為や執筆の気配には目を光らせていた。
「そのかいもあってここ最近は出回っていなかったんだけど……」
花見の準備を始めてからの女性陣の反応が怪しい。
調べてみるといつの間にか最新のBL本を入手していたのだ。
「だから、外部の可能性を考えた矢先にコレだよ」
俺は彼女の側にあった机へと目を向ける。そこにはうず高く積まれたBLの山が置かれていた。
「どういう事か、説明してくれるよね? トリシャさん!!」
そう、BLの作成者にして販売者はトリシャさんだったのだ。
**************
話は少し前に遡る。
俺は花見への招待状を渡す為に竜神殿へとやって来た。
「こんちわッス! ルイさん!」
「いらっしゃいませ、ユーリ様」
「あら、いらっしゃい。ユーリ君。どうしたの?」
転移門を潜るといつも通り、ルイさんたちが真っ先に出迎えてくれた。
「花見の招待状が出来たので持って来ました」
「あらあら、わざわざありがとうね。直接言ってくれるか、投函の魔法で良かったのに」
「ふふっ、実は子供たちが頑張ってくれまして。なんと、あの子たちの手作りなんです!!」
「まぁ、本当なの!? 見せて頂戴!!」
「はい、コレがルイさんの分ですよ」
招待状には子供たちの拙い文字と切り貼りによって作られた絵が描かれている。
「額縁に入れて飾っておくわ!!」
「子供たちがそれを聞くと喜びそうですね。……ところで、今日はトリシャさんはお休みですか? それにこちらの方は?」
今日出迎えてくれたのはトリシャさんではなく、おっとりした雰囲気を纏った見知らぬ天使さんだった。竜神殿の天使さんとは全員顔見知りな俺なのだが、彼女とは全くと言っていい程に彼女とは面識がない。
しかし、来た時には名前を呼ばれていた。どうやら彼女の方は俺の事を知っている様だが……?
「やはり貴方がユーリ様なのですね。娘のおかげで直ぐに分かりましたわ。私は、マーシャといいます」
「あっ、どうもマーシャさん。ユーリです。ん?……娘って誰ですか?」
「トリシャよ。彼女はトリシャの母親なの。……ちょっと訳有でね。先週からここで働いているわ」
なんと彼女の正体はトリシャさんの母親だった。
確かによくよく見てみるとトリシャさんに似ていなくもない。
ただ雰囲気がクール系でなく、おっとり系なので言われるまでは母娘だとは気付かなかった。
更に先週から働いているのなら会った事が無いのは仕方ない。
「トリシャとは仲が良いし、"様"付けはあまり好まないので他の天使さんみたいに呼んで下さい」
「ありがとうございます。ユーリさん。………やはり娘から伺っていた通りの人なのね。懐が広いわ。それにとても良い匂い……」
俺に近付きクンクンと鼻を鳴らすマーシャさん。美人さんのそんな態度に俺は少し恥ずかしくなった。
「……すいません。汗が匂いますよね?」
「うん? あぁ、大丈夫よ。そんなに臭わないから」
「えっ? でも、今……」
「私が嗅いだのはその人に染み付いたお金の匂いよ」
おや? 聞き間違いかな?
マーシャさんからはちょっと想像が出来ない事を言われたぞ。
「ハァ……ハァ……なんて濃厚なお金の匂いなの……」
「変態だぁああーーっ!?」
トリシャさんに悪いが、マーシャさんはかなりの変人だった。
「ルイさん!! ここにヤバい人がいます!?」
「はぁ〜っ、やっぱりダメか。早速ボロが出てしまったわね」
ルイさんはマーシャさんの変態性を知っていたらしくため息をついていた。
「彼女はお金が大好きでね。普通はいい子なのに、お金が絡むとちょっと変になるのよ」
「ルイ様。変とはなんですか。私は少しだけ皆よりお金の大切さを知っているだけですわ。お金が有れば何でも出来ます!」
「それは何でもは良い過ぎよ……?」
「いえ、事実です! 愛は買えます!! 一夜限りを娼館で!」
「「本当だ!?」」
「ちなみに私も買えます。月に金貨40枚程です!」
「安いよ! 自分を大切にしようよ!!」
「え〜〜っ、でもこれは一般の3倍以上ですよ?」
「うちの奥さんたちへのお小遣いと一緒じゃん!!」
「すみません。ルイ様。嫁ぎ先が見付かりましたので、本日で退職致します。幸せな家庭を作りましょうね、アナタ」
「待てこら!」
俺の意見も聞かずに奥さんぽく横へ立とうとしたマーシャさんに、ルイさんはヘッドロックをかました。彼女のパワーを知っているから心配になる。
「イタタッ!! 胸は柔らかいけど締付けがイタイ!!」
思いの外、ピンピンしていた。言い訳出来るなら大丈夫だろう。
「あっ、娘への挨拶ですね! 大丈夫です! ちゃんとやります!」
「そうじゃ無いわよ!!」
「それなら娘も一緒に……? 確かに私だけでは持たないかもですね。娘の本を見るに超が付くほどの絶倫と大きさですから……」
「本? 本ってまさか……?」
俺に心当たりが有るのは当然ながらうちで出回っているBL本の事だ。
「あっ、マーシャのおバカ! ユーリ君にバレちゃったじゃない!?」
「だっ、だって〜〜っ!」
ルイさんが締付けを強めたのか、マーシャさんは先ほどより苦しそうに涙目になった。
「どうするのよ! トリシャちゃんがBLの作成者で、私がユーリ君たちの気を引いてる内に配布してるってバレたわよ!!」
喋り始めたら止まらないのか、どんどんと語るに落ちて行くルイさん。よくよく考えるとBL本が出回る直前にはルイさんが来ていたのを思い出した。
まさか、裏でこんな事をしていただなんて……。
「しかも今日居ないのは即売会の途中だからなんて!!」
「ファッ!? 即売会だって!?」
「「あっ」」
「よし、二人とも答えて貰おうか? トリシャさんは何処に居るの?」
「「えっ……と」」
「何処?」
「「隣の秘書室です」」
英雄覇気を漏らしながら有無を言わせない笑顔で問い詰めると2人はアッサリと白状した。
**************
そんな経緯があって現在に至るのだ。
「まぁ、良いか。あとで聞くよ」
「ホッ……」
「炎」
「私の本がぁああーーっ!?」
ホッとしたのも束の間、俺のルーン魔法によりBL本の山は火に包まれた。
数冊なら許せたけど、この山は許せ無かったわ。
「水!水!水ぅううぅぅ!!」
トリシャさんは急いで鎮火したが時すでに遅し。BL本たちは見事に灰くずへと姿を変えていた。
「あぁ……私の成果が……」
涙目でトリシャさんはガックリと項垂れた。入口からはルイさんたちが申し訳無さそうに覗いていた。
「落ち込んでいる暇は無いよ。じっくりと聞かせて貰うからね」
「おっ、お手柔らかに……」
そして、俺はトリシャさんを拘束して、我が家へと連行した。
投稿ペース遅れてまくってますが、その分面白くするので勘弁して下さい。
上げたら基本Twitterしてるので良ければそっちも宜しくお願いします。




