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キョウカ

「……つまりですね。そうそう死なないという事は、それだけ痛みが続くという事なんですよ。だから、アダムスの様な人には……絞め技が有効なんです!」


 キョウカは何かをやり遂げたかの様に良い笑顔をしていた。


『なるほど!そんな手が……っ!』


「他にも……」


 そんな彼女から教えを乞うのは、うちの嫁さんたちである。


 あははっ、それを一体誰に使うんでしょうね?

 まさか、俺とか言わないよね?


 とりあえず、俺はキョウカさんにうちの嫁さんへこれ以上変な事を吹き込まないでくれとお願いする事にしよう。


「でも、その前に。お〜い……生きてる?」


「………」


「良かったな。ダメージ蓄積による強制退場のおかげで解放されて」


「………」


 俺は倒れたアダムスを木の棒で突いてみた。

 彼はまるで生きた屍の様だ。ピクリとも動かないが一応は生きてる様だ。


「仕方ない。あとは奥さんに任せるか」





 翌日、アダムスは普通に復活していた。


「いや〜、キョウカ。アレは無いよ。本気で背骨を折られるかと思った」


「でも、貴方がいけないのですよ? 私の可愛い生徒たちを虐めるのですから」


 しかも、アレだけの事をされたのに夫婦の絆は健在の様だ。


「んっ? 可愛い生徒?」


「あっ、そういえば言ってませんでしたね。キョウカさんは魔法学校の幼少組の校長先生なんですよ」


「幼い頃から褒める時は褒め、叱る時は本気で叱りつけてきたので、生徒を我が子の様に思っていますの」


「なるほど。それでか」


 さっきからキョウカさんの後ろでは生徒たちが気を付けの姿勢で軍隊の様に並んでいる。

 その顔には『逆らってはいけない』と書かれている気がした。


 今日は林間学校の最終日という事で、休息日になったのだから自由にすればいいのに……。


「おや? お〜い、そこに居るのはキョウカちゃんじゃないですか?」


 キョウカさんを呼ぶ声に振り返るとアディさんが色々溢れ出しそうにしながらやって来ていた。


「まぁ、アフロディーテ! 貴方、こっちに来てたの!! 久しぶりね!!」


「やっぱり、キョウカちゃんでしたか。久しぶりですね。私は去年からここで生活してるんですよ」


「エロースちゃんに聞いてたけど本当だったのね♪」


 どうやら2人は仲良しらしく、キャッキャウフフと触れ合い飛び跳ねている。

 おかげで俺の目は2人の果実から離せそうにない。


「……ユーリさん? 母さんのがそんなに気になりますか?」


「ハッ!」


 アディさんの事が心配でついて来ていたエロースの声で俺は正気に戻った。


「いや、その、流石に溢れそうだなと……」


 エロースのジト目と自身の苦しい言い訳に冷や汗が流れ落ちた。


「まぁ、女の子のおっぱいには夢が詰まってますからね。惹かれるのは仕方ないでしょう。それに母さんのには私もハラハラしますし、何れ私もアレになるかと……」


「それは無理では? アレは遺伝って感じじゃなさそうだし」


「………」


 その後、エロースが「コレでもまだ成長中だもん」と言いながらイジけたのでフォローするのに苦労した。


「それでアディさんとキョウカさんとはどんな関係なんですか? 凄く仲良さそうですね」


「彼女とは親友にして戦友なんです」


「昔の私たちはやんちゃだったのよね〜」


 若い頃のやんちゃか……。

 盗んだバイクで窓ガラスを割るレベルだったりしてね。


「何がやんちゃですか。国を平気で潰したりして『七つの大罪』と呼ばれ恐れられていたのに……」


「やんちゃのレベルじゃないよ!?」


 まさか、彼女たちの言う"やんちゃ"が国潰しだとは想像も出来なかった。


「その渾名は懐かしいわね。気が強そうだからなのか『傲慢(プライド)』とか言われたわね」


「私は『色欲(ラスト)』と言われていたわね。主に男性の方から。何故かしら?」


「「「………」」」


 キョウカさんは何も言わないがアディさんの胸……というか服を見ていた。多分そういう事なのだろう。


「……って事は、あと5人も居るのか?」


「ええっ、そうです。でも、ユーリ君は既に半分はお会いしてますよ。例えば、リーダーであった『憤怒(ラース)』ならそこに居ますし」


「えっ、何処?」


 エロースが示した方向を見てみると。


『ルイねぇ〜!』


「皆〜っ、元気かな? ルイお姉さんと遊びましょう♪」


 孫たちと戯れるルイさんの姿があった。


「よし、何も無かった」


 俺はお義母さんが孫たちに"お姉さん"と呼ばせている光景なんて見てはいない。


「ちょっ、母様!? 子供たちになんて呼ばせているんですか!?」


 後ろからマリーの非難の声も聞こえて来るが気のせいだろう。


「あと一人は?」


「イザベラさんの中にいるイザベルさんですよ。天使族は少ないので母さんと一緒に記録を調べていたんです。タイミングからみて恐らく本名はイルミナで『怠惰(スロース)』と呼ばれていた人かと?」


「えっ、嘘っ!? 彼女が生きてるの!?」


 コレにはキョウカも目を見開いて驚いていた。


「意識だけの存在だけどね。記憶も欠落してるみたいだし、私だけじゃ確証が得られないけどね」


「それでも会ってみたいわ! アディ! 彼女の元に連れて行ってくれないかしら!!」


「確かにその方が速いかもね。一番親しかったのはキョウカだし。さっき屋敷の図書室で見かけたから会いに行きましょう」


「屋敷の中なのね! 急ぎましょう!!」


 キョウカさんはアディさんの手を取ると屋敷に向かいグイグイと早足で行ってしまった。


『………』


 おかげで俺たちは完全に放置状態である。


「……ついでにニアピンでもう一人会ってますが名前を聞きますか?」


「……それは誰?」


「トリシャの母親です。あと2名は私も知りません」


「ちなみにトリシャの母親がなんて呼ばれていたかは分かる?」


「『強欲(グリード)』です」


 とりあえず、トリシャの母親とは会った事が無いが危険人物のカテゴリーに入れておこう。


「生徒の皆には平穏なる小世界(イレーネコスモス)を開放するから校長とゆっくり休んで帰ってくれ」


 ひょんな事からアディさんたちの過去のやらかしを聞いたりしたが、魔法学校の生徒たちの林間学校は無事に終わりを告げた。

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