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短い様で長かった

「ーーという訳で今回の件は一件落着となりましたとさ」


「事前情報よりややこしくなったみたいだな……」


 長かった視察を終えた俺は冒険者ギルドへと報告しにやって来た。


「連れ帰ったマナカス殿はどうしてる?」


「書類仕事をして貰ってたけど……今は調理の方をして貰ってるよ」


 召喚配達(デリバリー)の利用者は想定内。

 しかし、気軽に注文出来るとあって個人の注文数が増加したので作れる人を増やす必要があった。


「最初はどうなんだろうと思ったけど? 本人が凄くやる気なんだよね」


 初めてセリシールのお菓子を食べたマナカスはその美味さに感動して放心していた。

 それ程までに衝撃を受けた彼にお菓子作りを教えると直ぐにその魅力に取り込まれてしまった。


「とりあえず、城の修理費を稼ぐまではうちで働いて貰うかな?」


「ユーリの方は請求されなかったのか?」


「天井まで壊れたから改修して露天風呂にしたら許されたよ」


 そんな訳で浴場の修復までは俺が行った。外壁の方はメルヘン公国の職人に任せるとの事だった。


「……それでギルさんは何処まで知ってたの?」


「魔物の輸送と危険植物だな。持ち込まれた魔物や植物は魔王国のモノだ。現魔王が四天王の時に傭兵たちを調査していて判明したらしい」


 何やってんだあの人。分かってたんならそこで対処しろよ。

 後で元魔王のヴィクトリアを通じて文句を言っておこう。


「それで視察の結果だが……ユーリの目から見てどうだった?」


「冒険者の質があまりにも悪い」


「やはりか……」


 ギルさんは深い溜め息を漏らした。

 メルヘン公国の冒険者の事は前々から問題になっていたらしい。

 なので、今回の報告次第ではメルヘン公国の冒険者ギルドを潰す事も検討されていた。


「でも、そこは高ランクのエルフに数人行かせて指導すれば改善するかも……」


「エルフ?」


「うちのリリスたちが色々したみたいで……」


「エルフの指導……なるほど。そういう事か」


 俺が苦笑しながら言うとギルドさんも何かを察したらしく納得した顔をしていた。


「なら、数人見繕って様子を見るとしよう」


「そうして下さいな。報告はこれで終わりになります」


「あぁ、お疲れ様」


 後の細々した問題は一緒に提出した書類を元にギルさんたちが何とかしてくれるだろう。これにてエドワード誘拐から始まった騒動は一件落着なのである。


 という訳で、要件を済ませた俺は冒険者ギルドを後にして急ぎ妖精の箱庭(フェアリーガーデン)へと転移した。

 何故なら今から重要な話し合い……裁判が行われるからだ。





「被告。ユーリは……」


『有罪です』


「………」


 裁判長であるマリーの合図でお留守番していた嫁さんたちから有罪だと言い渡された。

 予想通りといえば予想通りなので俺は何も言えない。


「まさか、シズちゃんを孕ませるとは……」


「すみません……」


 今回裁かれた理由はシズが妊娠した事にある。


「はて? シズが妊娠した事に何か問題でも?」


「妊娠したって事は子供を作れる大人になったって事よね? なのに何でユーリは責められているのかしら?」


「そうですね。何がおかしいのでしょうか? 目出度い事の筈なのに?」


 この状況を見ていた精霊の皆さんは、どうして俺が責められているのか分からないらしい。


「そっ、それは未成年だから……」


「でも、それって人間が決めた人間のルールよね?」


「まぁ、確かにそうだけど……。世間体とか色々……ねぇ?」


「「「???」」」


 どうやら本当に3人は分からないらしい。

 他の嫁さんたちに助けを求めるもなんて説明したら良いか分からず悩んでいた。


「え〜っと、つまりはシズが成人していれば何も問題ないのよね?」


 少しだけ理解出来たらしくエリスが尋ねてきた。


「まぁ、そうなんだけど……」


 成人しているのなら他人から何と言われようと自由だ。


「だったらさ。シズはエルフなんだからエルフの認識に当てはめれば良いだけじゃない」


『あぁ〜っ、なるほど!』


 何故か、エリスの言葉で周囲からは納得の声が挙がった。


「そうでした。ついつい人間を基準にしてましたよ」


「ユーリさんが犯罪者にならなくて良かったです」


「なら、問題解決ですね。解散解散」


「ユーリさん。次からは気を付けて下さい」


『はい?』


 困惑する俺たちを他所に解散し始めたエルフたち。

 俺は知識人であるリリィを捕まえて問いただした。


「エルフには成人と認められる方法が三つあるの。1つは誰もが知ってる年齢。もう一つは里で何かしらの立場に付く事ね」


「私が巫女に成った時は人間でいう未成年でしたが、成人という事になりました」


 シシネの説明からリリィのいう立場とは長や巫女の様だ。

 確かに未成年が上に立つと云うのは問題となるからな。


「そして、もう一つは……」


「「妊娠」」


「早い娘だと父親と性の勉強中に出来たってあったわよ(笑)」


「あの娘はシズさんより幼かったので確かに大変でしたね(笑)」


「笑い事じゃないよね!?」


 どうなってんだ!エルフの性事情!!

 周りを見てみろよ。殆どの人がドン引きしてるじゃないか!!


「とっ、とりあえず、この件はセーフという事で黙認としましょう。ユーリさんは釈放です」


「良かったわね、アナタ!皆に認められたわ!」


「うん。良かったけど……」


 抱き着いてキスの雨を降らすシズを受け止めながら、これで良いのかと悩む俺であった。


「シズは初めての妊娠だから色々大変だと思います。私は体型も近いので色々相談に乗れますよ」


「あっ、多分大丈夫! 妊娠の記憶はしっかりと有るから!」


「あっ、そっか。シズはダフネの写し身だもんね」


「うん!だから、成人がとか色々言ってたけど肉体が少し若いだけで中身はダフネと同い年だよ!」


『そうだった!』


 コレには他の人たちも納得した様だ。

 スッキリした顔になり悩むのを止めていた。


 そういう訳で俺はセーフ?という事で認められたのだ!

 新しく子供も増えるし俺たちに幸せな未来が待っている!






 シズの件が解決して持ち場へ戻る途中にリリスはある事に気付いた。


「アレ? でも、ユーリさんは避妊してたような?」


 リリスは踵を返して戻ると直ぐにシズを捕まえて人気のない所へ連れ込んだ。


「どうやって魔法から逃れたのですか?」


 ユーリにベタ惚れのシズが浮気するはずがないので、リリスは単刀直入で問い詰めた。


「バレちゃったか! 実はあの魔法に細工したの。仕組みからして……」


「なっ!? そんな方法が!?」


 シズからの話は目から鱗が落ちる程に驚きであった。


「ふっふっふっ、コレをすると妊娠率も高まるわ!」


「コレはエルフだけの秘密として知らせねば!!」


「ちゃんと調整しないと他の人にもバレるから程々にね」


「分かってます!とりあえず、スルーズたちから……」


 その後、エルフ嫁たちの妊娠が続き結局バレるのであった。

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