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従順な冒険者たち

 リリスたちのあとを追い掛けて、冒険者ギルドが築いた魔物からの防衛拠点へと辿り着いた。


「よし、キリキリ働くか!今日も長いーー」


「あっ、ユーリ。終わったよ」


「殲滅完了しました!」


「うん。分かってた」


 到着して早々にリリスたちから戦いが終わった事を告げられた。

 彼女の背後には大量に転がる魔物の死骸とクレーターが広がっている。惨状から見て恐らく彼女たちがやったのだろう。


「2人なら当然か。でも、偉い偉い。良く頑張った」


「えへへっ♪」


「あっ、リリス!ズルい!私も私も!頑張ったから褒めて褒めて!!」


「お〜っ、よしよし。シズも頑張ったな」


「んっ……。私、これ大好き!」


 リリスを撫でるとシズもお強請りしてきたので一緒に撫でながら褒める事にした。

 しかし、それを見ていた者たちからは殺気を向けられた。


「おい、あの遅れてきた野郎は何者だ? 俺らの姐さんに気安く触れやがって!!」


「全くだ! あんなヒョロ男は姉御の隣に立つ資格はねぇ!」


 殺気の主たちは少し離れた所から睨む冒険者たちだった。

 まぁ、嫁さんたちの事で嫉妬されるのは今に始まった事では無いので、俺は華麗にスルーする事にしよう。


「あっ、リリス。大事な耳に泥が付いてるよ」


 戦闘によって跳ねた泥が耳に付いてしまった様だ。

 俺は泥を取ろうと彼女の耳に手を伸ばし、ゆっくり抜き取る様に沿わせた。


「んっ、あんっ!」


「エロっ……」


 リリスは耳に触れると身体をビクッと震わせ、口からは艶っぽい吐息を漏らした。それを直に聞いてしまった冒険者たちの多くが前屈みになるのだった。


「おい、てめぇ! シズさんだけでなくリリスの姐さんにーー」


「少し黙れ。まだ、躾が足りないの?」


「サーセン! (こっ、怖ぇええ!? 機嫌損ねたら次は殺られちまう!?)」


 俺への文句を言いに来た男性の顔面をリリスが鷲掴みにすると振り向き様に何かを呟いた。するとそれを聞いた男性は顔を青褪めて大人しくなるのだった。


 一体、何を呟いたのやら?


 そうこうする間に他の冒険者たちも近付いてきた。


「リリスの姐さん!こちら飲み物になります!!」


「ありがとう。貰うわ」


「シズの姐さん!こちらドライフルーツです!おやつにどうぞ!!」


「あら、ありがとう。ちょうど疲れたから糖分欲しかったの」


 彼らはリリスとシズの舎弟の様にアレやコレや尽くすのだった。


「あっ、あの〜っ、所でこの方は姐さんにとっての何者ですか?」


 そんな中、冒険者たちは俺の事が気になるらしくリリスへと尋ねた。


「私たちの旦那です」


『旦那っ!? この人がっ!?』


「何か、ユーリに対して失礼」


「魔物みたいに吹き飛びますか?」


『滅相も有りません!強そうな方ですね!!』


「「宜しい」」


『アザース!!』


「………」


 冒険者たちが完全に調教されとる。

 俺が来るまでの間に何があったのだろうか?


「何で彼らはリリスたちに従ってるの?」


「それは私がここのギルドマスターから指揮権を頼まれたからです」


 何でもワザワザ屋敷にギルドマスターがやって来てお願いされたそうだ。


 どうやらギルドマスターだけには、ギルさんの手回しで俺たちが身分を偽って視察する事が伝えられていたらしい。


 だから、俺たちがアレだけ1日に大量のクエストを受けても呼び出される事は無かったし。

 襲ってきた冒険者たちの身ぐるみを剥いで騎士団に引き渡しても問題にならなかったのだろう。


「そして、ユーリさんたちがいなかったので代わりに私が……シズは逃げましたので」


 リリスがジト目でシズを見ると彼女は目を逸した。


「だって、面倒くさいと思ったんだもん。案の定、冒険者たちは素直に従わなかったし。でも、躾には参加したよ」


「そうですね。それには助かりました」


『ヒッ!?』


 リリスたちが冒険者たちに目を向けると彼らは小さく悲鳴を上げていた。


 本当に一体何をしたのかな!?


 なんか冒険者たちの事を可哀想に思う俺だった。


「たっ、大変です! 先程とは比べ物にならない程に大型の魔物が接近してます!!」


『なんだと!?』


 急ぎ足でやって来たメルの発言で周囲に緊張が奔った。


 魔力感知で見て見ると飛行系の魔物がこちらへとやって来ていた。魔物たちが撒き散らした多量の血に反応したのかもしれない。


「グギャアアーーオッ!!」


 魔物の声で空を見上げるとそこには大型の鳥が飛んでいた。


「どれどれ……」


 名称:シクイバード

 危険度:A

 説明:死肉を好み、血の匂いに惹かれ易い。敵がいない地域では大型化しやすい傾向にある。また、その身には自身の食生により大量の寄生虫を飼っているので四散防止に務める必要がある。


「ヤバいぞ!? 既に寄生虫を蓄えてやがる!!」


 シクイバードの目や腹の一部からはミミズの様な寄生虫が蠢いているのが確認出来た。


「クソッ!? ただでさえ飛行型なのにどうやっーー」


「アブソリュート」


「ギャッ?」


『はっ?』


 俺はシクイバードの上に転移すると氷魔剣アブソリュートを抜いて縦に両断した。

 魔物の身体からは腐敗ガスが抜け、寄生虫は何が起こったのか分からない内に氷魔剣で一緒に凍結されて動かなくなった。


「コレで引火による爆散の心配はないから消し炭に出来るな」


 寄生虫には、火を!

 今度は落下するシクイバードの下に転移して、炎魔剣イフリートをアイテムボックスから抜くとその切っ先を向けた。


「燃え尽きろ。竜王焔火咆(ガイアスフレア)!」


 剣先から放たれるビームにも似た高温の熱線がシクイバードの身体を飲み込むと"ジュッ"という音と共に消え去り、空には綺麗な星空だけが残された。


『えっ?』


 周囲の冒険者たちはこの状況に付いていけず


「アイリス。他に魔物の反応は有る?」


「無いよぉ〜。また、来られても面倒だから掃除するね」


「よろしく」


「それじゃあ、皆キリキリやっちゃって!」


 アイリスが召喚したスライムたちが地面に広がった血を吸って綺麗にしていく。

 可能なら魔物の死骸も片付けたいが、素材は金になるので他の冒険者たちの為にもやめる事にした。


「流石は、ユーリだね。あんなに大きいのも一撃なんて!」


「私も妻の一人として誇らしいです!!」


『マジかよ……』


 冒険者たちはやっとこの状況に付いて来られたのか正気に戻って驚きを漏らしていた。

最近、投稿がめっちゃ遅くてすみません。

なるべく出せる様にしたいと思います。

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