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王家の秘密

 ギンカたちが騎士団に逮捕されたのでそれを迎えに行ったユーリも何故か逮捕される事となった。


 そして、牢屋で再会したギンカたちから襲撃犯に交じっていた貴族によってカルナが連れ去られてしまったと聞かされた。

 それを知ったユーリは魔法で偽物の自分たちを作りだすと3人で脱獄するのだった。


 その頃、連れ去られたカルナはというと知らない屋敷の一室に軟禁されていた。

 厚そうな壁にしっかりと鉄格子で守られた窓。魔法処理が施されているのか、自身の声が漏れている様子もない。


 皆やユーリさんから頂いたマジックアイテムの数々を信頼しているけど、流石に怖いわね。逃げる時の為に部屋の特徴を調べておかなくっちゃ。


 そう思いながら部屋を調べていると入口のドアの取手が下がり2人の男性が部屋へと入って来た。

 1人は私を騎士団から身請けした男で、もう1人については初めて会う人物だった。


「おいおい、逃げようとしてたか? でも、残念だったな。この部屋は中で女をどう扱おうと音が漏れた事はないぜ?」


「クズ………」


 私たちを襲撃した際に参加していただけあって、ここに連れてきた男は見事なまでクズっぷりを見せてきた。


「バカ者。協力者になって貰う相手を怯えさせてどうする?」  


「悪ぃ……兄貴」


 しかし、兄とされる男の方はまだマシの様だ。


「彼女みたいなのは精神的に追い詰めて従うしか無くするんだよ」


「流石は兄貴だぜ!」


 訂正。コイツも十分クズらしい。

 見た目がまともな分、弟よりもタチが悪そうだ。


「私を此処に連れてきたのは何故? エドワードを誘拐したのと関係があるの? 彼に会わせて!」


「残念ながら奴は此処にはいないぜ?」


「居ない? 貴方たちが誘拐したんじゃないの?」


「それだと良かったんだけどな。誘拐出来ていれば、アンタなんかに用はーー」


「そこからは私が話そう」


 部屋の扉が開くと同時に声がしたので視線を向けた。


「っ!?」


 そして、部屋の入口を見た私はその光景に息を呑んだ。


「おっ、その感じは親父を知ってるみたいだな」


「まぁ、当然だな。この国の重鎮な訳だし」


「いや、そうではなく……」


 私は別の事で驚いているのだが、彼らはそれを勘違いしてしまった様だ。


「ははっ、そう褒めるな。息子たちよ。それに彼女が慄くのも無理はない。それでは改めて名乗ろう。私はメギストスだ!」


「そうですか。……あっ、貴族派のトップなんですね」


「やはり知っていたか!私はこの国で知らぬ者がいない程に有名だものな!!」


「………」


 有名なんですね! 今知りましたよ! ユーリさんの掲げたボードで!


 実は、メギストスさんが部屋に入って来た時に、ユーリさんたちも一緒に入って来ていたのだ。

 最初は背後で手を振っていたのでグルかと思ったが、ユーリさんたちが発する音が一切聞こえて来ない事に気付いた。

 しかも、この親子たちが動いた拍子にぶつかりそうになった所を見て違うと分かった。


「なら、私に逆らうとどうなるか分かるであろう?」


「まぁ、分からなくはないですが……私を連れてきた事情を話してくれるのですよね? エドワードが此処にいない理由も?」


 これにはユーリさんたちも驚いたらしい。彼らの背後で目を何回もパチクリさせていた。

 それも当然だ。囮を使って敵を釣ったつもりが別の敵が釣れたのだから。


「良いだろう。どうせ逃げられぬし。自分がどういう立場にいるか分かれば協力的になるだろう。長くなるがしっかりと聞く事だ」


 メギストスは部屋に置いてある椅子へそうそうと座ると偉そうに語り出した。


「君は現王に兄が居たことを知っているかな?」


「ええ、まぁ……」


 メギストスの背後から博識のユーリさんがボードで解説してくれた。


 現王には王位を継いだばかりの優秀な兄がいたらしい。

 しかし、20年前に不治の病でこの世を去った。その人には子供が居なかったので必然的に次男である現王に王位が回ってきたのだそうだ。


「王に子が居なかったから、弟が王位に就く。当然の流れだが、もし先王に子が……それも男の子が居たらどうなる?」


 その場合、その男の子が順番的に上位に来るだろう……。


「えっ? まさか……」


「そうだ。エドワードがそうなのだ」


「嘘……でしょ?」


「事実だ。王家が……特に先々代の王が必死に隠した秘密だがな」


 ユーリさんが急いで家系図を書いていく。

 それによるとエドワードのお祖父さんが先々代で、先王がお父さん。叔父さんが現王という事らしい。


「アレ? でも、現王のお兄さんに奥さんは居なかった筈じゃ?」


 ユーリさんの書いた家系図でもお兄さんの奥さんは空白になっている。


「居なかったが、彼には常に側に置いていた最愛の侍女がいた。その娘との間に出来た子だ」


 メギストスが語るには先王の死後、侍女は国を離れて自身の故郷へと移り住んだ。そこで先王との子であるエドワードを産んで慎ましく暮らしていたらしい。


 しかし、先王の遺書により遺品を届けた者がエドワードの存在に気付き判明した。


 その時には既に現王が即位していた事もあり、騒ぎを避けたい王家は資金援助を条件に秘密にする約束を取り付けたのだとか。


 王位を継がせる気がない母親はコレを受け入れ、バレない資金援助の為にダッフルベル商会が作られて与えられた。


「騒ぎを避けたくば王位を破棄させれば良いものを。されど先々代はそうしなかった。……保険を掛けたかったのだろう。あの方の兄弟も病死故な」


「まさか、貴方!?」


 私の中にある可能性が浮上した。

 エドワードの王位が現王より上で有ること。私に協力させたいという話。


「エドワードを傀儡にしてこの国の実権でも握る気っ!?」


「流石に気付いた様だな。なら分かるだろ? お前はその為の人質だ」


「エドワードが脅しに屈すると思ってるの!?」


「色々と調べさせて貰った。その結果、君の存在は十分効力を発揮するだろう。君が此処に居ることを知れば駆け付けるだろうさ。

 大体、本来ならエドワードを誘拐して無理やり魔法契約書にサインさせるだけで済んだ話なのだがな」


「現王の権威を失墜させる為、わざわざ管轄している領地に危険性植物を植えたり……」


「それに反応する魔物を誘導したりと手の込んだ事をしたが無駄になりましたね」


「そこまでして……」


 彼らのやりように驚きを通り越して呆れてしまった。


「エドワードを操れる様に協力してくれるなら君を自由にして旨い汁も吸わせてやろう。少し時間をやるから考えたたまえ」


 そう言って3人は部屋を後にした。


「さて、エドワードが居ない事が分かったし……。どうしようか?」


 私たちは部屋から声が漏れないことを利用して、今後について話し合った。

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