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逮捕されました

 カリスの屋敷で騎士からギンカが逮捕されたと聞かされた俺は詰め所へと迎えにいった。

 牢屋に行くと鎖で厳重に拘束されたギンカと手錠をされて申し訳なさそうにしているミキの姿があった。


「……なるほど。そういう理由で捕まったのか」


「てへっ、ミスっちゃいました」


 誰に教わったのか?

 ギンカは小さく舌を出しながらハニカんだ。


「可愛いから許す!」


「前もだったけど、ユーリさんは少し甘過ぎでは……?」


「えっ? でも、別に悪い事はしてないよね?」


 襲われたから返り討ちにした。やった事はそれだけだ。

 捕まった原因だって、ギンカが魔物体に戻った所を一般人に見られて通報されてしまったからだし。


「それに襲撃犯も襲撃犯だ!被害者面しやがって!……次会ったら俺が叩き潰す!」


「アタイがちゃんと説明出来れば良かったんだけどね……」


「仕方ないさ。多数決の原理。よくある事だよ」


 通報されただけなら身内であるミキが説明すれば捕まることはそうそうないだろう。

 しかし、今回はギンカたちを襲撃した奴らが駆け付けた騎士団に対して助けを求めたのだ。

 ミキはギンカの無罪を必死に説明したらしいが、ギンカに怯えた襲撃犯。しかも路上に正座させていた事も相まって逮捕される流れになったらしい。


「……所で、さっきから凄く気になってる事が有るんだけど良いかな?」


「ミキも奥さんなんだし、遠慮なく聞いてよ♪」


「何でユーリさんも手錠されてこの牢屋にいるのさ?」


「………」


 ミキの言葉で自身の手首へ目を向けるとそこには黒く反射する重々しい手錠が付けられていた。

 コレは対魔導師用に作られた騎士団が使う特注の手錠だ。

 魔力を抑制するので、並の魔導師なら魔法が使えなくなる。


「そういえば、迎えに来てくれたのでは無かったのですか?」


「いや、確かに2人を迎えには来たんだけどさ。廊下で俺を襲った冒険者連中と会っちまって……窃盗の容疑がかけられたのさ。だから、一時的に拘束だって」


 彼らが詰め所で目を覚ますと自分の装備が一切無くなっていた。

 騎士団へと引き渡したのは俺なので当然容疑の目が向けられる事となった。


「腹いせか……災難だったね」


「全く、身ぐるみ剥いだくらいで騒ぎ過ぎだよね?」


「ユーリさん、何しちゃってんの!?」


「何って? 奪いに来たから逆に奪っただけですけど? それに他人から奪おうとする方が悪い。……地獄に落ちればいい」


「ちょっ、ユーリさんから何か凄く闇が漏れてる!? ユーリさんって、こんな人だっけ!? 帰ってきて!?」


 昔の事を思い出して闇に沈んで行く俺をミキは必死に引き上げるのだった。


「殺るからには殺られる覚悟を持つのは当然です」


「ギンカさんもここは戦いの場じゃないからな! というか、こっちを手伝ってくれよ!?」


「私、拘束されて動けません」


「ドンチクショウ!!」


 その後、ミキの介抱もあって俺は無事にダークサイドから帰還する事が出来たのだった。


「それでその装備はどうしたんだい?」


「ああ、安心してよ。ちゃんと冒険者ギルドに売っといたから」


「売ってた!? この人、鬼なのっ!?」


 鬼言われたので額を撫でた。生憎鬼人族じゃないので角は有りません。


「まぁ、実際は売ったと言うよりは冒険者ギルドに迷惑料として引き取らせた。後で冒険者ギルドから返却するってさ」


「それを聞いて安心したよ(……ユーリさんならやりかねないからね)」


 どうやらミキは俺を襲った冒険者たちの事も心配していた様だ。

 慈悲の心も持ち合わせたミキを良い女だと再認識したよ。


「所で、カルナは?」


「「あっ!」」


 2人はどうやら完全に忘れていたらしい。


「そうだった!実は襲撃犯の一人が貴族の嫡子だったんだよ!!」


「騎士団とも繋がりがあったらしく、カルナはその者に連れられて牢屋から出て行きました」


「そうか。なら、追いかけよう」


「どうやって? 私たちは拘束されて魔法もーー」


 バキッ!


「んっ?」


「なら、私も抜けますか」


 バキッ!べキッ!ジャラッ!


「んんっ!?」


 俺とギンカが腕力にものをいわせて拘束を引きちぎると、ミキは驚きに目を丸くしていた。

 この拘束、当然ながら魔力が多い者や肉体の魔力を操作して肉体を直接強化出来る者には役に立たない様だ。


「いや、ちょっと待って……ユーリさんは何をしたの?」


「腕力にものをいわせて引きちぎった」


「百歩譲ってユーリさんは分かる。でも、ギンカさんは?」


「腕力にものをいわせて引きちぎりましたが?」


「さっきは動けないって言ってませんでしたか!?」


「ミキ〜、行くよ〜。まだ、抜けられないの?」


「私も昔よりは強くなったけど、普通の人たちには無理だからね! 妖精の箱庭(フェアリーガーデン)の基準で語らないでよ!! だから、解いて下さい」


 うちの赤ちゃんの一部も出来るから、ミキもてっきり出来ると思ってたよ。

 という事は、拘束したらミキを好き放題弄れる訳か。


「ユーリさん……声に出てる」


「マジか。なら、遠慮なく言おう。ミキでSMっぽい事したい」


「帰ってからにして下さい!!」


「了解〜♪」


 ミキが否定したら止めるつもりだったけど、一応オーケーらしい。

 俺はあとでミキの手錠を復活させれる様にフラガラッハで丁寧に壊すのだった。


「それでどうやって抜け……」


「「ストップ!!」」


「何故です?」


 俺とミキが脱出法を話し始めた所、壁を殴ろうとしてるギンカに気付き、肩を掴んで止めさせた。

 ギンカは何故自分が止められたか分かっていない様だ。


「ギンカ。一応聞くけど何をしてるのかな?」


「脱出する為の大穴を開けようかと?」


「「バレるわ!!」」


 俺が甘やかすのがイケないのかな?

 ギンカは何でも力で解決しようとする節がある。

 流石に今回はそれをしたら不味い事くらい分かってほしかった。


「逃げるなら時間稼ぐ方法を選ぶものなの。騒ぎを大きくすると後々面倒でしょ?」


「たっ、確かに……」


「なので、今回は式札と自身の血を使って偽物を作ります」


 俺はアイテムボックスから人型の紙を取り出して渡した。

 陰陽道の式神みたいな物で血を付ける事で偽物を作る事が出来る。更に、血を触媒にしているので感覚を共有して情報収集も出来る優れものだ。


「それじゃあ、偽物も出来た事だし。カルナの元へと向かおう」


 俺たちは転移で騎士団の詰め所を出るとカルナの元へと向かうのだった。





 その頃、隣の牢屋では盗み聞きしていた者がいた。


「彼らが動いたと仲間に連絡せねば」


 彼は自分で牢屋を開けると何食わぬ顔で騎士団の詰め所をあとにするのだった。

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