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クエスト前の親睦会

 依頼書を選んでクエストを受注した。受付嬢に見送られながら冒険者ギルドを出た。次にする事は。


「親睦を深めましょう。近くに美味しい甘味処があるです♪」


「「「直ぐに行こう!」」」


「即決かい!」


「ユーリ。コレも大事な事だよ? 仲間の能力が分からないと連携が取れないでしょ?」


「それにコレはユーリさんに取っても得の筈です」


「ユーリが食べる。レパートリーが増える。皆のオヤツが潤う」


「なるほど。ユーリさんは食べる派ではなく作る派だったんですね。ご安心下さい。見た目も凄く良いんですよ」


 女の子=甘味というだけあって四人の勢いは凄まじく、気付けば店に連れて来られていた。


「6人です。席は空いてますか?」


「すみません。6人ともなると……」


 メルは甘味処と言っていたが、実際は甘味を置いてる普通の店だった。今は昼近くという事も有って、店内は人で賑わい席は何処も埋まっていた。


「一応、奥にある4人席でしたら5人までは可能なのですが……」


 店員の言う通り奥には四人席がある。3人は座れるだろう連なった壁椅子と普通の椅子が2つ置かれたテーブルだ。


「片方が壁椅子じゃん。詰めれば問題ないよ」


「お二人はそれでも良いですか?」


「うん。構わないよ」


「俺も問題ないよ。でも、4人で座るんでしょ? キツすぎない?」


「大丈夫。大丈夫。私には特等席が有るから」


 そう言ったアイリスは俺の手を引き、いの一番に席へと向かった。

 そして、俺に膝を開いて先に座る様に指示した。


「えいっ」


「あっ、なるほど」


 アイリスは俺の膝の間に滑り込む様に座ってきた。


「コレなら余裕でしょ? アスカは小さいし」


「それをするならもっと良いのがある。アイネはユーリの反対の膝に座って?」


「うん?」


 アイリスがシズに言われた通りに右膝へ位置をズラすと、シズは俺の右膝へと座り込んだ。


「アイネは今の体型を忘れてる。コレなら範囲も1人と半分。私たちはユーリに甘えられるし、ユーリも両手に花でハッピー♪」


「たっ、確かに! ユーリも和んでる!?」


 当然だ! 幼い娘たちが膝に座って甘える様にスリスリして来るんだからな!!

 だから、愛おしくなって抱き締めるまでが一連の流れだと察して欲しい。


「アイネは分かりますけど、アスカはズルい!!」


 これに抗議するリリス。しかし、シズにはこうなる事は見えていた様でアッサリと反撃する。


「小ささの特権だよ。大っきなスイカが悪い。こういうのは見越しておかないとね」


「クッ!でも、ズルいものはズルい!」


 リリスはなかなか諦めきれない様だ。


「……こうなったらクエスト前に母さんから渡された『チイサクナ〜ル』を飲むしか?」


「そこまでする!?」


 チイサクナ〜ルとは、リリィが開発した飲むと幼くなる薬の正式な名前だ。色々あってこの名前に落ち着いた。

 ちなみに以前は『ロリコニア』という国名みたいな名前だった。

 主に女性にしか使わないからだったんだけど……世の中にはショタを望む人もいるんだよね。その結果、いまの名前になったのである。


「うふふっ、皆さんは女性同士なのに仲が良いのですね」


「俺としては目のやり場と反応に困るので、ほどほどにお願いしたいかな?」


「ほら、メルさんたちに迷惑かけてるよ」


 という訳だからリリスはポーションは仕舞おうね。


 俺はリリスからポーションを取り上げてアイテムボックスへと収納した。


「スイカ。夜になったら邪魔しないから好きなだけ甘えると良い。アイネもそれで良い?」


「他の皆とは合流しないし、ユーリが良いなら独り占めして良いよ」


「えっ、本当ですか!」


 リリスはとても嬉しいのか、耳がピコピコと揺れていた。

 そんな彼女を見ていたらダメだと言える筈もなく、俺も良いよと言うのだった。


「さて、注文しようか。店員さん、とりあえずここからここまでお願いします。2人も好きなのを頼んで良いよ」


 俺は近くにいた店員を呼び止めてメニューに有った料理を片っ端から注文した。


「えっ? そんなに頼んで大丈夫なんですか!?」


「食べ切れるのか!? というか、金は大丈夫なんですか!?」


「大丈夫大丈夫。うちには底無しの娘がいるからね。それにお金には余裕が有るから好きなのを頼んじゃってよ。俺たちの奢りだよ」


「そういえば、アイネさんはナベリウス家の……」


「そうだった。なら、普段は頼まない……」


 2人は遠慮しながらも注文し、テーブルには大量の食事が運ばれてきた。


「うん、コレ最高!ほら、あ〜ん。ねっ、凄く美味しいでしょ? ユーリ、今度作って!!」


 アイリスとシズを抱き締めている俺は両手が塞がっているので、2人に食べさせて貰う事ととなった。


「もぐもぐ……美味っ!直ぐに覚えるよ」


「このスイーツも甘くて美味しい!コレもコレも」


「ユーリさん、こっちのもお願いします。アイネさんも食べてみて下さい。美味しいですよ」


 運ばれてきた料理はどれも初めて見る食べ物で美味しかった。

 皆にも食べさせたいなと思った俺はズルをする。職業スキル"料理人"を使って料理を解析。コレにより店の丸秘レシピは全て俺の中へと吸収されていくのだった。


「よし、全て記憶終了。帰ったら皆にも食べさせたいから手伝ってくれよ。いつもの混ぜ混ぜ期待してるね」


「喜んで♪」


「私もお手伝いします」


「私も頑張る」


 帰ってからの楽しみが出来たなと思いながら俺たちは食事を楽しんだ。


 親睦会? 連携? なんだっけ?


 結局、食事を終えて店を出るまでその事を俺たちは忘れていたのであった。


「ゴメン。ちょっとトイレ……」


 リリスたちに退いて貰い、俺はトイレへと向かった。

 一応言っておくが女性トイレではない!アレはギンカに引きずり込まれたからだ!!

 俺は周囲や内部を警戒して男子トイレへと入った。それから素早く用を済ませて外に出た。


「セーフ……」


 俺はバレなかった事に安心しながら席へと向かい歩き出した。

 すると近くのテーブルに座っていたフードの人物が立ち上がり、こちらへと向かって歩いてくる。


「久しぶりだね。ユーリ君」


「えっ?」


 今、この人はなんて言った? 俺の事を"君"付けで呼ばなかったか? それに"久しぶり"だって?


 俺はスレ違い様に掛けられた言葉に困惑した。

 何故なら掛けられた言葉は俺を知る人物でないと有り得ないものだったからだ。

 俺は声の主である人物の顔を確かめようと思ったら、次の言葉に再び驚かされる事となった。


「そのまま聞いて欲しい。エドワード殿から伝言だ。カルナ殿に「無事だ」と伝えてくれ」


「っ!?」


「そして、コレは俺からだ。カルナ殿を守れ。直接手を出す者がいたら、それは全て君たちの本当の敵だ」


「あっ、貴方は一体……?」


「……私が誰か忘れてる様だね。まぁ、私は敗者だから仕方ない。でも、今のクエストが終われば会うから分かるさ。期待してるよ」


「………」


 そう言うとフードの人物は店を後にした。

 追跡をする事を考えたが、あそこまで堂々と現れただけに対策も万全なのだろう。案の定、店を出た瞬間から見失ってしまった。

 しかし、希望はある。彼曰く、クエストを達成すれば会えるらしい。


「今回の件、なかなか複雑な様で……」


 カルナたちには悪いが少し面白くなってきた。

 俺は念話でギンカにエドワードの事を伝え、テーブルに戻ると皆をクエストに急かすのだった。

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