ボードゲームの日
ボードゲーム『モンスターエンパイア』を紹介したくて書きました。
前回までのお話。商談から帰ってきたカリスのお陰も有って、アイリスたちのゴタゴタは無事に終息することが出来たのだった。
「さて、これが今回買ってきたボードゲーム『ハンターズクエスト』です」
「参加人数は、3〜8人。この人数でやれるなんて珍しいな」
ボードゲームは2〜4人の物が多く、たまに5〜6人の物が有るくらいだ。俺自身8人で出来る物なんて始めて見た。
「やっぱり大勢でやった方が色々と面白いですからね」
「よし、それじゃあ早速やろうか。参加する人〜!」
『は〜い!!』
俺たちが声を掛けると暇を持て余していたいたアイリスとマリー、遊びに来ていたエリー、彼女と一緒にいたイブ、人魚族のアウラと彼女から海流の情報を聞いていたセルキーのリナの6人が参加する事になった。
「それでは説明しますね」
ルールは簡単。財宝の宝石を各6種類全て揃えた者が勝者となる。
「皆さんは冒険者となり、時には依頼者となってモンスターと戦い、彼らが蓄えた財宝を集めて貰います。財宝の取り分を多くするためには、なるべく少ない人数で効率よくモンスターを倒していく必要があります」
ボード上には様々な強さのモンスターが配置され、それぞれの財宝を守っている。
手番のプレイヤーは依頼者となって冒険者たちを集めてそのモンスターを倒したい訳だが、なるべく取り分を多くする為に駆け引きが生まれる様だ。
「たくさんの冒険者でモンスターに挑めば簡単に倒せるでしょう。しかし、それだと依頼者が分配した時に自身の取り分が少なくなります。とはいえ、あまりに少人数では勝つことすらできません」
「なるほど。そこで依頼者の意図を読み解くのか」
どのモンスターを倒そうとしているかは、手番プレイヤーが出す情報によって判断する。
手番プレイヤーは、そのモンスターに対して3つまで情報を出す。
情報には嘘を混ぜても構わないが、その内の1つだけには真実を混ぜる事となっていた。
「例えば、このスケルトンウォーリアですと『そのモンスターには翼があります』『武器を持っています』『4足歩行をしています』と言った感じですね」
この場合は『武器を持っています』だけが真実だ。
依頼者の情報からコレを見抜いてモンスターのいる正しい目的地へと向かった者だけ戦う資格を得る事が出来る。
「ただし、モンスターとの戦闘は集まった冒険者+依頼者で行います。なので、隠し財宝より人数が多い場合は正しく分配出来ないので失敗となります」
参加人数は少なくても多くてもダメ。皆の駆け引きが重要となるので面白そうだ。
「カリスさん。戦闘にはこの6面ダイスを振るの?」
「はい。各プレイヤーは一度だけ振る事が出来、出た目がダメージとしてモンスターに与えられます。
ダイスの配置は基本的な天一地六東五西二南三北四ですが、六が星となってますよね?
それが出るとクリティカルという事でモンスターに12点も与えられますよ」
各モンスターには財宝数だけでなく体力も振られている。
使う6面ダイスは通常の配置と同じ様に表と裏の面を足すと7になる"1と6"、"2と5"、"3と4"の配置になっているが"6"が"☆"となっていた。
そして、財宝には武器もあるらしく所持していればその分常時加点されるとの事だった。
「倒せなかった場合は、財宝を1つランダムでその場に落とす事で助かります」
ゲームなだけあって、現実とは違い財宝を落とす事で命は助かるようだった。
「ルールは以上になります。あとは実戦あるのみ。実際にやって把握してみましょう」
その後、カリスさんを始めとして時計回りにゲームは始まった。
最初の周は練習と言った感じで簡単な情報に大量の財宝を持ったモンスターと討伐という感じで進むのだった。
そして、2周目より戦いは始まった。最初に動いたのはイブだった。
「そっ、それでは行きますね。そのモンスターは『生ける者です』、『牙が有ります』『死せる者です』。それでは移動して下さい!」
『とうとうきたか!』
イブの挙げた情報は矛盾している。つまりは、確実にどちらが嘘という事だ。そろそろだと思っていたが、それがとうとうやって来た。
「う〜ん、難しいな〜。今は盤上にアンデットも多いし……」
それが皆の頭を悩ませていた。
盤上に生ける者として牙のある虎型の魔物サーベルタイガー、ケンタウロスに似た四手の魔物ケンタウヘルスが、死せる者にはスケルトン、ゴースト、ヴァンパイアがいたのだ。
「一人勝ち狙いならスケルトン?」
「でも、イブお姉ちゃんは武器も持ってるからゴーストも狩れるよ?」
彼女は運が良い事に武器を持っている。それにより常時ダメージを3点加点出来る様だ。
ゴーストの体力は"5点"有り得ない話でもない。
「それだと牙の情報はどうなるのかな?」
『う〜ん?』
イブの情報を皆で相談する振りをして、他の人に嘘情報を信じ込ませるなんてのも駆け引きの1つで盛り上がった。
「3……2……1……それまで!それでは今回の目的地を発表します」
イブが目的地の書かれたカードを公開する。
『ヴァンパイアか!』
どうやら情報の内の2つは真実だった様だ。
その結果、一人勝ちの妨害や嘘情報などで皆がいい感じにバラけてしまった。
「私が思った以上に集まりましたね。財宝数は……ちょうどか」
目的地に辿り着いたのはアイリス、マリー、アウラ、リナ。それに依頼者のイブも合わせて行われる。財宝数を確認したイブはとても残念そうにしていた。
ちなみに他はというと俺とエリーはゴーストの場所へ行ってしまい共に失敗、カリスはスケルトンに行って失敗していた。
「こうなったらサクサク進めて次に期待します!ダイスを!」
ダイスロールは依頼者からの時計回りとなる。
「さぁ、クリティカル来て!」
ダイスの目は"1"。武器の加点を加えても"4点"。モンスターの体力は残り"6点"も残ってしまった。
「そっ、そんな〜!」
「安心して!残りの体力は少ないし、私が仇は撃つよ!」
アイリスのダイス"1"。全然撃てませんでしたね。
「私で終わらせます。竜の強さをお見せましょう!」
マリーのダイス"1"。竜の強さとは如何に?
「この手番で倒して存在をアピールしてみせます!もう、空気だとは言わせないわ!」
アウラのダイス"2"。頑張ってもコレなのね。あとで彼女を慰めてあげよう。
でも、体力の残りは2だし。次で終わるだろう。
「残りの体力は2点。ダイスで2以上なら勝てる! 余裕余裕♪」
「リナちゃん。それはフラグっていうんだよ?」
後ろから観戦していたサナのツッコミが入るのだった。
「サナは心配症だな〜。そうそう"1"だけ出る事なんて無いでしょ? もし、失敗したらリリスさんたちの料理を試食するよぉ〜」
おいおい、そんな事を言うなよ。背後でリリスたちが料理を作りに行ってしまったぞ?
「それは完全なフラグだよ!? また、死にかけたいの!?」
「大丈夫。大丈夫だって。ほら……」
リナが投げたダイスの目は……1。
助けを求める様な目で俺を見てくるけど、言い出したのは君なので責任は果たしましょう。
「死なない様にエリクサーの用意はしておくよ」
「嘘だよね!? そんな!? お願いします! どんな事でもするからそれだけは!?」
「……彼女たちが許してくれれば」
「えっ?」
平穏なる小世界で作ったのだろう。既にリナの背後ではリリスたちが料理を片手に待ち構えていた。
「いっ、いや、来ないで!来ないでぇーーっ!!」
さながら、ホラー映画のヒロイン宜しく絶叫するリナだった。
「クエスト失敗ですか。とほほ……」
「リナちゃんがダメになったので、復活するまで私が代役しますね」
リナの代わりにサナを加えて、俺たちは何事も無かった様にゲームを続けるのであった。
ちなみにゲームの勝者はリナとなった。全ては交代したサナのおかげだったのは言うまでもない。
イブ 〜 悪魔族の嫁さん。
エリー 〜 悪魔族の幼女。よく屋敷に遊びに来る。
アウラ 〜 人魚族の嫁さん。声がとても綺麗。