ダイエット大作戦 その弐
走って走って、まだ走り続けるアイリスたち。
「フィーネ。皆はいつまで走り続ける気なんだ?」
「そういえば聞いていませんでした。何かしらの成果を得るまででしょうか?」
フィーネが帰ってきても彼女たちのマラソンは続いている。
俺はフィーネを膝に乗せると背後から抱き締めて、愛し合った余韻に浸りながらそれを見るのだった。
「外に行って帰ってきて……半日くらいか?」
俺たちが外でお楽しみタイムの間、アイリスたちがどうしていたか知らないが、マラソンを始めてから時間にして半日が経過していた。
「さすがにヘロヘロな方が増えたので、そろそろ止めるのではないでしょうか?」
フィーネの言う通りスピードが落ちて歩く者たちが増えてきた。
「よし、終了~~っ!」
『おぉ~っ……』
噂をすればなんとやら。マラソンは終了した様だ。
「さぁ、体重計も用意したよ。早速測ってみようか!」
アイリスが用意した体重計に長蛇の列が作られた。
『よし、痩せた!』
「んな訳あるかい!!」
体重が減って浮かれる嫁さんたちの頭をハリセンで叩いた。
「親指の爪の先を押さえて放してみろ! 3秒以上白いままだったら、脱水を起こしているサインだからな!!」
彼女たちが水分を取っている様子を見ていない。
俺は彼女たちに脱水のセルフチェックをさせた。正常なら直ぐにピンクへ戻る筈だが……。
『………』
はい、アウト。全員脱水状態ですね。
「経口補水液を作ってくるから直ぐに飲むように」
俺は転移で厨房へと行き経口補水液を作ることにした。
作り方は簡単。
500mlの水に塩を2つかみ。それから意外と知られていないコレを入れる。
「シュガー……」
大さじで1~2杯ほど加えるのだ。多くの人が塩だけだと勘違いしている節が有るので忘れがちになる。
「さらに庭で取れたレモンの絞り汁も加えておこう」
レモンを加えることでさっぱりとした口当たりとなる。手作りスポーツドリンクとも言えるだろう。
「はい。お待たせ」
『頂きます』
早速出来たものを皆へと配った。
「うわっ!? コレ美味しい♪」
「甘いのにさっぱりして……太りませんよね?」
「太りません」
飲み過ぎると太ると思うけどね。
俺が断言した事で皆は喜んで経口補水液を飲んでくれた。これなら皆の体調は問題ないだろう。
「正しく痩せるには食事が重要よ!」
アイリスたちの噂を聞き付けて暇を持て余していたセレナが参加してきた。
「まずは糖質……つまりはパンや麺を制限するよ。断ってはダメよ。アレはあれで必要な栄養だから」
「それから米も糖質な。減量には高タンパク低糖質が良いんだっけ?」
「ええ、そうよ。大豆なんかは入手しやすいし、肉好きには鶏むね肉とかがオススメね」
『なるほど〜!』
痩せることは女性の宿命なのだろう。皆鬼気迫る感じでメモを取っていく。
「それじゃあ、ユーリ。後はお願いね」
「うん?」
「私たちの為に最適な……」
『ご飯をお願いします!』
「あっ、そういうこと。了解。当分は俺がメインで作るとするか」
という事で低カロリー料理を作ることになった。
「ユーリのヘルシークッキング!」
「「「「わぁ〜〜っ!」」」」
ノリの良い料理担当の娘達と拍手を受けてダイエット料理の調理を始めた。
「まずは、鶏むね肉を茹でる」
丁度親子丼用にと砂糖、塩、日本酒で下味を付けていた物が有ったのでそれを使う事にした。
「沸騰したら投入してゆっくりと加熱してくれ」
沸騰したら鶏肉を入れて再沸騰。数分茹でたら火を止めて蓋をしたまま25〜30分程放置。予熱で加熱を行う。
「その間にタレを作ろうか。ベースにはコレを使う」
「それは?」
「こっちはポン酢と呼ばれるものだよ。教えるから皆も作ってみようか」
用意したポン酢は自作の物だ。醤油、みりん、酢、それからレモンなどの果汁を混ぜ合わせる事で作る事が出来る。
「長葱を細かく刻み、生姜とニンニクを摩り下ろす」
皆でポン酢作りに勤しむ間に茹で上がった鶏むね肉をスライスして、その上に薬味を盛り付ける。コレにポン酢を掛けると完成だ。
「鶏の出汁はどうします?」
「勿体ないから刻んだキャベツでスープにしよう」
確かキャベツもダイエットに良いと聞いた気がする。
今回は細かく刻んで塩コショウのシンプルな物へと仕上げた。
「それでは召し上がれ」
半日も走り続けてかなりお腹を空かせているアイリスたちの前に料理を並べた。
さてさて、ヘルシーメニューに対する彼女たちの反応や如何に?
『んまぁ〜〜っ♪』
料理の感想は満面笑みで返してくれた。俺も早速鶏むね肉へと手を伸ばした。
「はむはむ……」
ポン酢のさっぱりとした味わいと薬味の辛さが茹でた鶏むね肉にとても良く合っていた。
これは大根おろしでも良かったかもな?
メインとしてで無ければそれでも良かったかもしれない。今度の飲み会にでも出してみようかなと思った。
「ユーリさん。ユーリさん」
「どうしたの、フィーネ?」
隣で食事をしていたフィーネが裾を引っ張って声をかけてきた。
「止めなくて良いんですか?」
「何を?」
「アレをです」
「アレ?」
彼女が向けた視線の先では、美味しそうにお替りを繰り返すアイリスたちの姿があった。
「………そっとしておこう」
食事制限の意味ないやん!?
そう思ったが美味しそうに食べる彼女たちを止めるのはとても気が引けたので放置する事にした。
料理はサラダチキンをスライスした物を想像して下さい。
投稿安定しないですね。
はやくゴールデンウィークにならないかな……?




