閑幕 増えてもする事は変わりません
「妖精の箱庭……凄ぇところだな」
カタスは酒を煽りながらタナトスの映す水鏡を見てそう言った。
「神気の満ちた土地。住人の質も高いな。子供ですら魔力コントロールが出来るって……」
「土地柄、戦闘訓練は必要ですからね。それに良き指導者も多い様ですし」
「エルフ族か? あいつらは昔から魔力の扱いが上手いからな」
「そうね。お陰で住人の殆どが森の魔物を倒せないまでも逃げ切れるくらいには強くなったわ」
「中には冒険者として活躍をしている者も多い様ですよ」
「食料も豊富みたいだな? アレは向こうの世界のだな? スキルで作ったのか?」
「ええっ、そういう力と知識を彼に与えました。丁度メーテルから新しい食料の普及を依頼されていた事も有りましたので」
「なるほどね。だからそんなにもスキルをホイホイと渡せ……てぇええっ!?」
水鏡のある一点を見たカタスは驚愕し固まってしまった。
「なっ、なぁ……今見てて気付いたんだけどよぉ。畑を囲ってる柵って……属性剣か?」
「そうですね。それだけじゃないですけど……」
タナトスが水鏡の映像を分割してフェアリーガーデンの各場所を映し出した。
「農業試験場としている施設の受粉部屋の剣」
「温室の気温調整を行っている剣」
「井戸の中で水を浄化している剣」
「「「全て属性剣です」」」
「……………………はぁ?」
カタスの間抜けな声が響き渡った。
「いやいや待て!? 属性剣だぞ!? 高ランク武器だぞ!? なんて事に使ってんだ!?」
「今に始まった事では無いですよ」
「最初の頃はもっと色々試してたわよ。果物を属性剣で捌いてみたりね」
「氷の属性剣で作るシャーベットとか美味しそうですよね?」
「そうそう。アレとか美味しそうだったのよね。今度宝物庫から持ち出してやってみようかしら?」
「本当ですか? その時は混ぜて下さい!」
「良いわよ。その時は果物を用意してくればね」
「しますします!良いの用意しますよ」
「マジかよ……」
エルメラとエピメテウスの嬉々とした会話を聞いて、カタスはただただ驚くしかなかった。
「ここの事を常識で見ると驚くだけですよ? いつもの光景としてワクワクしながら何をやらかすか見るのをオススメします」
「やらかす事が前提ってどうなのよ?」
「そこはマレビト。毎度の事です」
呆れて手のひらを返すタナトスに"そういえばそうだったな"と思いより一層酒を煽るカタスであった。
「女の子も増えたわねぇ~。どの娘も可愛いわ」
「アルラウネの亜種ですか。珍しいですね」
「………アレもいつもの光景なのか?」
「………いつもの光景ですね」
顔を背けるタナトス。彼が造り出した水鏡には人に見せられない肌色の光景が広がっていた。
「ユーリ君。また精力が増してないかしら?」
「もう絶倫って次元じゃないですよね? 封印指定とかそんなレベルですよね?」
「あぁ~っ、新しい孫が楽しみだわ♪」
「多分数年は無理だと思いますけど………」
「何か言ったかしらエピメテウス?」
「いえ何も。今日もお綺麗ですよ。エルメラ様」
「どの口が言うのよ」
そんな軽口を返すエルメラ。その後も2人は仲良く水鏡を見るのだった。
「アイツら仲いいな。お前も飲めよ」
「ええっ、彼は優秀なので彼女も目をかけてるみたいですから。頂きます」
カタスはタナトスの器へと酒を注ぎ込んだ。
そして、2人はそれを煽ると再び鑑賞会に参加するのだった。




