シシネへの報告
色々した結果、快く10人の男女を引き渡された。俺は彼らを連れて妖精の箱庭へと帰ってきた。
隠し資金? なんの事かね?
ちょっと世間に知られていない。むしろ知られたら不味いお金をリリィが見付けて持ち帰っただけだよ。
「シシネ〜」
「あっ、ユーリさん。どうしました?」
俺は帰ると真っ先にシシネを探しに行き、地下の転移門周辺を掃除していた所に声をかけた。
「はい、コレ」
俺は掃除していた手を止めた彼女にお金の入った袋を手渡した。
それは何を隠そう、例のお金です。
「えっ? コレは何のお金ですか?」
「シルビアを身請けする為のお金だよ」
「シルビアっ!? 彼女が見付かったのですか!?」
「うん。リリィたちが先に見付けて会ってたみたいなんだ。直ぐに言えなかったのは彼女を取り巻く深い事情があったみたいだよ。……お陰で俺も巻き込まれちゃったけど」
でも、今回の事で色々学ぶ事が出来た。次からは嫁さんに違和感を感じたら直ぐに調べる事にしよう。
「という訳で、そのお金を使ってパッと身請けしなよ。居場所はココね。マーキングもしてるから何時でもイケるよ」
「あぁ……ありがとうございます」
シルビアの事を気にかけていたのだろう。シシネは薄っすらと涙を浮かべて微笑んだ。
ガチャ。
そのタイミングでリリィの店とを繋ぐ転移門が開くのが見えた。
「あっ、なんか嫌な予感がする……」
転移門から出て来たのはシシネの姉のシオンだった。
「…………(ニコッ)」
転移門を見ていた俺は直ぐにシオンと目が合った。
彼女は俺へと視線を向けた後、隣にいたシシネへと移して何かを察したらしい。一瞬沈黙した後にとても優しく微笑んできた。
それはそれは妖精族と称されるだけある美しくて慈愛に満ちたものだった。
「…………」
だから、見惚れてしまうのは仕方ない。誰が見ても見惚れるだろう。
そして、見惚れてしまった結果………俺は逃げ遅れた。
「無慈悲な槍雨」
「ほわっ!?」
屋内なのに空から降りしきる大量の弓矢が俺の退路を封鎖した。それら全てはシオンの手によるものだ。
どうやってそれだけ大量の弓矢を射てたのか、室内なのにこんな曲射が出来たのか気になる所だが、ツカツカと歩み寄って来るシオンにそんな事を考える余裕はない。
「歯を食いしばれ……」
「!?」
歩み寄ってきたシオンは顔をめがけて蹴ってきた。逃げ場が殆どないので俺はギリギリでそれを回避する。
「避けるな!罪を償え!!」
「罪って何さ!?」
避けた事でシオンの怒りのボルテージが上がった。
「シシネを泣かせてた事よ!幾ら夫でもやって良い事と悪い事が有るでしょ!!」
「ちょっ、危ねぇ!?」
何度も執拗に放たれるシオンの蹴りはどんどん俺を追い詰めていく。
「それなら夫を蹴るのは有りなのかよ!!」
「嫁の特権よ!!」
「理不尽過ぎる!?」
「煩い!問答無用で蹴られろ!!」
「いや! だから! 誤解だってば! 後、見えてるよ! パンツの隙間から! 白いレース付きが!!」
「っ!?」
言葉が切れ切れになりながらも俺は必死に言い訳をした。
シオンがわざわざ顔を蹴ってくるので、ショートパンツの隙間から白のレース付きパンツが見えていた。
その事を指摘すると彼女は顔を赤らめて下を手で抑えて大人しくなった。
「あの〜っ、姉様? そろそろ宜しいでしょうか……?」
今まで蚊帳の外だったシシネが会話に参加してきた。
「姉様は何か誤解をしている様です。私は泣かされていませんよ?」
「えっ、そうなの? でも、目が少し赤くて涙まで出てるじゃない」
「これは嬉し泣きです。ユーリさんがシルビアの居場所や身請けする為のお金を出して下さったので」
「シルビア……見付かったんだ」
「はい。元気にしてるみたいです」
「そうなのね。良かったわ。それじゃあ」
「待て待て待て!」
シオンは冷静さを取り戻したらしく何時もの口調に戻っていた。
そんな彼女は何事も無かったかの様に立ち去ろうとしたので、俺は肩を押さえて立ち止まらせた。
「何事も無かった事にするつもり!?」
「………ダメか」
シオンは罰が悪そうにしている。
そして、無言で自身のポーチを開きポーションの入った試験管を取り出した。
「状態異常?」
それはシオンが状態異常系を付与するポーションを入れているポーチだった。
何でそんなポーションをと考えていると。
「………(コクッ)」
彼女は無言でそれを飲みほした。それから言い訳をする。
「ごめん。私は酩酊状態だったから……」
「今飲んだからだよね!?」
「何の事か分からない。これは全て酔っての行動……。悪気はない。少し我を忘れただけ。恥ずかしい」
どうやら少しは反省している様だ。
「反省しているなら……うん?」
そこで俺はある事に気付いた。彼女が手にしているポーションにはラベルがしてあったのだ。
そこに書かれていたのは。
「媚薬?」
「えっ?」
俺の言葉を受けて"ギギギッ"と壊れたロボットの様に首を回して試験管を見るシオン。
「はうっ!?」
「シオン!?」
「姉様!?」
シオンは試験管を落とすと突然身体を抱き締め座り込んだ。俺たちは心配して彼女に駆け寄った。
「ハァ……ハァ……」
彼女からは荒く熱っぽい吐息が漏れる。完全に薬が回ってしまった様だ。
「これは……んぐっ!?」
「んちゅ!……ハァハァ!」
「ユーリさん!? 姉様!?」
とうとうシオンは理性を失ったらしい。彼女にキスされて押し倒されしまった。
「各種魔法展開……」
もう慣れた動作で俺は魔法を張っていく。
「ゆっ、ユーリさん!?」
「大丈夫。彼女が落ち着くまでやるだけだから」
「わっ、私も手伝います!」
「えっ、マジで?」
「何時もの逆にされるので、この機会に姉様へ奉仕したいんです!」
それは止めた方がと思ったが、3人でニャンニャンして楽しんだのは言うまでもない。
ちなみに行為後のシオンはいうと。
「〜〜〜っ!?」
顔を真っ赤にして恥ずかしさから転げまわり、部屋に帰ってから数日出て来なくなるのだった。
 




