正直言おう。いつかはヤると思ってた!
俺は鏡に映った姿を見て盛大な溜め息をつた。
「アイツ。とうとうヤりやがったな……」
そこに映し出されていたのは紛れも無いリリンの姿だ。
しかし、それは彼女ではない。今の俺の姿なのだ。
彼女の事だからいつかこんな事を起すのではないかという予感にも似た確信が今回現実のものとなってしまった様だ。
そもそも話は少し前に遡る。
「ユーリ・お・にぃ・ちゃん♪」
「……リリンにそう呼ばれると悪寒が走るのは何でだろう?」
近々行われるダンジョン調査の為の準備をしていた所へ、リリンは突然やって来た。
俺は彼女を見るなり後退り身構えた。
「何故に攻撃体勢? これでも奥さんの一人だよ?」
「だったら、お嬢さん。自分の胸に手を当てて良く考えて下さい。悪戯好きな子が満面の笑顔で近付いてきたら警戒するのが普通だと思いますが?」
「え~っ、それは仕方ないよ。押すな押すなと言われれば押したくなるでしょ?」
「自重しろや。そのせいで周りに被害が出てるだろ?」
「でも、大丈夫。本当にヤバいのはユーリと私にしか被害が出てないから♪」
どうやら自身が巻き込まれるのは覚悟の上らしい。
「というか、俺ならいいんかい!」
「ユーリは人並み外れて丈夫だから問題なし。まぁ、前回みたいに理性が消えたら困るけど……」
恐らくこの前飲まされた増強剤の件だろう。
薬で色々強化されたせいで俺は理性を失いリリンを襲った。
「その点に関しては後悔なし。さすが俺だな! 意識はなくてもお仕置きするなんて良くやったよ」
ちなみにその件では部屋を汚し過ぎた為にミズキからお説教されたので少し反省している。
「全く……お陰で思い出す度に身体が疼くじゃない。責任は取ってよね?」
そう言って服のボタンを外しながら近寄るリリン。その表情は高揚しており、話が事実である事を告げていた。
「後じゃダメ?」
「今が良いの。お願い」
「分かった。……なに?」
俺はリリンへとキスしようとしたら彼女の手で止められた。
「今思い出しただけど……良いものが有るの」
リリンが懐から取り出した物を見て、俺は嫌そうな顔になった。
何故ならそれはキャンディーの様な物で妙にカラフルなラッピングが施されていたからだ。
「別に変な物じゃないよ?」
袋には二つの飴玉らしいものが包まれていた。
リリンはそれを一つ掴むと己の口へと放り込んだ。
「ゴックン……ほらね。大丈夫でしょ?」
俺の前でしっかりと嚥下したリリン。証拠とばかりにピンクの綺麗な口内を見せてきた。
「舌にもないね。……症状も起きてないから普通の飴玉?」
「そんなもんだよ。ユーリがマリーさんと飴玉を使ったキスをした話を思い出してね。私もしたくなったの。だから、私からあげるね。……んちゅ」
最後の一つを口に入れると彼女は熱いキスをしてきた。
飴玉の甘さと合わさって蕩けそうになる。
「んちゅ……ある程度小さくなったし。飲み込んで続きをしよう?」
「そうだね」
誘惑に駈られた俺はリリンの言うまま飴玉を飲み込んだ。
「さて、続きは…………っ!?」
リリンを抱えて歩き出そうとした俺を強烈な睡魔が襲ってきた。
俺は慌ててリリンを降ろすと彼女の方は既に眠りへと落ちていた。
「どういうこと……?」
彼女までもが眠りについている事に疑問を抱きつつ俺も睡魔に負けて意識を失った。
そして、目が覚めるとリリンは居らず、俺は彼女の姿になっていたという訳だ。
「とりあえず、現状確認するか……」
俺は勝手知ったるリリンの身体を動かしてみた。
「小さっ……」
目線は低くて手足も小さい。それでいて女性のシンボルはそこそこある。
「うん……?」
突然身体がブルッとなった。
そして、妙な衝動が襲ってきた。例えるならそう尿意を模様した時の様な……。
「尿意……」
意識した事で一気に衝動が押し寄せてきた。
「ヤバい。ヤバい。ヤバい!」
初めての経験な事もあって何処に力を入れれば良いか分からず我慢が出来ない。今は表面張力か何かでギリギリ保たれているが、いつまで持つかも定かでなかった。
「リリンが帰って…………普通に行けば良くない?」
彼女の身体だからと待つ事を考えたが、彼女が行っても結果が変わらない事に気付いた。それなら俺が行っても問題ないだろう。
ただ彼女にとっては他人に見せたくない程の恥ずかしい案件な気がする。
「でも、入れ替ってるんだし……仕方ないよね?」
これでも一応リリンの旦那。奥さんの恥ずかしい所を見て何が悪いのだろうか? いや、悪くないね!!
「~~~♪」
ということで、俺は鼻唄を歌いながらトイレへと転移した。
この状況で転移が使えた事に驚いたが、トイレで好奇心から弄った彼女の弱点に意識は集中した。
そのせいでトイレから帰って来るのにかなりの時間を要したのは言うまでもない。
「さてと行動しますか」
まずは、皆への周知と身体の居場所確認だな。
「(アイリス……)」
俺は念話で個別に語りかける事にした。
「(うん? ユーリ? どうしたの? 町に出掛けたんだよね? 何か忘れ物したの?)」
「初っぱなから嫌な予感がしてきた……」
どうやら俺の身体でリリンは町に出掛けたらしい。
「(アイリス! 聞いてくれ!俺の身体がリリンに奪われた!!何か知ってたら教えてくれ?)」
「(ああ、やっぱり? なんかいつものユーリらしくなかったんだよね? 道端でキスしまくるし、歩き方が妙に内股だったしね)」
「それは知りたくなかったよ!!)」
男の内股とか嫌過ぎだろ!それが俺自身なら尚更だ!!
「(リリンならリリィさんと町に繰り出したよ。行き先は知らないけど)」
「(リリィ……)」
先程からずっと考えていた。この件はどう考えてもリリィが一枚噛んでいるとしか思えないのだ。
何故ならリリンだけではこれ程の効果を発する薬剤を作ることは出来ないからだ。
「(Ok。情報ありがとう。俺はギンカたちを呼んでリリンを追いかけるから周知よろ)」
「(は~い、気を付けてね。ある程度周知したら私も手伝ってあげるからそれまで頑張って!)」
アイリスの応援も有ってヤル気が出てきたので、早速助っ人たちを呼ぶのだった。