竜種とセルキー
流氷から救助したリナとサナは妖精の箱庭に連れ帰る事にした。
放浪の民な事もあって部族を見付けるのに苦労しそうだ。
居場所が見付かるまでは客……は遠慮されたので料理の手伝いをして貰うことにした。
「切り方にも色々あって……」
「「なるほど!メモメモ……」」
ついでに陸での食事にも興味を持ったので、この機会に学びたいそうだ。今もラズリから教わった事を熱心にメモしていた。
「……ミルクがそろそろ切れそうですね。ユーリさん、搾乳をお願いしても?」
「良いよ」
「あっ、ミルク取ってくるんだよね? 私もやってみたい!」
「そう乳搾りなんてそうそう体験出来るものでもないので、これを機会に私からもお願いします」
「良いよ。2人ともついてきて」
「「やったー!」」
俺が同行を許可すると元気にハイタッチする2人。そんな彼女たちにも最初に来たときには一悶着あった。
リナとサナを連れ帰って直ぐに皆に紹介した。
「ーーという事で、この人たちを置いて良い?」
『良いですよ』
皆はいつもの事かと慣れた様子で彼女たちが暮す事を同意してくれた。
しかし、そんな中一人だけ否定したのだ。
「ダメです」
それはマリーだった。彼女は手を交差してまで否定を主張していた。
「なんで?」
「彼女たちがセルキーだからです」
『はい?』
俺たちは顔を見合わせてマリーへと聞いてみた。
「竜王国では以前にセルキーが起こした問題が原因で入国に制限がかけれています」
「そうなのか? 一体何があったんだ?」
「セルキーの男性が貴族の令嬢を何人も孕ませる事件が起こりました。それにより男性の取り合いが勃発。最終的にはセルキーの男性が素知らぬ顔で逃げた為、令嬢により殺され令嬢たちも自ら命を絶ちました」
サナに話は聞いていたが、それが現実で起これば入国制限されるのも仕方ない気がした。
「まぁ、それだけなら問題無かったんですけど孕んだ令嬢たちが問題だったんですよね……」
「令嬢が?」
「はい。令嬢の大半が竜種だったんです」
『えっ?』
それを聞いて俺たちはビックリした。
何故なら竜種を複数人孕ませたからだ。そもそも異種間同士での性交において子供はデキ難い。それが竜種ともなれば尚更難しいのは有名だった。
「竜種の令嬢たちは子供が出来難いのを知っていたので、イケメンと好きなだけ出来るとあまり避妊もせずにヤりまくり……。その上、イケメンという単語に誘惑されて皆でしたという訳です」
その結果、複数人が孕んで男性の取り合いになった訳か。
「しかも肝心のセルキーが逃亡。独占欲の強い竜種ですから殺してでも自分のモノにすると大暴れして街への被害も出ました。
なのに挙げ句の果てが自害です。国は二度とこんな事が起こらない様に規制する事にしました」
「なるほどねぇ……」
個人間ならまだしも街にまで被害が出れば当然の判断だろう。
「でも、2人は女の子だよ?」
「見てよ!嘘偽りなく女の子だよ!おっぱいだってちゃんと有るし!!」
リナはご自慢の胸を持ち上げてアピールした。
それに対しては羨望の眼差しが突き刺さり、隣のサナは「絞れば縮むかな?」と言っていた。
「私も正真正銘の女の子です。付いてません……」
胸でアピール出来ないと理解しているサナは顔を赤らめながらマリーに向かって裾を捲り証拠を見せた。
「確かに女性ですが、無理なものは無理です。法でも決まっていますから……」
「「そんなぁ〜」」
マリーの告げた言葉に2人はショックを受けて、これからどうしようと悩みだした。
そんな悲壮感漂う2人を見て申し訳無いのか、マリーは少しだけ譲歩した。
「数日の滞在なら認めます。その間に身の振り方を考えて下さい」
といった事が有ったので、そこからはマリー懐柔作戦を皆で行った。
まずは、セルキーの可愛さ作戦。
アザラシの状態でマリーに擦りより可愛さをアピールするのだ。
「可愛いですけど騙されませんよ。それより子供たちの方が可愛いです」
マリーは子供たちを連れて来るとリナとサナに放った。
「おっ、重いよぉ〜っ!?」
「あっ、引っ張らないで!噛まないでっ?!」
子供たちは初めて見る生き物に興味津々らしく、飛んだり跳ねたり引っ張ったり噛んだりして2人を蹂躙した。
第2の作戦。家事手伝い。
マリーの身の回りの世話をして貰う事になった。
「今はエルフ族や悪魔族のメイドさんが居るので間に合ってます」
何をする間もなくアッサリと拒否られた。
昔と違ってうちには住人が多いので全ての事に手が届いていた。
第3の作戦。……脱げば良くない?
「そもそもセルキーだと分からなければ良いんじゃないの?」
「どういうこと?」
俺は言い出したアイリスに尋ねてみた。
「アザラシの皮を着ているからセルキーな訳でしょ? 部屋着にしてそれ以外の時は服を着たら良いんじゃないかな?」
「そっか。見た目は人間な訳だしね。絶対にアザラシじゃないといけない決まりは有るの?」
「いや、無いよ。たまに行商人から服を買って着るもん」
「ただ、全身を包む様な服でないと落ち着かないかな?」
「それなら私に任せて!色々持って来たよ!!」
何処から話を聞いていたのか、エロースが服を持って現れた。
「へぇ〜っ、どんな服?」
「見せて下さい」
「さぁさぁ、見て。コレらなら身体にピッタリと密着するし良いと思うんだよね!」
そう言ってエロースが広げた服は……。
「スク水。全身タイツ。童貞を殺すセーター……」
「アウトォーッ!自重せいや?!」
「え〜っ……」
不満げな声をあげるエロース。彼女が用意したものはどれも確かに肌へ密着するが色々と問題が起こるのは目に見えていた。
「大体、全身タイツって一番おかしいだろ!? 何考えてるの?! というか、今まで無かったよね? 何処から入手した?」
「ふっふっふ、特注品。アラクネの職人さんに依頼してアラクネ糸と普通糸を合わせて作って貰ったわ。だから、強度を保ったまま任意の箇所だけを破く事も可能よ」
「えっ、エロース!君は!!」
なんて蠱惑的な物を生み出したんだ!
そんな物で迫られた日には理性を失うかもしれないんだぞ!?
「これは試作品だからお金を出せば量産も可能よ?」
耳元で囁くエロースの悪魔の声に俺は白金貨を出してそっと彼女に握らせるのだった。
「あっ、スク水良さそう。皮の内側みたい」
「でも、もっとゆったりした物でも良いな。全身が包まれるなら」
彼女たちの目線が全身タイツに向けられたのでさっと収納した。
その代わりに収納していた着ぐるみパジャマを取り出した。
「こっちなら良いだろ?」
「「あっ、それっ!!」」
2人はこれの存在を知っていたらしい。置くと直ぐに手に取った。
「「これにする!」」
早速着替えてマリーへと対峙する事にした。
「アザラシの皮は?」
マリーは彼女たちがアザラシの皮を脱いでいる事に驚いている様だ。
「コレが有るから脱いだよ」
「コレもアザラシの皮みたいで相性が良いみたいなんです」
「………」
「マリー。彼女たちには部屋でしか着ない様にさせるし、ダメかな?」
「……そこまでして彼女たちを置きたいのですね。分かりました。認めます」
「「ヤッター!」」
「でも、約束事を破ったり国から追及されたら追い出しますので、そのつもりでいて下さい」
「「りょっ、了解です」」
マリーの態度に本気さが伝わり彼女たちは緊張した。
「それでは今後とも宜しくお願いしますね」
しかし、その後に見せた可愛らしい笑顔に緊張が解けるのだった。
こうして、リナとサナは受け入れられたのだった。
「ユーリさん」
「なに、マリー?」
皆が解散する中、俺だけがマリーに呼び止められた。
「ユーリさんには文句と埋め合わせが有るので残って下さいね?」
「oh……」
その後、マリーと色々あるのだがそれはまた別のお話。




