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リナ

 それの光景は私たちに絶望を刻み込んだ。


「「………」」


 周囲一面に広がる海と既に見えぬ我らが大地。ここが海の真上だという事を示していた。

 そして、氷の裂け目に目を向けた私たちはただただ呆然とする他無かった。


「あれ〜っ、おかしいぞぉ〜っ? あははっ、繋がっていた氷の大地が無いや。私たちはまだ夢を見てるみたいだね、サナ?」


 この現実を認めたくないのか、リナは顔を真っ青にしながら苦笑いを浮かべていた。


「分かった。目を覚まさせてあげる」


「どうやって?」


「サンダー」


「うおっい!?」


 リナに向けられて放たれる雷魔法。彼女はそれをなんとかスレスレで回避した。


「何するのさ!」


「目覚めってね。脳からの信号で起きるの。だから、信号が速く伝わる様に雷を放って上げたよ」


 悪びれる様子もなく淡々と話すサナにリナは恐怖を覚えた。


「よし、サナが怒っているのは良く分かった! でも、最愛の姉にぶつけるのはおかしくないかな?」


「姉は……1時間前に死にました」


「生きてるよ!ここに居るよ!!」


「まぁ、それは置いといて雷に当たれば本当に何か閃くんじゃないかな? ほら、ここはリナちゃんお得意の無謀タイムという事で1回どう?」


 そんな駆け付け一杯みたいなノリで受けたくないと思うリナだった。


「そもそもお得意の無謀タイムって何さ!? それと本当に準備するの止めて!?」


 雷魔法で放電しているサナの手を見て、リナは本気だと悟り彼女へすがり付いた。


「分かった! 分かったよ、サナ! 私が悪かったから現実的な話をしようね! ねっ!!」


「むむっ……リナちゃんにしてはまともな事を言いますね。今は争っている場合では有りませんでした」


「良かった……サナが正気を取り戻したよぉ……」


「………」


 サナが指先をリナに近付けると"パチッ!"っという静電気の様な小さな放電が起きた。


「ぴぃ!?」


 突然の事にビックリして硬直するリナを見たサナはスッキリした顔になった。


「放電を途中で止めたから少し帯電してたみたいだね。意図せずにお仕置きが出来てスッキリしたよ」


「本当にワザとじゃないんだよね!?」


「ワザとじゃないよぉ〜。それよりリナちゃんが言った様にこれからの事を話そうか? まずは私たちの位置を知らないとね?」


「……なんか無理やり流そうとしているにしか見えないよ」


 色々妹に対して思う事は有るが、リナは話を切り替える事にした。


「とりあえず、2人で氷の外周を回って目印か陸地の一部が見えないか捜索しない?」


「それが良いかも。単独で行動すると氷が割れた時にバラバラになるかもしれないし」


「陸地が見えるのなら時間がかかっても泳げば帰れるから目を凝らして探そう」


 運が良い事に私たちはアザラシの皮を着ているので寒さは全く感じず、泳ぎも長距離を移動する事が出来る様になっている。




 それから数分後。


「やっぱり、目印になる船も陸地も何も見えなかったね」


「うん。でも、その代わりにこの氷が思いの外厚くて広い事も分かったね。これだとそう簡単に溶けないから海に放り出される心配もしなくて済みそうだよ」


 歩いたり潜ったりしてみた結果、この氷の大地が一つの島と言って良い程に大きい事が分かった。


「さて、そうなるといつ助かるか分からないので食料の問題が発生するね」


「まずは、定番の水かな?」


「うん。私も丁度喉が乾いてきたよ。海水飲んでいい?」


「アホか。余計に喉が乾くでしょ!」


「ハッ! そうだった! なら、どうしようか?」


「いやいや、魔法が有るでしょ? リナちゃんお得意の水魔法が……」


「そうだった。え〜っと……アクアボール!」


 リナが魔法を使うと大気中の水分が集まり、彼女の前には水の球体が生まれた。


「よし、イケるかな? ゴクゴク……」


 リナは球体に顔を付けると飲み始めた。


「ぷはっ! 飲めるよ! 全く味のしない水だよ!」


「そりゃあ、水だもの。本来は味がないでしょ」


「そして、飲んだ事で尿意が……」


「知るかい!そこの影でしてくれば良いでしょ!!」


 尿意を我慢しているのかモジモジとしているリナに、恥ずかしくなったサナは顔を真っ赤にするのだった。


「ふう〜っ、スッキリ♪ なんか開放感があって何かに目覚めそうだったよ」


「お願いだから露出狂とかにはならないでね」


 帰ってきたリナは妙に高揚しており、それを見たサナは本気で心配になるのだった。


「水の問題は解決。寝床はアザラシの皮が寝袋代わりになるから良いとして……次は?」


「う〜ん……ご飯? 魚でも獲る?」


「あははっ、サナは捕れると思う?」


「無理ね♪」


 2人は潜った時の事を思い出した。

 流氷の下には海洋性の魔物が住んでいたりして、武器を持たぬ以上は食料確保の為とはいえ危険だから近寄るべきでは無いという意見で一致した。


「あっ、そうだった! 食料ならここに有るじゃない!!」


 リナは何かに閃いたらしく自分に手を向けてアピールする。それ対してサナは呆れた様な冷たい視線を向けた。


「何言ってんだ、このバカ姉は?(リナちゃんの優しさは分かるけど姉を食べる気にはなれないよ)」


「サナ!? 本音と建前が逆転してるよ!?」


「あれ? つい本音がポロリと……ごめんごめん。それでどういう事?」


「私気付いちゃったんだ! 自分のアザラシの皮を見て!」


「アザラシの皮?」


 サナは自身を包むアザラシの皮へと目を向けた。


「皮には厚みが有って内部は乾燥しているけど肉が付いてるでしょ? だから、これを食べれば耐え凌げるんじゃないかな?」


「たっ、確かに……」


 その後、2人はアザラシの皮の身を一部剥ぎ取り実食することした。


「モグモグ……これは……」


「モグモグ……意外にイケる……」


 食べた感想は不味くはないが美味くもない。

 アザラシの皮を加工した際の影響なのか、少し塩分も含んでおり一種のカルパスの様な物に感じた。


「塩っ気も有って一時なら食料に困らなさそうだね!」


「リナちゃん……うんうん。お姉ちゃんがそう思いたいなら私は何も言わないよ」


「唐突にサナからお姉ちゃんって言われた!?」


 お姉ちゃんと呼ばれた事に驚くリナ。この時サナは可哀想な子を見詰める様に慈愛に満ちた目でリナを見ていた。

 その理由をリナが知るのは数日後のことである。

やっと転職後の仕事も落ち着いて来たので通常のスピードに戻したい所です。

でも、コロナ対策シフトに変更って……。

まだ、見ていないだけに怖いです。

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