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着ぐるみパジャマでお買い物

 晩飯にタルタルソースをたっぷり付けた白身フライが食べたくなった俺は地下の冷凍庫へと足を向けた。


「魚のストックが切れてる……」


 そこで白身魚を詰めた箱を開けたら中身は空っぽになっていた。良く見ると他の魚を入れた箱まで空になっている。


「最近、何か作ったっけ?」


 俺は一緒に付いて来たスルーズに聞いてみた。


「う〜んと……カマボコでしたか? 魚のすり身で作る。色々な料理に使えるから暇なこの機会に作ろうって言って……」


「あっ、そうだった」


 俺は自身のアイテムボックスを開くと中には様々な種類で作ったカマボコが納められていた。


「後は水炊きの時に大量消費した様な……」


「そういえば、カマボコを作る事にしたのはその時に食べきれなかったすり身が勿体ないって理由だったな」


 それがいつの間にか純粋なカマボコ造りになっていた。

 そんな訳で魚のストックが切れたから翌日にベレチアへ買い出しに行こうとしたのだが、雪だったから後日で良いやと延期してそのままだった。


「それに魚自体が内陸部では珍しいですからね。存在を忘れるのも仕方ないですよ」


 魔法技術は日々発展しているらしいが生活魔法の開発に回せる程の余裕はどの国にもないので冷蔵や冷凍の輸送が可能になるのはまだ先の話だろう。


「仕方ない。だらけてる所悪いが数人連れて買い出しに行くか」


「私たちエルフなら喜んでついて行きますよ。ユーリさんからのお願いなら名誉みたいなものですから」


「それを言い出したらうちの住人の大半がそうなんだが……」


 そうなのだ。エルフ族や悪魔族は俺への恩返しとばかりに色々してくれるのだ。


「俺としては助かるけど嫌なことまでさせていないか心配になるんだよね」


「大丈夫ですよ。ユーリさんのそんな性格は分かってますから嫌なことは嫌って言います。尤もリリンはもっとコキ使って下さい。あの子は問題ばかり起こしますからね」


 そう言って笑うスルーズの額には青筋が浮いていた。


 アイツは一体スルーズに何をしたんだ?


 とりあえず、これ以上彼女がリリンへの怒りを思い出さない様に俺は話題を変えることにした。


「スルーズには助かっているよ。皆の事を内々に教えてくれるし、料理も作ってくれるしね」


「料理でしたらユーリさんもですよ。男性で料理する方は珍しいですからね」


「そうか? 今時の男はするものだと思うが?」


 紳士の嗜みをテオドールと勉強した時に簡単な料理の作り方を習う機会が有ったくらいだしな。



 *********


「いやいや、珍しいですか…………ハッ!」


 その瞬間、スルーズの脳内にエルフの里での記憶が甦った。


「料理の出来る男はモテるのよ」


 その言葉を言っていたのは人間の男に恋をして里を抜けた娘だ。

 何でも恋した相手は武力が弱いけど料理が得意でモテるから困ると言っていた。

 それに対して私たちはこう言った。


「えっ、そうかな? 力がある方がモテない?」


 しかし、今なら分かる。女性がするべき事をするという事は女性の気持ちが分かるのだ。だからその分優しくしたり思いやってくれたりするから魅力的に映るのだ。

 このままユーリさんが公言して回れば私たちが認めない者にも誘惑されるかもしれない!


「身内以外に料理が得意と言ってはいけませんよ?」


「はい? まぁ、良いけど……」


 良く分からない顔をされたが重要な事なので念押ししておくことにした。




 ************




「お~い、ベレチアに買い物行くから何人かついてきて」


 俺は買い物への付き添いに誘うべく談話室を訪れた。


「あっ、ユーリ君! 見てみて!! 皆凄く可愛くない?」


「おっ、なんだそれ!? めっちゃ可愛い!!」


 そこには着ぐるみパジャマに着替えた可愛らしい嫁さんたちがいた。


「ふっふ~ん♪ どうよ。私の成果は?」


 鼻息荒く腰に手を当て自慢するエロース。彼女は既に出血したらしく血溜まりを作っており、足がぷるぷる震えていた。

 最初はお昼寝した後なのかなとも思ったがどうやら違うらしい。


「俺の感想なら決まっているだろ? エロース、グッジョブだ!! いつもより厚みが有るな?」


「ええっ、厚みを調整して外でも着れるように改造したのよ」


 それをするとパジャマではなくただの着ぐるみでは……?

 そう思ったが可愛いは正義。ツッコミを入れないことした。


「もふもふで最高です、ご主人様。このまま転がって寝られそうです」


 ギンカは自身の魔物体みたいな白い狼さんの着ぐるみパジャマだった。彼女はそれに着替えて床をゴロゴロしている。

 そして、本当に気持ちが良いのか目を細めていた。

 もし、本物の尻尾を残していたら全力で振っているかもしれない。


「なぁ、エロース。これ耐寒性能もばっちりなのか?」


「ええ、いつもの紅蓮のローブと同等の性能と言っても過言ではないわ」


「どんだけ金かけたのさ!?」


「美人美少女を弄れるのならお金は惜しまないわ! 安心して私のポケットマネーよ」


「マジか。すげぇ……」


 見た目からは想像も付かないが、紅蓮のローブと同等という事は白金貨を消費するレベルにあるという事だ。

 そこまでするエロースの執念には恐れいったよ。


「よし。なら、外に出ても大丈夫だな。は~い、皆注目!」


 俺が手を叩くと皆は俺の方を振り返った。


「せっかくだから知り合いの店で御披露目しようぜ? ちょうどベレチアに魚の買い出しに行くから付き添いが欲しかったんだ」


「あっ、なるほど。私はOKです」


「私もokだよ。自分の奴に着替えるね」


 そう言って持ってきたエロースの着ぐるみパジャマはニワトリだった。同じ様に羽根の有る物を選んだらしい。


「それじゃあ、出発♪」


『おぉ~っ!』


 俺は可愛いらしい服装の嫁さんたちを引き連れてベレチアに転移するのだった。

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