フィーネ・マクスウェル
私は、フィーネ・マクスウェル。
乳牛族という種族です。
ミノタウロスから派生した変異体だと言われています。
その為、数が稀少で女性しか存在しません。
特徴的なのは、幼少の頃から母乳が出る事です。
私の母乳には、普通のミルクより濃厚で魔力が豊富に含まれています。
また、成人なら量も乳牛一頭と変わらず出ます。
だから、あらゆるニーズに好まれるのが私たちです。
故に、数を増やす為、繁殖を試みられる事も多々有ります。
子を成す為には、他種族から種を頂かなければなりません。
ですが、誰でもいいという訳ではないのです。
高い魔力を持った雄。
それと秘密ですが、お互いが心の底から認め合う事で結ばれる、魂の契約が必要なのです。
だから、それを知らない元主には、薬物の使用等色々行われました。
死ねばいいのに。いや、死にましたね。
転機が訪れたのは、竜王祭本戦の日です。
その日、元主は、それに参加して手足を無くす重傷をおいました。
その瞬間、私たちは歓喜したのを覚えています。
しかも、相手の方は、奴隷の契約書も破壊してくれました。
だから、自由になった私たちはケディに復讐した後、拘束されました。
殺人ですから当然ですね。
さすがに、クズノズク王国への強制送還を想像しましたが、竜王国の人たちの良心によりある提案をされました。
「ユーリ・シズという男がいる。お主たちの契約を破壊した男じゃ。あれが、保証人になってくれるそうじゃ。あの者なら信用出来るし、国家に属していないので引き取れるじゃろうが、どうだろうか?」
竜王自らがそう言って下さいました。
ユーリ様とは、元主のケディを圧倒し、契約書を破壊した人です。
私たちは、二つ返事でそれを受け入れました。
後日、ユーリ様の魔法で家へと行くことに。
移動は、数日下手したら数カ月と覚悟したのを他所に、転移門を使って一瞬で着きました。
着いた瞬間、殺されると思いました。
だって、危険と言われるカリーナの森ですもの。
殺人をしているので殺されても文句が言えません。
しかし、そんな森に立派な家と畑が有りました。
ここは、一応空白地帯になっているそうです。
でも、見捨てないで下さい。
捨てられたら死んでしまいます。
「信頼は、実績からってね」
そう言って、自己紹介が終わった私たちの治療を行いました。
おそらく、エリクサーだと思います。
上級ポーションですら治せないハイエルフの耳を治したのですから。
本来なら秘匿されるべきものですが、それを躊躇なく私たちに使います。
その後、私の事情も察したのでしょうか?
躊躇しながらも薬を下さいました。
薬故に恐怖がありましたが飲むと全身を包む安心感。
服の上でも分かる傷が癒えるのが分かりました。
私も他の娘たちの様に泣きそうになってしまいました。
落ち着いたのを見計らってユーリ様は、こう告げました。
「帰りたい場所があるなら帰って構わない。そこまでの援助はしよう。無理に残る必要はない。なんなら、俺の名義で竜王国で働いてもいい」
大変魅力的な話では有りましたが、既に心は決めていました。
この方の側にいたい。
私たちは話し合いましたが皆同じだった様です。
「私たちをどうかここに置いて下さいませ」
代表して私が言います。これでも皆のお姉さんですから。
尤も、ケディに1番気に入られていたので助言したり止めたりしていた結果、皆のお姉さんになったのですがね。
その後、仕事の説明から部屋の話まで色々話されました。
養鶏がしたいそうです。
お任せ下さい。
昔、飼っていた事が有ります。
そして、家を明日には造るとの事でしたが、どういう事なのでしょう?
まるで、明日1日で完成するような話しぶりです。
普通は、長期間かかるものですよね?
ユーリ様は、話し終わると今日の寝床としての部屋に案内し、森へと材料回収へ向かわれました。
昼飯には帰って来て、皆の料理を作り始めました。
エルダーボアという魔物を素早く解体する姿は見事なものでした。
人手が足りない様で手伝います。
指示通り野菜を切ったりしました。
出来たモノは、豚汁というそうです。
大変美味しかったです。
この味噌というモノのおかげでしょうか?
食後、他に仕事がないか尋ねます。
「今日は休みでいいよ?」
「いえ、何かさせて下さい。落ち着かなくて」
他の皆も同じだったようです。
「分かった」
というと、木材と工具を用意してくれました。
「鶏小屋を頼む。材料は好きに使ってくれ。足りなくなったら用意するから」
高品質な木板と工具を渡されました。
これは立派なモノを造らねば。
皆と協力して作製しました。
作業で汚れたのでお風呂をススメられました。
ルール。その2。清潔を志しましょう。
遠慮しましたが、ユーリ様が病気の時以外は絶対に入る決まりにしました。
お風呂も大変立派でした。
私は、何度か入っているので、入った事のない子たちにも入浴法を教えてあげました。
その夜は、ユーリ様の部屋を訪れます。
私自身の限界も近いようなので。
場合によっては、夜伽も。
少し期待します。
中には、妻のアイリスさんもいらっしゃいました。
奥さんなのだから同然ですね。
残念に思いながら2人に来た事情を話します。
ちなみに、『様』付けでなく『さん』付けなのは本人の希望によるものです。家族なんだから『さん』付けで良いのとの事です。
ユーリ様は、各自に任せるとの事なのでそのままにさせて貰いました。
アイリスさんには、今後の為にも特に許しを得る必要が有ります。
その夜、アイリスさんの許可もあり私を捧げました。
アイリスさんも大変気に入った様です。良かった。
ユーリ様から妻にといわれましたが、そこまで遠慮なく有りません。
ただ、従者として生涯お仕えさせて下さいといいました。
それに、全員を妻にしたらキリがない気がしますしね。
今回は、私の事情のため遠慮して貰いましたが全員行く気でした。
妻のアイリスさんは、容認派なのでその内全員と関係が出来ると思います。