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後日談 誰も死んだとは言っていない

 クーナのアルラウネ化が治まり1週間が経過した。

 最初は泣いてばかりいた彼女も皆と打ち解けて大分元気になった様だ。今もうちのユリウスが彼女の背中をよじ登っている。


「……ユーリさん。貴方の息子さんは私を山か何かと勘違いしているのでしょうか?」


「どうだろう?」


 俺は頭にまで到達したユリウスを見た。

 ここの所よく見掛ける光景だが、ユリウスは頂上まで登る度に首を傾げるのだ。


「恐らくクーナさんのことを自分と同じ白竜だと勘違いしているのでは?」


 やって来たマリーはクーナからユリウスを引き剥がして抱っこするとそう言った。


「どういう事ですか?」


「そういえば、クーナさんはユリウスの竜体を知りませんでしたね。この子は聖属性を得意とすると言われる聖竜。つまりは白竜なんですよ」


 以前、一時的にユリウスが竜体に成った事が有った。まだまだ幼くて車くらいのサイズだが立派な白竜だった。


「なるほど。同じく真っ白という事で竜だと思った訳か」


「ええっ、それに竜体のお母様に登った事が有るので、勘違いしたのかもしれませんね」


「あれ? 普通は番か同性じゃないと無理って昔言ってなかった?」


「それなんですけど……孫愛が勝ったみたいです」


「マジでっ!?」


「すみません。嘘です」


「嘘なんかい!」


「どうやら番と子供を作れば少しは緩和されるみたいですよ。身内限定のようですが。試しにお兄様を乗せても大丈夫でした」


「よくギルさんを乗せようと思ったね」


「お兄様なら落としても大丈夫だと思ったので♪」


「ギルさんの家族内での扱いについて今度じっくり聞いてみたい所だよ」


 マリーに抱かれたユリウスを撫でながら肝心な事を思い出した。


「クーナ。体調の方はどうなんだ?」


 彼女からアミュウが分離した後の見た目は完全に人の体を成している。


「ええっ、すこぶる快調です」


 名称:クーナ

 種族:魔族

 詳細:アルラウネの因子をその身に宿し、体内に張り巡らされた根によって常人を超える身体能力と反射速度を有している。


「それに泣いてばかりもいられませんからね」


 そう言ったクーナは身の丈程もある処刑刀を取り出して素振りをして元気をアピールした。


「……後遺症が残ったな」


 今回の事で身体能力は言わずだが、種族の方も人から魔族へと変わってしまった。

 その上、左目は燃えるような深紅の瞳へと変貌しオッドアイとなっていた。


「そういえば、ユーリさんに聞きたい事があったのですが……」


「何かな?」


「衣食住を提供して頂けてる事には感謝しているのですが、外での私の扱いってどうなってるんですか? 例えば以前やって来た騎士団などの衛兵に対しては?」


「……無罪放免。好きにしろだとさ」


 彼女には内緒だが実は裏で色々と手を回してきた。

 例えばマルコスの屋敷を土砂崩れに見せ掛けて壊し、お金を掛けて早急に作っても壊すというのを繰り返してやり財政難にしたり、その隙を付いて奴の商会の息がかかった店を買収して乗っ取ったりね。

 しかもその途中で奴がしてきた悪事が出るわ出るわ。結局町の騎士団と協力して表と裏から攻め立てた。

 その結果、クーナへの嫌疑は奴が着せた濡れ衣。殺したことは正当防衛によるものという見解がなされて処理された。


「クーナが望むなら商会の返却も出来るようにするけどどうする?」


「いえ、それは望みません。私は今さら商会の会長として働きたいとは思わないので。それに元々"賞金稼ぎ"をしていた経験から冒険者の方が性に有ってます」


 クーナは元々賞金稼ぎをして生計を立てていたそうだ。

 本来なら冒険者が良かったのだそうだが種族が2つだったので出来なかったとのこと。

 しかし、そんな彼女も今や魔族。俺たちのサポートも有ったからかアッサリと登録される事になった。彼女が望めばチームに加入させるのも有りだと俺たちは考えている。


「それともう1つ聞きたい事が……アミュウの件です」


「答えれる範囲でなら良いよ」


「もしエリクサーを2本使っていたらアミュウも助かりましたか?」


「う~ん、どうだろう? エリクサーの事は全て把握さてれないってのも有るけど経験的に同化してたなら1人のカウントになるんだよね。だから、2本使っても意味なかった気がする」


 ガーゴイルの時がそうだったので一本だけでも問題は無かった様に思われる。


「そうですか……」


 とても残念そうに意気消沈するクーナだった。


「まぁ、俺の勝手な選択だし。恨まれても仕方ないとは思ってるよ」


「恨むだなんてとんでも有りません!」


 クーナは俺の手を握り締めると熱く語ってきた。


「結果は少し悲しいものでしが……ユーリさんはもっと胸を張って良いんです!対価だって貰って良いんです! だって、私は救われたんですから!! だから、だから……っ!!」


「わっ、分かった!分かったよ!だから、手を離さない? その……色々当たってて……」


「えっ?……はっ!?」


 クーナは我に返り握った俺の手を見ると熱くなった時にいつの間にか胸で包み込んでいた事に気付いた。


「……スケベ」


「俺のせいなの!?」


「まっ、まぁ~っ、責任は取ってくれるとユーリさんは言ったので最後まで面倒見て貰う予定ですからこれくらいはねぇ……」


「えっ、それって……」


 顔を真っ赤にしたクーナは顔を背けて無言を貫くのだった。


「クーナがデレてる……」


「ああ、俺も驚いて……えっ?」


 俺は背後から聞こえてきた声に聞き覚えが有って振り返ると。


「アミュウ!?」


「えっ? えぇ~っ、……嘘っ!?」


 そこには死んだはずのアミュウにそっくりな娘が立っていた。俺の声で気付いたクーナもその子を見て驚きの声をあげた。


「ヤッホ~~♪」


「ゆっ、幽霊っ!?」


 青ざめたクーナが俺の背後に隠れて様子を伺う。


「失敬な。スカートで見辛いと思うけどちゃんと足は有るよ。ほらね」


 そう言ったアミュウはスカートをたくし上げ、白くて綺麗な生足を見せてきた。


「ちょっ、ダメ!それ以上は上げちゃダメっ!?」


「あっ、おしい……」


 クーナが慌ててスカートを降ろさせた事で色々見えそうで見えなかった。


「何で下を履いてないのよっ!?」


「いや、だって今まで裸同然だったし……」


「あぁ、その気持ちは分かります。私も服を着るのは貴女やドライアドと同様に億劫で仕方ないですから」


 アミュウの気持ちに賛同したのは一緒に来ていたダフネだった。


「ダフネ。これはどういうこと……?」


「どういうも何も新しい身体を用意しただけです」


「どうやって?」


「ユーリ様は接ぎ木というのをご存知ですか?」


「接ぎ木? 2つ以上の植物が癒着して一つになる奴だろ?」


「そうです。それを彼女に施しました」


「……ドライアドの一部を貰ってしたのか?」


 同じ植物系の魔物なので出来そうな気がする。


「半分正解です。彼女は花で、ドライアドたちは木。似てるようで似てない彼女たちを繋ぐには別の繋がりが必要でした。なので、彼女に協力をお願いしました」


「ユーリ様、ごめんなさい! 全て知ってるものだと思って、ダフネの頼みで土精霊の因子を渡しました!」


 ダフネの背後から現れたブラウニーに突然謝られた。

 そして、聞き捨てならない"土精霊の因子"という単語が聞こえた。それはハイエルフなどを生み出す時に使われるものだ。


「さらにそこへ木精霊の因子も加えて接ぎ木は成功。彼女の新しい身体が出来たのです」


「内緒でこんな事をしてごめんなさい!」


「……なるほどな。教えて貰えなかったのは悲しいけど、アミュウが助かったのなら良いや。終わり良ければ全て良しってね」


「それなんですが……」


 謝り続けていたブラウニーが泣きそうな目で申し訳無さそうにしていた。

 しかし、その答えをダフネはアッサリといった。


「彼女の種族もアイリスみたいに魔物から進化して魔族に成りました」


「はい?」


 俺はダフネの言葉で服を脱ぐ脱がないでクーナと言い合いをしているアミュウを鑑定してみた。


 名称:アミュウ

 種族:魔族・花樹妖精(リリラウネ)

 詳細:アルラウネとドライアドの身体を土と木の精霊の因子で再構築して生まれた。種族特性として植物を自在に操れる。


「マジかよ……」


「彼女はアイリスさんよりも魔物だったので人の常識が欠如してました」


「なので、そこの教育は頑張って下さい」


「…………」


 もう全部クーナに丸投げで良いかな?

 2人の言い合いは加熱してきているがその顔はとても良い笑顔だったのでそれも有りな気がしてくるのだった。

最近2日に一話を投稿してる気がする。

その分、内容は1.5倍だから良いよね?

後、リリスラウネと聞くとエロ漫画の『リリスラウダ』先生を思い出すのは俺だけかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] 2日に一話でも、数日に一話でも良いですよ。 体調(と著者の納得か妥協出来た内容)が第一ですから。
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