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 俺がクーナを連れて転移した先は狂乱の小世界(カオスコスモス)だ。これから行う事はどうしてもこの場所でないと行え無いのだ。


「!?!?!?」


 連れて来られたクーナは突然の変化に戸惑い周囲を確認している。俺はその隙にアイリスへと念話した。


「(アイリス、聞こえる?)」


「(あっ、ユーリ! 突然転移したからリリィたちが驚いてたよ! 何処に転移したの?)」


「(心配かけてごめんね。今はカオスコスモスの中に居るんだ。ここなら多少無茶をしても大丈夫だからね)」


「(……ユーリ。一度死ぬつもり?)」


「(……なんでそう思ったの?)」


「(ユーリがクーナを連れて転移した先がそこなのとダフネからの話でなんとなく?)」


 流石は俺に一番長く連れ添ってくれている奥さんだ。俺の考えそうな事が手に取るように分かるらしい。


「(ユーリの事だからもう覚悟も決まってるんでょ? なら、私から言う事は1つ。絶対にクーナを連れて帰って来てね。帰りは私が何とかするから)」


「(あぁ、頼りにしてるよ)……ふうっ〜〜っ」


 それを最後にアイリスとの念話を終えた。それから長く息を吐くとアルラウネと化したクーナを見据える。


「サギタルクス!」


「っ!?」


 それから魔法で光の矢を作り出すと彼女に当たらない様に放った。

 周囲が薄暗くなっていた事も有り、横を光の矢が通過すると直ぐに俺の存在は気付かれた。

 彼女は俺に攻撃の意思が有ると認識したのか、先程とは比べ物にならない程の殺意が溢れていた。


「行くぞ!」


 俺は掛け声と共に真っ直ぐクーナへと走り出した。先程の転移の一件も有るからか、彼女の猛攻は激しさを増している。

 しかし、そんな中を俺は防御魔法の1つも唱えずに突き進む。クーナに向けて一歩進む度に傷が生まれ周囲には血が飛び散り始めた。


「ハァアアーーッ!」


 それでも走り続けた結果、手を伸ばすとクーナにキス出来る位置に辿り着いた俺を。


「………」


「………ごふっ」


 先の一件で学習したクーナにより全身を蔓で貫通された。


「………分かっていたけどかなり痛いな……俺泣いて良い?」


「………」


 痛みで顔を歪める俺を余所に無表情なクーナを見て少し怒りが込み上げてきた。


「無理やりその唇を奪うから覚悟しやがれ」


 俺は空間魔法でボトルに入ったエリクサーを自身の口に転移させると彼女の頭を引き寄せて無理やり口移しで飲ませた。


「………」


 意識を集中してみると俺への攻撃により撒き散らされた血をクーナが浴びてしまった事により彼女との間にパスが構築されていた。


「ソウルダイブ!」







 クーナとの間に構築されたパスを辿り夢渡り?を行った俺は気付けば果ての見えぬ廻廊の中に居た。

 そして、俺の周囲には美術館の絵の様に飾られた格子が浮かんでいた。


「これは……」


 格子に入った物は絵ではなく、それは彼女の記憶を切り取ったと思われる断片の映像だった。

 目の前の映像では両親に誕生日を祝われるクーナの姿が写し出されていた。


「こっちが過去でこっちが未来か……」


 回廊の行き先が分かった事で俺は彼女の未来へと歩き出した。


「………良い両親だったんだな」


 目に映る彼女の両親は誰が見ても善人と言える程に優しい人物に見えた。忙しい仕事の合間を縫ってクーナの相手をしている姿も沢山見掛けた。


「マルコス」


 クーナの記憶の映像と共にある音声によるとマルコスはクーナの父親の弟で彼女にとっては叔父さんに当たるらしい。

 そして、従業員や客を大事にする父親と金にがめついマルコスは商会の運営でよく対立していた事が記録されていた。


「……やはりクーナとの間に何かあるのか?」


 それからどれくらい歩き続けたのだろうか?

 果ての見えない回廊を歩き続けた俺はクーナがアルラウネの少女と出逢う記録にまで辿り着いた。


「本当の姉妹みたいだ」


 クーナの話を裏付ける様に記憶の2人には笑顔が絶えなかった。

 最初の内は人間と魔物ということもあって距離を置いていたが旅を続ける度に仲が親密になっていった。


「大っきいのは母親譲りか。……なるほど。アルラウネに豊乳マッサージもして貰ってたのか。その成果でこの頃からスクスクと成長……」


 記憶の中には恥ずかしい記憶や自身の成長なども含まれていたので見ていて楽しい。


「……ユーリさん?」


 記憶を見ていた俺は自身を呼ぶ声がして振り返ると同じ様に記憶を見ていたクーナに出会った。


「クーナ!ここに居たんだね。探したよ」


「ユーリさん! どうして、ここにっ!?」


「クーナを助ける為にね。その為には君の意識を覚醒させる必要があるみたいだからクーナと繋いだパスを辿って来たんだ」


「それじゃあ、この空間はユーリさんによるものですか?」


「うん?」


 クーナに話を聞いてみると意識が無い時はいつもこの場所に居るそうだ。そして、目覚めるとここでの事を忘れているらしい。


「本来のこの場所は果ての見えない一面の星空みたいな場所なんです。だから、この様に方向性すらも無かったです」


「どうだろう? 空間魔法は得意だけどこれは意識したものじゃ無いしね。一応潜る時に君たちまでの道をイメージはしたけど……」


 その結果がこの空間を生み出したとは断言出来ない。


「君たちとは?」


「クーナと同化しているアルラウネも休眠状態みたいなんだって。彼女も起こせば色々と変化が落ち着くんだとさ」


 暴走の原因は肉体に意識が無いことらしい。その為、事前に命令された事だけを行い暴れている。

 そこへ意識を戻してあげれば自身への命令を変更して大人しくなることも可能だとか。


「彼女もこの場に居るのですか!?」


「そうだよ。多分、まだ先じゃないかな?」


 回廊の先にアルラウネは見えないがこの先に居る気がした。


「だから、一緒に行こう」


「……分かりました」


 俺がクーナに手を差し出すと彼女は少し悩んだ末に手を取ってくれた。


「よし!出発」


 それから二人で旅の記録を見ながら進んでいく。

 途中、たまに映るクーナの恥ずかしい醜態を見る度に彼女は俺の目を隠そうとしてくるのでそれを回避しながら見るといった感じで楽しんだ。

 そして、とうとう事件が起こった日へと辿り着いた。


「こっ、コレが事件の真相なの……っ!?」


「なるほど。これで色々辻褄が合うな」


 そこに記されていた記憶は彼女の認識を全てひっくり返すものだった。

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