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だから再三言ったのに

「犬は喜び庭駆け回り〜、()は炬燵で丸くなる〜♪」


 昔からある童謡の『雪』の歌詞でもある通り、猫は炬燵が好きらしい。

 うちには猫は居ないから正確に分からないが、猫型獣人の嫁さんたちに関してはそうだった。

 好きのあまりこうなるほどに……。


「だから、あれ程炬燵で寝るなって言ったのに……」


「グスッ……ゴメンニャさい……」


 鼻声で謝る猫型獣人のライカ。彼女は夜に人の居ない炬燵へと潜り込み寝てしまった。その結果、本人も知らぬ間に暑くなって炬燵の外に出ていたのだ。そのせいで風邪を引いたという訳だ。


「猫型の性に負けてしまったにゃ……」


「ライカ。同じ猫型でもユキは風邪引いてないでしょ? それはちゃんと自制出来るという事だよ? 今後はちゃんと気を付けるように!」


「ユキが炬燵で寝ないのは去年風邪引いたからじゃないのかにゃ?」


 そうなのだ。去年炬燵で風邪を引いた人というのはユキの事なのだ。彼女も性に負けて炬燵で丸くなっていた。


「それに同じ猫型ならもう一人風邪引いたのが居るにゃ」


 ライカの視線の先を見ると当人は盛大なクシャミをした。


「ハクシュン!!……ズズズッ」


 珍しく厚着をしているモカはクシャミの後に鼻をかんだ。

 彼女は何度も繰り返してるらしく小さな鼻の先は赤くなっている。それがなんとも可愛く見えた。


「グズッ……おかしい。なんで、お兄さんは風邪引いてないの?」


 モカは恨みの籠もった目で俺を睨んでくる。

 彼女が何故俺を睨んでいるかというとそれは彼女と寒空の下でニャンニャンしたからに他ならない。


「ライカ。モカは例外。俺が原因だから……」


「一体何があったにゃ……?」


「モカが寒そうにしてたからコートの中に入れた。激しくムラムラした。以上!」


「性欲が強いのも程々にするにゃ」


 ライカに凄く呆れ顔で見られてしまった。


「とりあえず、子供たちに風邪移ったらいけないので2人は俺が看病します」


「分かったにゃ」


「グズッ、お兄さん。絶対にしないからね」


 それは誘っている様にしか聞こえない。都合のいい様に聞こえる俺は重症かもしれない。


「流石に病人に手は……出さないよ」


「今の間はっ!? ゴホッ!ゴホッ!!」


 俺にツッコミを入れたモカは激しく咳き込んだ。


「ほら、熱も上がってきたみたいだし。部屋に行こうね。転移で連れてくよ」


「誰のせいだと思ってるのよ……」


 グチグチ言うモカとライカを連れて準備していた部屋へと連れ帰った。

 病室には急造した加湿器を設置して、室温は一定に保つ様に細工した。ただこれにより外部からの入室は難しくなったが仕方ないだろう。


「でも、転移以外だとこの部屋出入り出来ないよね?」


「やってしまった……」


 既に部屋へ来ていたアイリスにツッコミを入れられた。

 室温や密閉は残しつつの換気性を重視したあまり他の事を完全に忘れていた様だ。


「……アイリス。看護のサポートありがとうな」


 アイリスは病気にならないので一緒に看護して貰うことにした。


「任せて! 専用の服にも着替えたからね!」


 そんな彼女の装いは病人を癒やす白衣の天使。ナースキャップに白のワンピースが清潔感をアピールしていた。


「ユーリ。それで話は戻すけどさ。トイレはどうするの?」


「あっ……」


 転移の使えない彼女たちは


「仕方ない。私が……」


「連れていってくれるのか。助かるよ」


「………」


 お礼を言うとアイリスは罰が悪そうに顔を背けていた。どうやら彼女は違うことを考えていたらしい。一体何を想像していたのやら?


「ゴホッ!ゴホッ!!」


「うぅ〜っ、世界が揺れるにゃ……。熱が上がったにゃ?」


 俺とアイリスは体温計を片手に2人を測るとなかなかの体温になっていた。


「アイリスさん……水持ってません?」


「有るよ。ちょっと待ってね」


 そう言ったアイリスはおもむろに服の前を開け始めた。俺はそんな彼女をすかさず止めた。


「うん。本当に待て!? 本当に何をする気?」


「何って、水をモカにあげるんだよ?」


 何を言ってるんだという顔で俺を見返すアイリスだった。


「どうやって?」


「授乳。溜めて水分を分けようかと?」


「コップで良いよね!?」


 まさかアイリスがそんなトンデモ行動に出るとは思わなかったのでびっくりした。俺はアイテムボックスに入れていた水を渡す事にした。


「それじゃあ、薬を飲んで休もうか」


「ユーリ。薬だけだと胃が荒れるから何か食べさせた方が良いよ」


「そういえば、2人は食事もあんまり食べて無かったな。俺が軽く何か作ってくるよ。2人をよろしくね」


「いってら〜〜っ♪」


 2人をアイリスに任せて部屋から転移した。


「さて、何を作ろうか?」


 病人食の定番といえばお粥だろう。

 しかし、お粥だけでは栄養が足りないので少し加える事にした。


「確かアイテムボックスに……あったあった」


 先日、アイリスが狩ったブレイクフィッシュの残りがあった。

 ブレイクフィッシュは大きなザリガニの様な魔物なのだが、その身は蟹に近かった。栄養価も高く、鍋で食べた後にした雑炊では蟹雑炊を彷彿とさせた。


「数人分だけの雑炊を作ろう」


 まずは、水にご飯と細かく刻んだブレイクフィッシュの身を入れて中火で煮込む。

 ご飯が水を吸ってふやけてきたら醤油や塩で味を整えて溶き卵を投入する。

 その後、直ぐに火を止めて鍋の卵を混ぜる。もしそのまま加熱を続けてしまうと卵の一部が塊になってしまう。

 最後に少し小ネギを加えて色合いも整えれば栄養価満点の蟹雑炊?の完成だ。

 俺は早速それを持って病室へと戻った。


「「「あっ……」」」


 戻った部屋では下を履いていないモカたちとその前に座るアイリスがいた。

 何をしていたか分からないが、モカたちの赤らめた顔から事後の様に見える。


「………」


 俺は悟った様な顔で鍋を部屋のテーブルに置くと無言で部屋を転移した。


「「「違うからねぇええーーっ!?」」」


 背後からそんな声が聞こえたから真実だと思いたい。


 それから数日後、2人の体調は良くなった。薬だけでなく体に良い食事が効いたのかもしれない。

最近、また書くスピードが落ちてしまいました……。

なんとか毎日続けられる様に頑張りたいです。

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