全て終わって……
「「ふう~っ、超満足した♪」」
ヴィーちゃんへのお仕置きを終えた俺とアイリスはとても清々しい気分になった。心なしか今まで一番良い笑顔な気がする。
「ハァハァ……んぁ…………勝てなかったよぉ……」
ベットの上で虚ろな目をしているヴィーちゃん。彼女が何に勝てなかったかはスルーということで。
「ちょっとヤり過ぎちゃったかな?」
ヴィーちゃんの姿はちょっと人に見せられないけど意識が有るだけ凄いと思う。流石は魔王だ。
「そんな事で魔王だと思われたくない……」
それからヴィーちゃんの回復を待って外に戻ると既にイナホたちが部屋に辿り着いていた。
「ユーリさん!ご無事でっ!!」
「おっと、ただいま。イナホ。そして、皆もありがとう」
俺を見るなり首に抱き着いてきたイナホを受け止めて、皆にお礼を伝えた。
「心配はしてなかった。でも、報酬は貰う。エルフ秘蔵のお酒を希望」
無表情で淡々と言ってきたシオンだったけど、それが心配していたことを悟られたくない照れ隠しだと知っているから嬉しくなった。
「分かった。お礼に用意するよ」
「……やった」
シオンが隠れて小さくガッツポーズしていたから相当嬉しいらしい。
「あら? なら、私は新しく作った媚薬の被験体で良いわよ」
「お礼として飲みたい気持ちは有るけど絶対飲まないからねっ!?」
媚薬はレジストし辛いんだ。害意がある訳ではないから。
そして、飲んで以前の様な醜態を晒したくない。
「でも、誰かが飲まないといけないのよ?……仕方ない。ここはメーアちゃんに……」
そこから先をリリィは語らなかったが、メーアに飲ませるのは目に見えていた。リリィに弟子入りした彼女の苦労が忍ばれる。
もしもの時は責任とるから頑張ってくれ……。
「はいは〜い、皆さん注目ですよ〜」
皆でお喋りしていたら床からモモちゃんの上半身がすり抜けてきた。
「モモちゃん!君も来てくれたか?」
モモちゃんは霊体の為、飲食が出来ないからアダムスの嫁たちに顔見せした後に妖精の箱庭へ帰っていた。
「ひゃう!? なっ、何者なの!? 身体が透けてる……ゴースト?」
モモちゃんの姿に驚いて腰を抜かしたヴィーちゃん。
そういえば、祝勝会にもモモちゃんは参加していなかったからヴィーちゃんとは初対面同士だったな。
「彼女はモモちゃん。彼女も俺の奥さんだよ」
「モモちゃんですよ~。よろしくなのです♪……あなたはもしかして今回の元凶さん?」
「そうだよ。ヴィーちゃんことヴィクトリア・アスモデウスって言うんだ」
「わぁ~お、ユーリ君のロリコンが発動してるよ。わざと捕まった?」
「故意じゃないよ!?」
ロリコンだからと言ってわざわざ罠に飛び込むかい!
「それより、モモちゃんは何してたの?」
「あっ、そうだった。私は偵察の結果を伝えに来たんだった」
「偵察?」
「そうだよ。魔王城の結界は対物・魔仕様だったから霊体の私はすんなり入れたの。だから、城内の避難確認や戦況、城からの逃亡者を皆に知らせていたんだ」
「……だから、これだけ大規模な行動が取れたのか?」
「そうだよ。そして、そのかいもあって魔王城の制圧が完了した事を伝えに来たの」
「うそぉ……?」
「嘘じゃないのですよ~。なんならその目で見た方が早いかもですね? 皆さんへの事情説明も必要ですし行きましょうか?」
「何処へ?」
「魔王城の元玉座があった所です♪」
**********
「うわぁ……えげつねぇ……」
モモちゃんに案内されたのは魔王城の中心だった。
アハトアハトの攻撃により見事なまでの大穴が開けられていた。
「そっ、そんな!? 何代にも渡って引き継がれた玉座がぁっ!?」
ヴィーちゃんはショックのあまり膝をついた。
ここは元々魔王城のシンボルでもある魔王の玉座が置かれた所らしい。勇者物語に出るだけあって豪華だったと移動中に教えてくれた。
しかし、今やその場所は瓦礫の山と風通しの良い空間となっていた。
『ユーリさん!!』
声のした方を見ると紅蓮のローブを身に纏った嫁さんたちが魔王城に勤めていた人たちを円陣を組んで監視していた。
誰も彼も敗北を悟りお通夜ムードになっていた。
「ユーリさん!私たち頑張りました!ちゃんと手加減しました!」
『アレでっ!?』
彼らは皆一様に驚愕した表情を浮かべうちの嫁さんたちを見ていた。
「……手足が変な方向に折れ曲がってる人が結構いるけど?」
「大丈夫です!一人も死んでません!!」
「……死んでないなら良いか」
「いや、良くないよ!? やり過ぎだから!?」
「まぁまぁ、ちゃんと修復するからね」
「どうやって?」
「どうやって、魔法で直すけど?」
「無理でしょ? これだけの規模を直すなんて……」
「えっ?」
『はあぁぁーーっ!?』
いつも通りお得意の空間魔法で直ぐに修復を終わらせた。
ここ最近沢山作っていたから上手くなった事や材質が石材なのでストックにかなり余裕があったのでなんとかなった。
「嘘でしょ……?」
「おいおい、ヴィーちゃん。今日何回驚く気だい?」
「いや、だって……」
「さて、ここから先はヴィーちゃんの仕事だよ。うちの嫁さんたちが手を回してくれたから」
「……ごめん。恩にきるね」
それからヴィーちゃんは今回の魔王城襲撃がぬるま湯に浸かった様に緩くなった魔王城の意識を引き締める為に行ったと彼らに説明を行った。
「治療薬は出す。皆には今回を機に魔王城が襲われる事も有ると心して欲しい」
色々抜けが有るが、魔王城が修復された事や死者がいない事、治療薬を無償配布する事で皆にはなんとか受け入れられた様だ。
「それと皆にはもう一つ言わねばならん。それはーー」
魔王城襲撃から1週間後。
「ねぇ〜、ユーリ。良いでしょ? 今から子作りしようよ!」
「む〜り!今から仕事!それに昨日めっちゃしたでしょ!?」
「えぇ〜っ、後で良いじゃん!今からしようよ!」
「せめて夜まで待とうよ!」
「待てない!待てない〜!」
アレから魔王を引退すると言い出したヴィーちゃんはうちに押しかけて住み着きました。
そして、俺とアイリスが原因らしく色々目覚めてかなり懐かれてしまった。
「凄く懐かれたね。私にはそんなに懐いてないのに」
「さぁ、正直良く分からん」
「アイリス強引。ユーリ優しい」
「ふむ……アイリス。パス」
「ok。任せて!」
「ちょっ!?」
俺にしがみついていたヴィーちゃんをアイリスに引き渡した。
「俺は忙しいからアイリス頼むわ。きっと今日は優しくしてくれるよ。元気だったら相手するね」
「さぁ、行こうか。ヴィーちゃん。色々綺麗にしてあげるね」
「ちょっ、ごめん!我慢するから我慢するから〜!!」
その後、問答無用でアイリスに連れて行かれたヴィーちゃんなのでした。
彼女がどうなったかって?
それは乙女の秘密という奴さ。詮索しないであげてね。
頭痛い。ダルい。頭回らない。
明日投稿出来たらしますね。




