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爺やの記録

爺や目線での魔王サイドです。

書いてる途中からやる気がなくなったので少し雑ですが勘弁して下さい。

 伏魔殿(パンデモニウム)前日。

 我らの魔王ヴィクトリア様はこう仰った。


「やっぱり妾に見合う番を探すには野に降りて探した方が良いと思うのよ」


「伏魔殿のシステムではダメですか?」


 伏魔殿のイベントには各種仕掛けが施されており、それによって篩に掛けることが出来る。


「それに頼りきっていたから今に至るんじゃない。そもそもシステムの対象になる者たちが任意なのだからそれ以外の人に相応しい人物が居無いとも限らないでしょ? だから、今回はこの目で探してみるわ」


「……分かりました。活動し易い様にソロモンで屋敷を借りておきましょう」


「お願いね♪」


 私はその日の内に商会ギルドを訪れて個人名義で屋敷を借りた。今世に勇者が産まれたと聞いてはいないが、奴ら以外にも魔王を狙う者がいるから注意が必要だ。




 伏魔殿1日目。

 我は魔族としての特徴を隠し、何処ぞの貴族と従者といった装いに身を包んだ。いつもより更に幼くなったヴィクトリア様は直ぐには魔王だとバレないだろう。


「ヴィクトリアお嬢様……」


 しかし、街での行動を開始した早々に我らが魔王様は迷子になってしまった。

 見た目相応に頭も緩かったのだろうか?


「爺やさんがイケないんじゃないのかな?」


「束縛し過ぎがイケないんじゃないのかな?」


「私が悪いと言うのか?」


 ちょっとばっかし行く先々で魔王様の隣に立って御守りしながらお声を掛けられた相手を見定めているだけなのだが?


「そんなだから見つかる人も見つからないのですよ〜、睨み過ぎ」


「離れて見守る位で大丈夫なのですよ〜、私たちよりお強いし」


「「ヴィーちゃんが可哀相!」」


 双子特有のシンメトリーで私へ注意してくるモガルタとベガルタ。一見したらその可愛らしさから心が和み素直に聞くだろう。

 しかし、私にはこう聞こえていた。


「お前がいるから見つからないんだよ。他人を見定める程お前は優秀なのか? お前が?」


「ヤバくなれば盾になれば良いんだ。私たちより弱いのに粋がるな。魔王を心配できる程の実力か?」


 被害妄想の様に思うかもしれないが、彼女たちは笑顔なのに怒りマークを付けているし、私が上司だから優しく言ってるだけで本性からしたらあながち間違っていない筈だ。


「……分かった。次からは離れて見守る。だが、その前に見付けないとな」


 それから3人で探し、ヴィクトリアお嬢様は直ぐに見付かった。

 いや、見付かったと言うより見付けさせられた。


「勝者ユーリ!」


「おめでとう!」


「ありがとうな!!」


 伏魔殿の闘技大会で見知らぬ男性と抱き合っていたのだ。


「モガルタ。ベガルタ……アレを調べろ」


「なかなかの高魔力。そして、強いね」


「うん。あの子、手加減する余裕を持ってる」


「殺気を抑えろ。ここで騒ぎを起こす気か?」


 2人が非常に好戦的で困る。

 私は2人に彼の調査を頼んだ。大会で名前が呼ばれているし、店の宣伝も行っていたので直ぐに調べる事が出来た。


「「「ヴィクトリアお嬢様!」」」


 大会が終わったタイミングで、私たちは今気付いた様にヴィクトリアお嬢様に近付いた。


「爺や。命令です。この方たちを招待しなさい。()()のよ」


「「「!?」」」


 お嬢様の祝うと言った言葉は私たちの隠語だった。。

 それはお嬢様が……お嬢様自身がこの男性を見初めた事を示していた。

 そして、隔離して彼を絶対に逃がすなという事を示していた。


 彼には多くの奥さんがいた。

 この世におけるモテ男の三要素。"魔力"、"武力"、"金"を全て揃えていたので仕方ないと思った。

 しかし、ヴィクトリア様の邪魔にしかならないので、モラルタとベガルタと排除に動いた。


「ささっ、皆様お召し上がり下さい!(そして、潰れなさい)」


 殺してはダメだ。この人数が街から突然消えれば自国とはいえ色々と問題になる。だから、全ての飲み物に一服盛った。


「それではヴィクトリアお嬢様をお部屋に寝かせて参ります。ユーリ様たちはごゆるりと……」


 盛った物は蓄積型の睡眠毒。経過症状が酔いの様に現れるのが特徴だ。後は時間に任せて彼を連れ帰る準備を始めた。


「お帰り」


 戻ってみると彼しかいなかった。しかも盛った薬が効いていないらしくピンピンとしていた。

 いない奥さんたちについて聞くと彼が転移で連れ帰った事が分かった。これらが原因で計画の一部の変更を強いられた。


「ささっ、どうぞ」


 話を聞いた限り毒は抗体が出来るまでの間効くらしかった。

 なので、ちょっと特殊な毒を用意した。


「アレ?」


 毒の効果は覿面で、彼は倒れて眠りに付いた。

 使った毒は一種の薬とも言える。飲んだ者は強制的に休魔状態にさせられるのだ。

 休魔状態とは、数十年に一度ある自身の魔力炉を空にしてリフレッシュする代謝の事だ。

 本来の休魔状態なら眠くなる事は無いが、強制的にされることにより眠くなるのだ。

 また、魔力が多い者ほど睡眠衝動は強くなって抗う事が難しくなる。だから、彼は抵抗出来ずに眠ってしまったという訳だ。


「さて、いつ起きるとも限りません。早々に持ち帰り拘束しましょう」


 待機させていた騎獣に乗せて魔王城のヴィクトリアお嬢様の部屋へと運び込んだ。

 それから宝物庫にある『魔神封じ』と呼ばれており、神の造ったとされる鎖を持ち出して拘束した。これなら魔力が戻り目を覚ましても一人では逃げる事が出来ないだろう。


「「準備完了です!」」


「寝てても反応するのね」


「身体は正直といいますからな。モラルタとベガルタは、しっかりとお嬢様をレクチャーするのですぞ。終わったら知らせなさい」


 私はモラルタとベガルタに後を任せて部屋を出た。

 数時間後、2人から無事に既成事実が出来たとの報告を受けた。


「これで次世代も安心」


 そう思っていたら事件が起こった。魔王城が半分吹き飛んだのだ。正確には魔王城の中央に大穴が空いたのだが。


「なっ、何が起き………こっ、これはっ!?」


 私には種族特性の千里眼がある。自身の一部から一時的に目を作り出して遠隔操作出来るのだ。

 各所へ事前に設置していたそれを使って見ると彼の奥さんたちが取り返しに来ていたのだ。

 そして、分かったのは既に魔王城の警備兵は全滅し、ヴィクトリア様の寝室を目指している者がいることだ。


「マズい。マズ過ぎるっ!!」


 急ぎ報告をした。話を聞いたヴィクトリア様は驚愕していた。

 それもその筈だ。何故なら魔王の天敵である勇者すらもここまでの破壊は出来なかったからだ。


「六翼王っ!」


 残念。私の目で見たら既に彼らは倒されていた。その部下に念話すると流れ弾らしい。運が悪い。


 おや? この階にも侵入者がいた。

 直ぐに気付いたモラルタとベガルタが応戦し始めた。


「な〜に、四天王の存在に怖じ気づいちゃった?」


 丁度、こっちではその話があがっていた。


「えっ? でも、彼女たちなら既にスライム漬けになってますが?」


 うん。知ってた。だって最初から戦いを見ていてスライム娘がここに来るのも見ていたから。

 しかし、まさか戦闘らしい戦闘すら出来ずにモラルタとベガルタが凌辱されるとは思わなかったけど。


 あっ、……そろそろ本格的にマズそうだ。


 私の目には下の階に辿り着いた者たちが見えていた。このままでは私も捕まるだろう。私は薬を盛った張本人な訳だからただでは済まないのは目に見えていたので素直に逃げた。


 運が良い事にこの部屋に来たスライム娘は彼やヴィクトリア様に注意を向けている。その間にゆっくりと後退りフェイドアウトする事が出来た。


「良し、とりあえず他の六翼王の所にでも身を……げぼらっ!?」


 バレずに逃げ出せた私は魔王城から出た瞬間、超遠距離から狙撃されて壁へとメリ込んだ。

 意識を失いながらこれが逃げた報いだろうかと真剣に考えた。

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