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魔王城襲撃

 伏魔殿(パンデモニウム)2日目。魔王城襲撃。

 その日は魔王城に勤める人たちにとって悪夢の日となった。


 ソロモンにある宿泊エリア。ユーリが貸し切ったホテル屋上にリリスたち三姉妹の姿があった。


「……固定完了。照準。魔王城中央にセット良し」


 妖精の箱庭(フェアリーガーデン)の地下にユーリが封印した対遠距離戦闘武装『アハトアハト』を持ち出して、その照準を魔王城の中心に定めるリリス。


「弾丸の風魔法による加工完了。これで射線制御が出来るわ。リリス姉さん」


 魔王城の多重結界を破壊するために黒星石で出来た実弾も地下から持ち出しており、それに自分の魔力を込めるリディア。


「頼みますよ、リディア。威力は知っての通りです。城の破壊までならユーリさんは……多分許してくれると思いますが、その他に被害が出たら悲しむので」


「大丈夫です。ちゃんと分かってます。城に着弾したら角度をズラして町の外に落とします」


「なら、大丈夫そうですね。魔力の方はどうですか、リリア?」


 アハトアハトの後方では、外部から魔力供給を可能にする為の魔力炉を接続しているリリア。


「魔力炉との接続完了。アハトアハトへの魔力供給も問題無し。何時でも行けるよ♪」


 姉妹の確認が取れた所でリリスはインカムに手を当てた。


「……中央の人払いは済んだそうです。それではカウントに入ります。3……2……1……」


「「「シュート!!」」」


 アハトアハトから放たれた黒き弾丸が高速で飛翔しながらソロモンの上空を駆け抜けた。




 ******




 リリスが狙撃を行う少し前、魔王城左側で突如大型種族同士の大喧嘩が始まった。それを行ったのは竜体のマリーと魔物体のギンカであった。


「少しは人前でキスを迫るのを自重して下さい!」


「だったら物陰に隠れてやるのを自重して下さい!見えなくても鼻で分かるんです!!」


 2人はお互いを罵りながら魔法で攻撃し合った。

 しかし、クルクルと回り立ち変わる様に回避するので全て当たらず、代わりに攻撃は全て魔王城の結界にぶつかっていた。


「こっ、こらっ!止めないかっ! この場所を何処だと思って……」


「「煩い!!」」


 大型種族同士の争いに当然警備兵たちが集まってきた。

 警備兵たちは彼女たちを宥めようとするも話を全く聞かないので、もしもに備えて城中の兵たちは左側に召集され、非戦闘員たちは魔王の部屋が有る最も遠い魔王城右側へと避難するのだった。

 そして、避難が完了したタイミングを狙って2人の元に紅蓮のローブを纏ったフィーネたちが飛び出した。


「マリーさん、ギンカさん!」


「「「カウント入りました!」」」


『んっ?』


 フィーネたちの言葉の意味が分からずに首を捻る警備兵たち。

 作戦を理解しているマリーとギンカは特大の魔法を放つ為に魔力を貯めた。


「一体何をーー」


 パッパッパッパッン! ドゴォオオーーン!

 誰かがフィーネたちに問いかけようと口を開いた瞬間、リリスの狙撃が命中し多重結界が壊れる連続した破裂音が起きた。

 その後、警備兵の背後から激しい衝撃と轟音が襲うのだった。


『なっ、何が起きた!?』


 警備兵たちの大半は突然の衝撃で倒れてビックリ。慌てて背後を見ると魔王城の一部が瓦礫と化していたので二度ビックリした。


「グラビティフォール!!」


「サンダーボールテージ!!」


『えっ?……ぐはっ!?』


 そこをギンカの重力魔法で押さえ付けられ、マリーの雷魔法で感電した。不意を付いたこの攻撃により警備兵たちの大半は気を失った。


「ナンダナンダ!? 一体この騒ぎはなんなんだ!?」


『クエストです!』


「警備兵の防衛力を調べる模擬戦を行っています」


『……なんだ。クエストか』


 騒ぎに集まってきた野次馬たちはフィーネたちの持つ立て札とさっきまで喧嘩していたマリーとギンカが言うものだから完全に信じ込むのだった。




 ********




 砲撃が着弾する直前の魔王城の裏では、アイリスの眷属であるスライムたちによる壁が築かれていた。


「は〜い、皆並んで並んで♪ スライムウォール!!」


 ドゴォオオーーン!


 そこにアハトアハトから放たれた弾丸が貫通していった。その後、魔王城が瓦礫と化して降ってきた。


「弾丸は仕方ないけど瓦礫は逃しちゃダメだよ!」


 アイリスの命令に従いスライムたちは降って来た瓦礫を取り込んでは下へ取り込んでは下へとどんどん落していった。

 その結果、魔王城の背後にある街に被害が出る事は無かった。


「……結界のせいで内部が良く見えなかったけど今ならハッキリ見える! ユーリ……可愛そうに。魔力封じの鎖で拘束されてるんだね。これはヴィーちゃんにしっかりとお仕置きしないと♪」


「アイリスさん。ルートは決まりましたか?」


 アイリスの背後からイナホ、エロース、リリィ、シオン、ベルといった妖精の箱庭(フェアリーガーデン)の上位陣が武装を整えてやってきた。


「素直に端にある階段を登るルートが良いかな? 中央にあった階段は狙撃で崩壊したみたいだし」


「しかし、それだと人目に付くのでは? 魔王城の右には警備兵では有りませんがそれなりに居るのですよね?」


「仕方ないよ。壁を登るにしても階層がけっこう上だからね」


「私とアイリスちゃんで一人一人運ぶ?」


「いえ、ここはアイリスさんだけに先行して貰いましょう」


「良いの? イナホちゃん」


「ええ、私たちが階段を使えば……シュート!陽動になりますので」


 喋りながらイナホは瓦礫に潜み待ち伏せしていた人を攻撃した。警備兵のほとんどは倒したと言っても魔王に仕える者たちだ。非戦闘員とはいえ一筋縄で行く訳がない。


「……アイリス。早く行った方がいい。人が集まってきた」


「ゴメンね。先に行くよ。皆気を付けて!」


 避難していた非戦闘員が騒ぎを聞きつけてゾロゾロ出て来ていた。それを見たアイリスは直ぐに転移を行った。


「さて、……シオンさん。ベル先生。人だかりの中心を強行突破するで良いですか?」


「私は賛成。彼らは現状をまだ理解していない」


「その隙を突いての突破は有効でしょう。ついでに階段を登り次第落とせば完璧です」


「それじゃあ、私が落とすわね。私なら一番先に階段へ辿り着くから皆が通ったら落とすわ」


「エロースちゃんなら安心ね。皆、怪我したらお姉さんに言うのよ? 直ぐに癒やしてあげるからね」


「リリィさん。回復はお願いします。それじゃあ、行きます!」


 先陣を切ったイナホについて皆も駆け出した。

 その後、行かせまいと抵抗する者、状況を理解していない者、呆然としている者。彼女らは手当たり次第に彼らを問答無用で吹き飛ばしながら進むのだった。




 後に、その光景を見た魔王城勤めの書記官は日誌にこう記した。


「鬼っ!?」


 それはとても力強く書かれていたそうだ。

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