嫁が揃うと姦しい
伏魔殿に参加する為、アダムスと合流した俺たちは自己紹介も兼ねて軽い食事会を行う事にした。
豪勢な手作り料理に最高の酒を用意して和やかな一時になると思いきや……。
「ユーリの絶倫は他の男の人たちは目じゃないよ!」
「アダムスだって人並み以上の絶倫です!ちょっと早漏気味だけど私たち全員を相手に出来るんだからね!!」
「人数ならユーリさんはその倍を相手にしてますよ!」
「でも、顔は普通じゃない! アダムスの方がイケメンだわ!!」
「ユーリさんを馬鹿にしないで下さい!こう見えて戦闘になるとガラリと変わるんですから!!」
何故か始まった旦那自慢大会。俺とアダムスを比較して何処が良い何処が悪いと言い争いを始めたのだ。
その結果、飛び火による精神ダメージが俺たちに降り注ぐのは当然の結末だろう。
「ぐふっ!? アイリスたちは日常から俺の顔面偏差値が普通だと思ってたんだね。イケメンでないのは分かってるけど堂々と普通認定されるなんて……」
「早漏って……別に私は早漏じゃ……ないよね?」
あっ、アダムスが物理的に灰になりかけてる。吸血鬼ってマジで灰になれるんだね。知らなかったよ。
「アダムスの良い所はしっかりと甲斐性がある所もその1つよ!」
「甲斐性ならユーリさんだって有ります!冒険者や薬師で稼いでる上にセリシールの経営でボロ儲けしてるんですから!!」
「でも、格は無いでしょ、格は! アダムスはアルスマグナ魔法学院の創設者の一族で家長なのよ!」
「格ならユーリさんだって有ります〜だ! Sランク冒険者な上に"人類最強"の称号を得てますから!!」
「それはこの大陸だけのネタよね!?」
そういえばそんな称号を持ってたなぁ〜。言われないし誰も指摘しないから忘れてたわ〜。
「アダムスって、アルスマグナ魔法学校の創設者一族なの?」
「ああ、若かりし日の父が建てた。そういうユーリはネタにされる人類最強なのか?」
「ネタってお前……まぁ、事実だよ。竜王祭で優勝したからね」
「なるほど。なら、ダンジョン踏破するだけの実力は当たり前だった訳か」
友人とはいえお互いにまだまだ知らない事が多過ぎる。
でも、友人関係というのはそういうものなのだろうと思った。
「……所で、アイリスたちは何か変な物でも飲んだか? 何時もより感情的で喋りまくってるんだけど」
「それはうちも同じだな。例えば、ソアラ。さっき私を早…なんちゃらと言った子は本来かなり物静かな娘なのだが、今日はかなりぶっちゃけて喋っている」
「あ〜っ、なら何かしらの要因が有るな。食事と酒は俺が全部管理してたからそれ以外か。何か貰って飲食した?」
「そうだな……香りを嗅ぐと妙に落ち着くお茶を貰ったくらいか?」
「お茶?」
俺は談義を続けているアイリスたちのテーブルを見た。
彼女たちの手元には緑茶の様な薄い緑色をした液体の入ったカップが置かれていた。それを談義を続けながら彼女たちは飲んでいる。
「お茶って、今飲んでるお茶?」
「そうそうアレだ」
「俺の用意してないお茶なんだけど……鑑定」
名称:ぶっちゃけ茶
説明:定量を飲むと一時的だがほろ酔いの様に気分が軽くなり、思いのまま言葉を発したくなる。その際に色々と思っている事もぶちまけるので最高のリラックス効果が得られるだろう。ただし、それで発生した影響は自己責任でお願いします。
「よし、こういうのをしそうな人を問い詰めよう」
用意した人物はこうなる事を見越して配っているはずだから現状を楽しむ為に殆ど飲んでいない筈だ。
そして、予想通り当て嵌まる人物が2人いた。
「リリィは後で問い詰めるとして……リリンは有罪。素直に白状すれば減刑を認めよう?」
「いきなり罪人扱い!?」
「……やって無いとでも?」
逃げられない様に詰め寄って壁ドンしながら聞いてみた。
「はい!共犯でやりました!!」
その言葉を聞いてリリィに目を向けると彼女と直ぐに目が合って手を振ってきた。
しかもあっちは完全に愉快犯だな。お腹が痛そうに笑っていた。
「どうしてこれ作ったの? 市販じゃないよね?」
「え〜っと、リリィさんが自白剤を手に入れて、それを2人で改良して遊んでいたらコレが出来たもので試したくなったという……」
なんでまた自白剤を手に入れたのかとか、自白剤で遊ぶなよとか色々言いたくなった。
でも、いの一番に聞くべきなのは。
「効果時間と副作用は? 自白剤を改良したんでしょ?」
「効果は1杯毎に15分かな? 飲み続けてもあんまり伸びないよ。後、副作用は無いよ。自白剤のベースになった物を少し使っただけで別物だから」
「なるほど。なら安心……」
「でもね。面白い性質が有るんだよ♪」
リリンが凄く悪魔的な笑みを浮かべた瞬間嫌な予感がした。
何故なら彼女の目線が俺を通り越してテーブルにいるリリィを見ていたからだ。
「ユーリ君って見た目は幼いけど中身が大人な子が大好きなのよ。貴方たちの旦那様はどうなの?」
「なっ!?」
何故ここでリリィは俺の好みを暴露したんだ!?
「良いでしょ。答えて上げます。アダムスはおっぱい星人よ!」
「ぶっ!?」
隣のアダムスが吹いた。言われて見れば確かにアダムスの奥さんたちは平均してかなりデカい。
「あのお茶を飲むとね自白剤以上に聞かれた事には素直に話すだけでなく常に張り合おうとするの。つまり今の話題のままだと……」
俺とアダムスは急いでリリンからアイリスたちの方へと振り返った。
「ユーリはピーしたピーしながらピーするのが興奮するのよ!!」
「本人は頑なに否定するけどアダムスはピーでピーがピーしたがるの!」
「「ごふっ!?」」
規制される様な夜の事情を皆の前で暴露されてしまった。
「ユーリはわざわざ専用のポーションまで作って……」
やっ、止めてアイリス!俺のHPはもうゼロだよぉ〜っ!!
ちなみに隣のアダムスは完全に灰になってしまった。
それから30分後。
『あ〜〜っ………』
嫁たちはスッキリとした表情でだらけきっていた。
「なんかめっちゃ喋った……何を言ってたか覚えてないけどさ」
『うんうん』
アレだけ被害を俺たちに与えておいて覚えてないだと!?
「凄いでしょ。売れると思わない?」
「流石にこれは売ったらマズいだろう」
絶対問題になるのは目に見えていた。とりあえず封印する方向で進めさせて貰う。
「そろそろ伏魔殿が始まるから皆行かないか?」
「ごめ〜ん。何か力が抜けるから後で行くよ。先に行ってて」
「私も後から行きます」
その後も私も私もと続いたので一人で先に行くことになった。




