産まれてきた子と産後の食事
通常の妊娠だと出産までに十月十日という様にその前後で赤ちゃんは産まれてくるが、宝石族の場合は種族特有の宝石が生成される事も合って更に3ヶ月程伸びる様だ。
また、妊娠期間が長い事から赤ちゃんが成長して難産になる場合が多いと言われた。
そして、ガーネットは初産な事もあって当然難産となった。陣痛が始まってからというもの2日程が経過したがなかなか産まれてくる気配がしない。
俺とリリィは容態が急変しない様に交代制で休眠を取りながら彼女を見る事しか出来なかった。
「ユーリ君起きて!赤ちゃん産まれたわよ!!」
「本当か!」
タイミングが悪い事に俺の休憩中に産まれたらしい。俺はリリィの後を追って母子の居る部屋へと駆け込んだ。
「ユーリさん……」
疲労からぐったりしているガーネットの傍らには元気な赤ちゃんが寝かされていた。
その胸には燃えるような真紅の宝石を宿していた。
「この子がガーネットの……?」
「はい。ガーネット様の子で女の子でしたよ」
燃える様な真紅の宝石は子供の将来を暗示している気がした。
母親のガーネットに似てかなり情熱的な女性になるかもしれない。
「名前……お任せしても良いですか? 最初の子はユーリさんに付けて欲しいんです。以前仰った候補ならどれでも大丈夫です?」
「分かった。少し待ってくれ。今から選ぶ」
宝石族の名前には規則性がある。それは自身の宝石に似た鉱石から名前を付けるのだ。
分かりやすいのはガーネットだろう。彼女は胸にある紅い宝石からそう付けられた。
「よし決めた。この子の名前はルビィアだ。愛称で呼ぶならルビーかな?」
「ルビー……」
赤ちゃんは気に入ってくれたらしい。ガーネットが名前を呼ぶと赤ちゃんはキャッキャと笑っていた。
赤ちゃんが産まれてから数日後。
「赤ちゃんが産まれたから私たちの時みたいに出産祝いを用意したよ!」
「私も良いものが手に入ったのでお持ちしました」
「ふふふっ、エルフの力で作り上げた最高傑作を用意しましたよ」
「あっ、ありがとうございます」
皆ガーネットの為に色々と出産祝いを用意してくれた様だ。
「コレが私たちからだよ」
アイリスの合図で皆一斉に俺へと手渡した。
人数が人数なので俺がアイテムボックスで一時預かる事になったのだ。
「妙に軽くないか?」
包みを受け取った時に違和感を感じたがあまり追求せずにアイテムボックスへ収納した。
その結果分かった事はプレゼントの中身は護石。護石。護石。護石。………高級タオル。
「ほぼ護石しかねぇ……」
高級タオルを沢山用意したフィーネ以外は皆護石だったのだ。
護石とは、身代わりの護符の様なもので危険な事から持ち主の身を守ってくれるのだそうだ。だから、産まれたばかりの赤ちゃんに送るのが異世界の風習になっていると以前聞いた事がある。
なので、それを用意した理由は分からなくもない。
ただ、その効果の関係からか2つ装備出来ないという欠点が有るのだ。2つ装備するとお互いに干渉するのだとか。
フィーネの高級タオル。これだけがまともに使われる事になるのだろう。
「うわぁ〜……がっつり被ってる」
「ああ、控えとして殆どが倉庫行きだな」
「まぁ、仕方ないよね。話し合いをして無い訳だし」
次からはお互いに相談するようにして欲しい。
後、護石を交換する事が無いように祈りたい所だ。
産後の食事には妊娠中より気を使う必要はないがそれでも制限がある。なので、俺が直接用意する事にしていた。
「何か食べたいのは有るか?」
「すみません。疲労からか凄く眠いので手軽に食べられる物をお願いします」
「了解したよ」
という事で手軽に食べられるおにぎりを作る事にした。
おにぎりだと具材次第でバリエーションを増やせるし、調整が簡単なのだ。
産後にはタンパク質に鉄分、ビタミンC、カルシウム、葉酸などを取った方が良いそうだ。
また、脂は控えめでコーヒーやアルコールなどはNGとなっている。
「なので、おにぎりにしよう」
タンパク質として鳥のささみを刻み、ビタミンミネラル等として梅干しを細かく刻んだ物、更に食感と手軽さからキュウリを刻んで混ぜ込みおにぎりする。
彩りも有って綺麗だし食べ易い物が出来た。
「次はホウレン草の胡麻和え」
おにぎりだけでは虚しいので鉄やカルシウムが取れるホウレン草を使って途中で摘める物も用意する事にした。
ホウレン草は塩を入れた熱湯でサッと茹で鮮やかな緑色になったら冷水に取り、絞って水切りする。その後、食べ易い様にホウレン草を3cm幅くらいに切り分ける。
最後にすりごま、砂糖、醤油を混ぜ合わせ和え衣を作り加えると完成だ。
「よし出来た」
混ぜ込みおにぎりとホウレン草の胡麻和え。さらにスープとして味噌汁が有ったので持っていく。
味噌には栄養が多く含まれており、妊婦中にも産後にもとても良いのだ。ただし、塩分には気を付ける様にしたいのでケチャップを使う事をオススメする。そうすると味噌を減らしても美味しさを維持できるのだ。
その後、ガーネットに持って行った食事は産後で食欲が落ちているとはいえ美味しいと言ってしっかりと完食していた。この調子なら直ぐに元の調子に戻りそうだ。
そして、俺は彼女の食器を厨房に持って帰り、片付けをしながら次に何を作ろうかと主夫の様な悩みに笑ってしまうのだった。
今回は時系列の調整に手間取り遅くなりました。なるべく本来のスピードに戻りたいものです。




