マガツミとの決着
「マズいですね……」
イナホは焦っていた。目の前に広がるのは私へと近付けない様に必死に戦う冒険者たち。しかし、その数よりも敵の方が遥かに多いのだ。
この場の権限は結界を張るイナホに一任されていたので、撤退すべきか悩んでいたのである。
「神気持ちが増えてくれれば……」
この状況を覆す事が出来るのに……と思った時に空から声が聞えてきた。
「なら、私たちの出番だね!ユキちゃん!」
「はいなのです!ただの神気を宿した魔力結晶があるので魔力砲を撃って撃って撃ちまくるのです!!」
「えっ?」
そして、声の主たちはイナホの隣へと降り立った。その人たちを見てイナホは歓喜の声をあげる。
「フラン!ユキ!どうしてここに!?」
「ユーリお兄ちゃんが神気の防御結界なら直ぐに疫病になる事はないからって」
「イナホたちが一番危険になる可能がある。だから行ってくれと頼まれたのですよ」
「それに助っ人も連れて来たよ」
「正真正銘神気持ちなのです」
2人の後ろからやって来たのは綺麗な黒髪をした鬼人族の女性。
「彩音さん!」
「私、いつの間にか神気持ちとやらになってたみたいなんですよね? なので、お力になれますわ。それにご安心を。旦那様には報酬を確約して頂きましたので頑張りますよ」
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イナホの所に救援が来た頃、他の場所にも助っ人が来ていた。
「母さん。助けに来ましたよ」
「あら、皆揃って来てくれたのね」
リリィの所には彼女の娘たちがやって来た。
「神気が有るなら戦えるとユーリが迎えに来てくれました」
「まさかこんな体質になってるなんて気付きませんでしたよ」
「それじゃあ、敵は私たちが食い止めますので母さんは結界の維持に集中して下さい」
「ありがとう。頑張るからよろしくね」
そして、三姉妹は武器を手に掛け声を上げた。
「勝ってユーリ様の祝福を授かるぞ!」
「「おぉーーっ!」」
三姉妹の戦いは攻防一体の連携プレイ。その戦い様は凄まじく敵をどんどん駆逐していくのだった。
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一番のピンチはミズキたちの所だったのかもしれない。この場所が一番崩しやすいと考えたのか多くの禍罪の犬が襲撃していた。
「っ!? ミズキさん逃げて!!」
ミズキの護衛をしていたモカを避けて禍罪の犬がミズキに襲いかかる。ミズキは結界の役目の事を考えて直ぐに動け無かった。
「くっ!」
攻撃を受ける覚悟を決めたミズキ。そんな彼女の目の前に白いラミアが現れた。
「ハァアーーッ!」
ソフィアの槍がミズキを襲おうとした禍罪の犬を貫き四散させた。
「大丈夫ですか?」
「あっ、ありがとうございます。えっと……ソフィアさんでしたか? どうしてここに? ユーリさんとマガツミの方に回ったんじゃ……?」
「昨日の夜にユーリさんから護ってほしいとお願いされました。なので、私はここにいます」
「そうなんですか? 助かります」
「ここから盛り返しましょう。上にいる貴方たちのお仲間もやる気の様です」
ソフィアの言葉に上を見上げるミズキとモカ。その目には高速で降下する2人の姿が見えた。
「えっ?」
「アレは!?」
「「如月さんと卯月さん!」」
「「斬っ!!」」
降下により加速した2人は皆の間を縫う様に飛翔し、禍罪の犬を斬り裂いて行った。
「産後のストレス発散」
「付き合って貰いますよ」
そして、地上に降り立った2人は不敵な笑みを浮かべるのだった。
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インカムから流れる現状報告を聞いて心配ごとは無くなったのでマガツミへと集中する事にした。
「はぁああーーっ!!」
フラガラッハの伸びたブレードが視界に入る敵を全て一刀の元に斬り伏せた。どうやら強化された禍罪の犬にも問題なく効くらしい。
そして、それはマガツミもだろう。斬り捨てた右腕が散っていく。
マガツミに知性が有るのか分からないが、今回は危険だと判断したらしく全力で避けた。その結果、右腕のみしか破壊出来なかった。
「さぁ、マガツミさんよ。覚悟して貰おうか」
どうやら結界のおかげで再生も出来ないらしい。
俺は再び現れようとする禍罪の犬を皆に任せて駆け出した。
「グゥアァァーーッ!!」
マガツミはまるで来るなと言わんばかりに全身から鋭い棘を周囲に展開した。それが敵味方関係なく貫いて行った。
「空間制御!」
俺は魔法で自身を強化して棘を避けつつ少しずつマガツミを斬り刻んでいく。展開された棘の半数や俺を薙ぎ払いに来た左腕は既に無くなっていた。
「ハァアーーッ!」
とうとう俺のフラガラッハがマガツミを捉えてその胴体を真っ二つに斬り裂いた。
マガツミの下半身が霧散して、上半身が達磨の様に地面に落ちた。手足が無いのでもう動く事は出来ないだろう。
「狭間に帰れ。マガツミ!」
渾身の兜割りが無抵抗なマガツミを両断した。
そして、響き渡る"ピキッピキッピキッン!"という砕け散る音。
「勝っ……嘘ぉおおーーっ!」
それは勝利を告げる音で有り、俺のフラガラッハが砕けた音だった。
各地に存在していた禍罪の犬が全て消え去った。それと同時に紅蔓病患者の完治が報告されてきた。
それは確実にマガツミを討伐出来た事を示していた。これをもって疫病案件は終息したと見て間違いないだろう。
「我々の勝利だぁああーーっ!!」
『おおぉぉーーっ!』
街の人たちは凱旋した討伐隊を大いに称えてくれた。参加した仲間たちには良い笑顔が浮かんでいた。
しかし、彼らとはうって変わって俺はアイリスたちに慰められていた。
「俺のフラガラッハが……今までコイツのおかけでここまで来れたのに……」
相棒の剣が折れた事がかなりショックだった。
頭に浮かぶのはフラガラッハとの思い出。鍬にしたり、ハサミにしたり、地面を耕す農作器具にしたり、鍋にしたり……剣の思い出少なくないか?
聖錬銃を作ってからは尚更だが、ここぞという時はフラガラッハを頼りにしていたのだ。
帰り際に同情したフォレストの長が新しい剣をくれたが、我が家に帰るまでずっと落ち込んでいたのだった。
最近投稿が安定しなくてすみません。お手数おかけしました。
今回の話で疫病回は終了です。次回からは日常編に戻ります。




