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決戦前夜

「あ〜っ、死ぬかと思った……」


 俺のフラガラッハで倒せ無かったマガツミ。あのまま戦っても勝てない事が分かったので特性や戦闘パターンなどを調べられるだけ調べて早々に離脱した。


「ユーリ!」


『ユーリさん!』


「うおっ!?」


 帰って来るのに時間をかけ過ぎたせいか皆を心配させてしまったらしい。俺の姿を見るなり飛び付いてきた。

 嫁たちの柔らかさに包まれて、さっきまでの殺るか殺られるかで凝り固まった緊張が解けていくのを感じるのだった。


「ユーリ、マガツミはっ!? 倒したの?」


「いや、倒せてない。一時しのぎで結界に閉じ込めてきた。ガーネットたちがくれた宝石のおかげだね。とても強固な結界が張れたよ。

 でも、それも保って1日かな? アイツの魔力量おかしいっての……」


 ガーネットたちの宝石に蓄えられていた魔力が全部で1500人分程で、補強に使った俺たちの放出魔力で精製した魔力結晶が100人分。

 合計1600人分もの魔力を混ぜて作った神気による束縛結界。それだというのにマガツミを完全に抑える事は出来ず軋みを上げていた。


「続きは王城で話すからフィロに言って関係者を集めてくれ。その間に俺は……」


「ユーリは?」


「寝る。かなり疲れた。集まったら起こして……」


「ちょっ、ユーリ!? 寝るならベットで寝て!?」


 ベットまで行ける気がしなかったのでアイリスの胸で寝ることにした。後は任せたよ。





 それから3時間程してアイリスの膝の上で目を覚ました。


「完・全・復・活!」


「それは良かった。膝枕したかいがあるよ」


 どうやらずっとしていてくれたらしい。そのかいあってか短時間とはいえぐっすりと眠れて気分が良い。


「会議室に関係者が集まり出したよ」


「了解。直ぐに行く」


 部屋に入ると見知った顔がちらほら存在していた。

 そんな中、俺はとある天使の元へと向かい声を掛けた。


「協力感謝します。トリシャさん」


 トリシャさんは元エロースの上司で天使の軍団の指揮官としてやって来てくれた。

 現在、彼女は軍団を小人数のチームに分けて各町の禍罪の犬討伐にあたらせている。


「私たちの力が有用なので仕方有りません。それに放っておけば何れ他の大陸にまで伝播するでしょうし」


「ああ、その前に食い止められそうで良かったよ」


 彼女たちと冒険者の活躍で大陸全土を襲っていた疫病も残りは2割程となっている。


「……それで報酬なんだけど金銭はフォレストの王が出してくれるみたいなんだよね。だから、俺からはまた食事とか娯楽とかを提供しようと思うだけどなんでも好きな事を頼んで良いよ」


「なんでも……」


 トリシャさんは報酬に夢を膨らませたのか無言だが翼が嬉しそうにパタパタしていた。その様子にギャップが有って可愛いと思う。


「むむっ……」


「どうした、エロース?」


 何やらエロースはトリシャを見て眉間に皺を寄せていた。


「今、私のアイデンティティの危機を感じました」


「エロースのアイデンティティって何?」


「純粋無垢な所です!」


『…………』


「何で皆目を逸らすのっ!?」


 だって、エロース程業が深くて穢れきってる娘はいないだろう。そもそも美少女に触れると出血多量とかヤバいよね?


「とりあえず、エロースは自分の胸に手を当てて聞いてみようね」


「………ハッ! 私無垢じゃない!?」


 言われるままに手を当てたエロースも悟った様だ。


「穢れきってた! 祝福を付与させる為にユーリ君からめちゃくちゃにされてユーリ君色に染められたんだった!」


「うぉい!? 言い方!?」


 それではまるで俺が無理やり襲った様に聞こえるじゃないか!

 案の定周囲にいた事情を知らない女性たちからは冷ややかな目を向けられていた。


「……あ〜っ、コッホン。そろそろ始めてもいいだろうか?」


「すっ、すみません。何時でも始めて下さい」


 参加者の中でもっと威厳の有る男性フォレストの長からの声で俺は我に返った。どうやらイチャイチャしている間に人数が揃った様だ。


「それでは始める。ユリシーズ殿。貴殿から元凶を討つ作戦があると聞いたのだが?」


「はい。それについて話す前にマガツミが何なのかを知って下さい」


 俺はエルメラさんの話や戦って分かった事を皆に伝えた。

 異常なまでの魔力とそれによる異常な回復力を持ち合わせていること。

 また、戦っている最中に禍罪の犬がマガツミに魔力を渡した事などを話した。


「マガツミの身体は魔力の塊そのもの。いくら傷付けても直ぐに再生してしまいます。しかもその魔力は禍罪の犬が集めたものの様です」


 例えるなら蜂だ。

 マガツミという名の女王に兵隊たちが魔力という名の蜜を捧げる。

 そして、その蜜は新しい兵隊を生み出すのに使われているのだろう。


「おそらく紅蔓病は魔力を吸い上げる為に禍罪の犬が施す術式の様なものなのでしょう」


「触れずに感染したものが居るが?」


「それは恐らく禍罪の犬が霊脈を通る事で残滓が残りそれによる感染かと?」


 霊脈から感染した者の進行が遅いのはそれが理由だろう。


「だから、倒す為には魔力を供給はさせないようにする必要があるし、存在を固定する必要がある。その為にあの場所へ繋ぎ止める策を用意しました。なので、皆には協力をお願いします」







 数時間程話して会議は終了した。議論の結果、俺の策が採用されたので皆は直ぐ様行動を開始した。

 俺の方も一通り準備を終えた所である人を訪ねる事にした。


「おっ、いたいた。探したよソフィアさん」


「げっ、ハーレム王……」


 俺の上に落ちてきたラミア。名前はソフィアと言うらしい。

 彼女は俺を見るなり凄く嫌そう顔をしていた。しかも、ジリジリと少しずつ遠ざかっていく。


「そんな嫌がらなくても……」


 露骨に嫌がられているので結構ダメージが来ていた。


「貴方と喋ると孕むと聞いたもので」


「そんな簡単に孕むかい!」


「ですが、孕ませはするんですよね。会議に出席した者から天使を犯して孕ませたと聞きましたよ」


 エロース!? お前さんの冗談で大変な事になってるよ!!


「犯してません。普通に夫婦で夜の営みをした結果です」


「………」


 彼女の無言の圧力がかなり凄い。これがホントの蛇に睨まれた蛙の気分なのだろう。


「……まぁ、あれだけ多くを集めたハーレムなら一人二人孕んでも仕方ないですね。ラミアでも良くある話ですし」


 ラミアはハーレムで有名な種族だ。そこら辺は理解しているのだろう。


「それよりわざわざ私を訪ねてきた理由はなんですか? 私は神気を持ってるせいで明日の準備が忙しいんですけど」


「その事なんだけど俺からお願いがあって配置を弄らせてもらったんだ」


「はい? 聞いて無いんですけど?」


「多分、後でヤクシニーさんから正式にあるよ。それでお願いなんだけど……」


 俺は周囲には内密で彼女にあるお願いをした。それを聞いた彼女は。


「そういう事なら良いですよ。任せて下さい」


 あっさりと了承してくれた。俺は彼女に感謝を伝えて明日の為の最後の仕上げに走る事にした。


 翌日。皆が緊張する中、決戦の日はゆっくりと始まった。

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