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沈静化と再会

 レセプトを旅立ってから1週間後。首都である『ルボアルーツ』に辿り着き真っ先に冒険者ギルドを訪れた。

 冒険者ギルドは木造で和国のギルドとエルフの家を合わせた様な造りになっていた。

 また、多くの冒険者が病に倒れた為なのか、喧騒とは無縁の静かさを保っていた。


「ギルドマスターは居ますか?」


 俺たちは室内に入って直ぐに受付嬢の所へと向かった。

 途中冒険者が何人か居たので邪魔されるかと思ったが、俺と目が合った瞬間に全力で逸らされた。俺が何かしてしまっただろうか?

 ギルドマスターへの会見を申請したら直ぐに執り行われる事になったのでギルドの来賓室に通された。





 その頃、ユーリたちが去ったのを確認した冒険者たちは自分の手足を擦っていた。


「なんであの化け物がうちに来てるんだよっ!?」


「竜王国から疫病対策で人が来るって聞いたぞ。まさかそれが奴だとは……完治したのに足が痛い……」


「疫病対策って、アイツは破壊専門だろっ!? 俺はアイツに総会で手足を折られたんだぞっ!?」


「それを言うなら俺は足を折られてるって。多分治療に自信が有るから躊躇なく手足を折れるんじゃないか?」


「……とりあえず、他の連中が喧嘩売らない様に注意しておこう。俺たちの二の舞になりたいなら別だけど」


「そうだな。こっちに飛び火されたらたまったものじゃないし注意しておこう……」


 ユーリの知らない所で不可侵の戦闘禁止が結ばれた。これにより首都でユーリが冒険者から絡まれる事は無くなったのだった。





 来賓室で待っているとギルドマスターが急いでやって来た。肩で息をしてる辺り相当急いで来たのだろう。


「よっ、ようこそ。うちのギルド来てくれたのか。かっ、歓迎する」


 ギルドマスターは緊張しているのか凄くたどたどしかった。


「お願いした件はどうなっていますか?」


「ああ、結果は順調に出ている。移動には竜種が協力してくれる事もあって急速に沈静化しているよ」


 レセプトで冒険者ギルドに禍罪の犬捜索を依頼した。

 更にルイさんからお借りした天使の部隊が禍罪の犬討伐と治療を出来るようにサポートもお願いしたのだ。


「君の予想も当たっていた。やはり例の禍罪の犬は霊脈上に出現していた様だ」


 禍罪の犬は突然現れた様に見えていたが、実は街を流れる最も太い霊脈上に現れていたのだ。街の主要施設はそれの上に建てられているので星樹殿や町議会に現れたという訳だ。


「でも、これは一時しのぎなんですよね。早く元凶を見つけないと……」


「分かっている。現在神獣の血を引く獣人を中心に調査団を結成してグリーフの森の捜索に当たらせている。最低でも行方不明者の足取りは掴めるかもしれない」


 グリーフの森は今回の疫病が確認された最初の地点だ。

 リリィの師匠に当たる方もこの森へ調査に出掛けてから帰って来ていない。元凶がいる可能性は大いに有り得る。


「明日、俺たちも入りますがそれまでの間定期連絡は密にお願いします。状況が急変しないとも限りませんので」


「他の街と同様に異変があったら知らせよう」


 その後いくつかの情報交換と連携などを話し合って冒険者ギルドを出た。

 そして、その足で王城を目指した。そこにベティがいるのだ。






「よう。久しぶり。元気してたか?」


「見ての通り……元気じゃないです……」


 王城にいたベティは紅蔓病に感染しベットに寝かされていた。

 意識は有る様だが、身体は動かせないらしく目線だけをこちらに向けていた。


「社交辞令だよ。現状は俺が一番分かってるし。首都にいるだろう禍罪の犬が速く討伐されると良いな」


「ええ、本当に……」


「しかし、まさか帰って来ないと思ったら倒れてるとはな」


「私も負けると思いませんでしたから……」


 ベティは首都を襲った禍罪の犬と戦ったらしい。

 しかし、竜種故にくる驕りと神気が無い事から惨敗して禍罪の犬にも逃げられたそうだ。

 しかもフィロと同様に重度の紅蔓病が発病したので動けなくなってしまったらしい。


「これやるよ。持っておけば今より悪化することはないから」


 俺はアイテムボックスから取り出したペンダントをベティの上に置いた。メインの鉱石が照明の光に照らされて輝いていた。


「これは……?」


「うちで精製した魔力結晶を加工したものだよ。神気を含んでいるから病を緩和出来る」


 それと同時に武器への転用も可能だった。

 各冒険者の武器に装備させて使うと禍罪の犬と戦う事も出来る。そのかいもあっての沈静化なのだ。


「少し気分が良くなりました。ありがとうございます……」


「それじゃあ、帰るわ。明日の打ち合わせがあるし。お大事に」


「ええ、気をつけて下さい」





 ベティと別れて部屋に戻った後、俺たちの元へリリィの弟弟子に当たるヨミという女性が訪ねてきた。

 俺は彼女を見て驚きと興奮に包まれた。何故なら彼女は異世界で定番のラミアだったからだ。


「リリアーヌ様。こちらが師匠が調査に向かった場所の予想です」


「ありがとう。必ず師匠は見つけ出して見せるわ。私には優秀な旦那様が付いているもの。ねっ、ユーリ君。ユーリ君?」


「……ユリシーズ様? その様に凝視されますと恥ずかしいです。私に何かおかしな点でもございましたか?」


 2人の声にヨミさんを観察していた俺は我に返った。ついつい見過ぎしまった様だ。


「あっ、ごめん。つい初めて会う種族だったから気になって」


「あっ、そっか。ラミア族って、多種族国家の竜王国でも、まず見掛けないもんね」


 人の出入りが激しい港では見る事もあるらしいが、俺は出会えたことはない。


「……すみません。お嫌でしたか? 外国から来られた方の中には嫌悪を抱かれる方もいらっしゃるので……」


「いや、俺は大丈夫。嫌悪感は無いよ。むしろ色々と触って調べたいくらいだ」


 そもそも爬虫類は嫌いじゃない。寧ろ好印象でさえある。

 実は子供の頃はトカゲを捕まえてペットにした事もあるのだ。

 その時に知った事だが、爬虫類の身体は硬そうに見えて思いの外プニプニとして柔らかいのだ。


「えっ?」


 ヨミさんは俺の言葉にさっと胸を隠した。

 どうやら人との共通部分である胸に興味が有ると思われたらしい。


「いや、尻尾の方だからね。そういうのは十分間に合ってます」


 大っきいから小さいまで各種ジャンルが揃っていますよ。

 お陰様で女性への耐性はしっかり付きましたとも。


「なんでしょう……? 女として負けた気がします」


 その後、ヨミさんは帰るまで何とも言えない複雑そうな顔をしていた。

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[気になる点] 誤字報告 『「……とりあえず、他の連中が喧嘩売らない様に注意しておこう。俺たちの似の前になりたいなら別だけど」』 にて、『俺たちの二の舞に』が『俺たちの似の前に』になっていますので、ご…
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