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トーマスの記録

 私は、トーマス・ビルトン。


 ベルトリンデ王国の騎士団団長を務めている。


 国王より今年の竜王祭に参加する任を与えられた。


 騎士団は、実力がモノをいう。


 この国では、一番強いという自負すらある。


 私は、さっそく竜王祭の開催国に向かった。


 道中、モンスターに襲われるものの実力でねじ伏せてやって来た。


 竜王祭本戦第一試合。


 クジの結果、初回から戦う事になった。


 この試合は、勝ち抜き戦の為、相手の手段が見れる後半が有利になる。


 対戦者は、ラグス王国騎士団団長マークス。


 昔、模擬試合を行った事がある。


 結果は、惨敗。


 今は昔より強くなっていると信じて剣を取った。


 ……勝てなかった。


 彼の方が一枚上手だ。攻撃のスキを付かれてやられた。


 私は、敗者となった。


 だが、希望はある。


 この試合は、勝ち抜き戦。


 多く勝ち抜いたものが勝者となる。


 しかし、敗者にも戦った相手でなければ挑む権利がある。


 私は、試合を見ながら勝つ為の情報収集を始めた。


 第二試合。


 開始と同時にマークスが負けた。


 名乗りを上げようとした所を一撃だった。


 相手は、ユーリ・シズ。


 一般枠だったな。


 開始していたから仕方ないが、礼儀がなっていない。


 第三試合。


 傭兵とユーリ。これもユーリの勝利。


 煙でよく見えなかった。


 晴れた後には、倒れ伏した傭兵がいた。


 第四試合。


 彼は、マークスの友人だったな。以前、紹介された事がある。


 彼の大剣は、魔剣だ。重さで斬る。


 決着は、魔法で付いた。


 ユーリが一文字を書くと現象が起こる。


 なんだ、あの魔法?


古代文字(ルーン)だと!?」


 近くで観戦していた宮廷魔導師が驚愕の声を上げていた。


 古い絵本に出てくる神代の魔法だ。


 という事は、彼は古代(エンシェント)呪文師(スペラー)か。


 第五試合。


 ユーリの対戦者は、なんとあの巨姫カトレア。


 数少ないSランク冒険者だ。


 魔法無効化能力の事でも有名だ。


 Eランクの彼では無謀だと思ったものだ。


 しかし、結果はユーリの勝利。


 カトレアは、気絶していた。何をやったのかは分からない。


 逃げ続けながらいくつかルーンを使っていたからそれが原因か?


 第六試合。


 剣の柄で殴り、ユーリの勝利。


 第七試合。


 騎士が自爆してユーリの勝利。


 ランスの突撃に合わせて、ユーリが剣を置いたら、自爆した。


 第八試合。


 これは激戦と称して構わないだろう。


 何故ならここまでほぼ無傷だったユーリが、初めて怪我らしい怪我をしたのだ。


 対戦相手は、傭兵の男だった。


 初回から大量の煙玉。ステージ上を煙が充満する。


 2人の姿は、薄っすらとしか見えなかった。


 ユーリが転がる様に回避を取る。


 それだけで相手の腕前が相当な事が分かる。


 響き渡るのは、水弾の音と弓の音。


 遠距離戦かと思いきや接近戦に切り替わった。


 放電のあと煙が晴れる。


 傭兵の降参宣言で試合終了。


 お互いに称賛しあっていた。


 周りからも拍手が巻き起こる。


 私も拍手をしていた。


 第九試合。


 宮廷魔導師の降参により終了。


 魔法のエリートであるが故に、魔法戦では勝ち目が無いと判断したのだろう。


 やはり、接近戦か?


 第十試合。


 最悪の相手が出て来た。


 悪逆ケディ。


 クズノズク王国筆頭騎士の地位にいる男だ。


 その上、貴族な事もあり、やりたい放題である。


 女性への強姦暴行、殺人、詐欺、奴隷売買など聞けば聞く程にクズだと思う。


 そして、それを容認する国王もまたクズなのである。


 先王は、それはそれは立派な方であった。


 しかし、現王になってからは酷いモノだ。


 他国への戦争、国際法で禁止された奴隷売買、民への重い徴収など。


 国が廃れる一方なのだが、他国のせいだと戦争する。


 現在も我が国へと攻めている。


 しかし、戦争するには金がいる。


 戦争の為に民から徴収。


 侵攻するも兵糧が賄えなくて撤退を行う。


 再び、戦争の為に民から徴収。


 負の連鎖は繰り返される。


 今回、フル装備で現れたのは武力のアピールに違いない。


 その鎧は、ただの剣なら刃が通らず、魔法もあまり効かない。


 武器は、魔剣と魔法大盾。


 どれもこれもが国宝級。無類の強さを持っている。


 ここまで戦い疲労しているユーリにはキツいだろう。


 棄権しても誰も咎めやしない。


 だが、彼は挑発を聞き、受ける様だ。


 最初から剣を抜くとまで宣言する。


 という事は、魔法がメインではなく、剣がメインなのか!


 ユーリが剣を抜くのは、この試合が初めてだ。


 それほど迄に彼を怒らせた様だ。


 そして、試合は一方的な蹂躙だった。


 開始と同時に右腕が飛ぶ。ケディの腕だ。剣も一緒に切られていた。


「!?」


 誰もがその光景に驚愕した。


 今度は、剣を十字に振るう。


 大盾は、バターの様に切り裂かれた。


 彼にとって国宝級の装備はその程度なのだろう。躊躇がない。


 左足が飛んだ。


 さすがのケディも命乞いをする。


 奴隷契約の書類を出した。


 それがユーリをさらに激怒させた。


 残りの手足は斬り落とされ、契約書は燃える。


「なにっ!?」


 契約書は、裂けても効果を発揮するが、燃えた場合は違う。


 それは、契約が破棄された事に他ならないからだ。


 しかも、全ての奴隷の契約書って言っていなかったか?


 だから私は、急いで帰国する。試合なんてどうでもいい。


 この結果を国王に伝える事が重要だ。


 奴は、奴隷売買を一手に引き受けていたから相当数の奴隷が存在する。


 上手く行けば、ケディの奴隷たちと共闘出来るかもしれないと考えた。


 あの国を落としても得られるものはないが、今後の我が国への被害は無くせるだろう。


 3ヶ月後、奴隷による暴動とベルトリンデ王国の侵略によりクズノズク王国は崩壊し、領土は併合された。

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