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変わった日常

 教室に戻ると既にマロンが帰って来ていた。


「ライム!体調は良いの!? 授業休んだって聞いたけど!?」


「うん。もう平気だよ。今から走っても大丈夫なくらいに」


 リリィさんの治療のお陰で傷はしっかりと癒えていた。むしろ以前より調子が良いくらいだ。

 ボクはマロンから視線を逸し怪我を負わせた子達の方を見た。彼らは目が合うと罰が悪そうな顔をして背けた。

 シズさんたちに犯人を言っていないが後で怒られると思ったのかもしれない。


「良かった。なら、一緒にご飯食べよう」


「そうだね。あっ、マロンにお願いが有るんだけど」


「うん。何かな?」


「あのね。実は……」


 ボクはポケットの上からシズさんに貰ったトランプを握り締めてマロンにあるお願いした。

 彼女はその話を聞くと笑顔になりボクの手を握り締めた。


「喜んで協力するよ!だって、いつも一人でいるライムが心配だったんだもん!」


 どうやらマロンに心配をかけていた様だ。


「ありがとう」


「それじゃあ、ご飯を食べたら直ぐに行動だね?」


「うん。心が揺らぐ前に行動したい」


「分かった。ライムの為にも頑張るね」


 その後、2人で学院の食堂へと行きご飯を食べた。いつも通り頼んだ日替わり定食はいつもより美味しかった。ボクの気持ちが前向きになったからかもしれない。





 その頃、ご飯を食べるライムたちとは別のテーブルでは。


「おい、聞いたか? 今日の日替わりは違うシェフが作ったんだってよ!」


「おっ、通りでいつもより美味しい訳だ」


「でも、今厨房に居るのはシェフと……清掃中の用務員?だけだろ?」


「ああ、だから、生徒には見えない幻のシェフが居るって話だぜ」


「実は用務員が作ってたりしてな?」


「あははっ、そんなわけ無いだろ?だってどう見てもただの用務員じゃん!」


「そうだよな。それにしても美味え〜」


 といった会話がされていたのだが、ライムたちには聞こえることは無かった。






 昼食を食べて元気が出たボクはマロンより少し早く教室へと帰った。教室の生徒たちは和気あいあいと昼食後の休みを満喫していた。

 そんな中、ボクは勇気を出してあるグループへと声をかけた。


「ねぇ、一緒にトランプしない?」


「「「えっ!?」」」


 彼らは遊びに誘うと凄く驚いた顔をしてボクを見た。なんせ彼らは先程ボクをイジメた人たちだからだ。

 それなのにイジメた子から遊びに誘われれば驚くのは無理もないだろう。


「貴方たち。今からトランプするの? 私も混ぜて♪」


 そこへマロンが参加する。これは事前にお願いしておいた事だ。

 彼女が参加すれば断る事は出来ないだろうと思ったのだ。


「ダメかな?」


「うん?やらないの?」


「「「………」」」


 イジメっ子たちは凄く困った顔をして悩んでいた。


「ライム。やりたくないみたいだから違う人を誘おうよ」


「うん。そうだね。違う人を誘うーー」


「やるやる!俺はやるよ!」


「「えっ?」」


 悩んだ末に1人参加する事を決めたみたいだ。


「俺はやるよ。ちょうどトランプをやりたかったしな」


「なっ、なら、俺も参加する!マロンちゃんと遊ぶ機会なんてそうそうないしな」


「たっ、確かに!俺もやるよ!」


 マロン効果は絶大の様だ。3人共、参加してくれる事になった。


「もう!ライムとも仲良くしないとダメだよ!」


「「「安心してくれ。俺たちは友達だ」」」


 なんかいきなり友達が出来た。想像していた友達と少し違う気がする。


「じゃあ、配るよ」


 何をするか話し合いボクがカードを配る。するとそれを傍観していたクラスメイトが声を上げた。


「それセリシールの限定トランプじゃん!?」


『ええっ!?』


「セリシール?」


 初めて聞く単語に混乱しているとマロンが今竜王国で流行りの店の名前だと教えてくれた。何故かクレープが最高とも付け加えて。

 そして、この話題は他のクラスメイトたちにも伝わり集まってきた。


「ちょっと見せてくれないか!?」


「うっ、うん。でも、大切な貰い物だから優しくね?」


「分かってる!」


 ボクはクラスメイトの圧力に負けてシズさんに貰ったトランプを渡した。


「やっぱり本物だ!裏面を傾けるとセリシールのマークが浮き上がる!」


 ボクも真似てカードの裏面を傾けると花のマークが出てきた。どうやらカードの裏面に細工が施されていたらしい。


「どうやって入手したんだ!? これは貴族でも手に入れ難い商品なのに!?」


「えっと、シ……友達に貰った」


 シズさんに貰ったと言おうとしたが、それだと迷惑が掛かりそうな気がして止めた。

 でも、だからって友達は無いかもしれないと自己嫌悪する。まぁ、シズさんなら笑って歓迎してくれそうな気がするけど。


「それじゃあ、ゲームを始めよう」


「なぁ、俺も混ぜてくれよ!セリシールのトランプで遊べるなんて滅多にないからさ」


「えっ?」


「わっ、私もお願い!ダメかな?」


「いっ、良いけど……」


 そこからは大所帯でゲームをする事になった。予想以上に人が集まったけど凄く面白かった。

 そして、その日を境にボクの日常は変わった。


「ライム。おはよう!」


「おはよう」


 朝教室に入るとマロン以外からも挨拶されるようになった。


「ライム。後で勉強教えてくれないか?今度のテストやばいんだよ!」


「うん、良いよ」


「俺も頼む!今度の赤点取ったらマズいんだ!」


 休み時間には勉強を教えてくれと慕って来る子も増えた。


「ライム。何処に行くの?」


「シズさんの所」


「あっ、私も行く!」


 そして、一番変わったのはコレだろう。


「シズさん!」


「おっ、また遊びに来たのか? って、多いな」


「ごめんなさい。ついて来ちゃった」


 それは友達たちを連れてシズさんの所へ遊びに行く事だ。なんせシズさんは学生棟の空き部屋を一人で使っているし、アイテムボックスの中には多くのゲームを入れているからだ。


「俺はライムの最初の友達だからな。鼻が高いよ。だけど悪い。今から仕事なんだわ。直ぐに終わるから皆と遊んで待っててくれ」


 シズさんは何個かゲームを取り出して渡しきた。


「あっ、だったら仕事手伝うよ。いつも遊ばせて貰ってるし」


「確かにそうだね。私も手伝う。シズさんもたまには楽したら?」


 ボクがシズさんの手伝いをすると言うとマロンたちも手伝うと言い出した。


「あははっ、嬉しいね。なら、袋持ちを頼もうかな?」


『了解』


 そこから清掃に出かけたボクたちはシズさんの凄さを知る事になった。

子供の頃、レアカードとかを持っていくとクラスの人気者になれますよね。あんな感じをキッカケとして取り入れてみました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一般人からしてみたら絶対手に入らないようなレアカードだと嫉妬する気も起きなくて 「そんなカード持ってんのかよ!すげーな」 ってなるけど ちょっとお金出せば買えるレアカードをやたらと見せびらか…
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