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竜王祭 本戦。俺の第7〜10試合

 第七試合。


 対戦者は、傭兵。


 先のガラドを思い出す。


 トリッキーな手を使う事を想定して対処しよう。


「俺は、ヨーゼフ。シュヴァルツ家に仕える傭兵だ。君の様な強者と戦える事を誇りに思うよ」


「どうも。こっちもやっと調子が乗ってきた所なのでお相手を頼みます」


「それは怖いな。後の事は考えず全力でいった方が良さそうだ」


「試合開始!」


 ぼふっ!


 大量の煙玉による目隠し。


 俺の所ではなく、自分の所で使った。


 魔力感知。


 これで相手の位置が見えーー。


「ーーっ!?」


 横に転がりながら避ける。


 元いた場所に矢が刺さっている。


 魔力感知で把握したら、寸前まで弓矢が迫っていた。


「おっ!?」


 間を置かず、再び放たれた。


 問題は、この状況の中での正確な射撃。


 俺と同じ魔力感知によるものか?


 足が地面に刺さった矢に触れた。


 ボン!


「くっ!?」


 足に痛みが走る。


 目を向けると焼け爛れていた。


 放たれた矢を確認する。


 他の矢にも罠が仕掛けられているのが確認出来た。


 出し惜しみしないというのはホントらしい。


 どうする?風で払うか?


 いや、正確な射撃が変わるとは限らない。寧ろ更に良くなりそうだ。


 距離を詰めるか?または、遠距離に遠距離で対抗するか?


 いや、どちらも何かしらの対抗手段が有りそうだ。


 ……順番に手段を確認しよう。


 魔力感知の確認。空間に(ケイ)を放り込む。


「!?」


 避けた……魔力感知で見えているな。


 魔力感知なら空間接続の際の歪みを確認出来る。


 これなら遠距離攻撃も感知されて避けられるだろう。


 接近戦?


 いや、弓を使うからといって接近戦が苦手とは限らない。


 弓が主体でもトラップで補えるしな。


「やべぇ、楽しくなってきた!」


 ピンチなんだが、ワザを競うのが楽しい。


 どうする?どうする?どうする?


 思考を止めるな!考えろ!


「よし!(ラング)!」


 ここから水弾を撃ちまくった。


 空間魔法も併用して撃つそれを相手は避け続ける。


「!?」


 間で弓矢が飛んで来るので避ける。


 だが、水弾を30発程撃って準備が整った。


「行くぞ!」


 剣を出して矢を弾きつつ、相手へ向かい駆け出した。


「来たか!」


「当然!!」


 ケムリの中でも目視出来る距離まで近付けた。


「ケイ!」+『(イース)』。


「食らわーーなっ!?」


 火を避けたヨーゼフの足が凍り付いた。


「ラング!」+『(ハガル)』。


 仕方なく、咄嗟に障壁を張って水弾を防いだ様だ。


 しかし、その足元で雷撃が発生し通電する。


「くうっ!?」


 通電した事により一時的にスタンした。


 そのスキを逃すつもりはない!


「降参して下さい」


「負けたよ。降参だ」


 首には剣を押し当てている。


「助かります」


 剣を離すとヨーゼフが風魔法で煙を払う。


「審判、降参だ」


「宣言により試合終了!」


「降参したから教えてくれないか?どうやって魔力感知から逃れたのか?」


「簡単です。ルーンは、文字に魔力を流す事で発動します。文字だけなら感知に引っ掛からない」


「文字なんていつの間に……」


「水弾の連射」


 抉れた地面に目を向ける。


「なるほどね。勉強になったよ。また、何処かで」


「こちらこそ、楽しめました。次は共闘したいですね。後、次はトラップに気を付けますね」


 足のケガを見せて笑った後、握手して別れた。




 第八試合。


 対戦者、宮廷魔導師。


「棄権します」


「はぁ?」


古代(エンシェント)呪文師(スペラー)相手に勝てる気がしません」


「棄権により試合終了!」


 神代の魔法。これは論文の書きがいがある。


 とか、ブツブツ文句を言いながら去って行った。




 第九試合。


 対戦者、騎士。


 大盾と長剣を携えた重騎士だった。


「ここで会ったが百年目!今度はズルい手を使わせねぇぞ!監視の目もあるからな!!」


「誰が、ズル?」


 身に覚えが無いのですが……。


「忘れたとは言わせねぇ!市場でこの俺!ケディ様をよくもコケにしてくれたな!」


 市場?……あっ、あぁ、思い出した。


「アイリスに絡んでた、リーダー格のアホか!」


 立派な服だったから身分が良いと思ったら騎士だったのか!


「アホだと!?貴様、下民の分際で!」


 この感じ、貴族かな?


「まぁ、人妻に手を出そうとしたお前が悪い」


「舐めた真似を……。なら、貴様を殺してそのアイリスという妻を陵辱してやろう!」


「はぁ?」


 声が低くなった。一気に血が冷めていく気がする。


 アイリスをなんだって?


「なかなかの容姿であったからな。貴族であり、騎士団筆頭の俺をコケにしたのだから当然であろう?」


「俺を殺す?そんな装備で?」


「ふん!無知めっ!この鎧は、陛下より託されし国宝。そして、この剣と盾もまた国宝のモノだ!それからーー」


「もう黙れよ」


 身に着けている国宝の武具に加え、Sランク級の装備を自慢する奴にイラッときた。


 それ以前に、コイツの上から目線にイライラする。昔の糞上司を思い出した。


 しかも、アイリスに手を出すだと?


「手加減せずに剣を抜いてやってやる。ルール上、泣いて謝っても宣言するまで止まらないからな」


「それは、俺のセリフだ。何処まで俺をーー「審判!」」


 俺は、さっさと始めろと審判に声をかけた。


 審判も理解したのだろう。


「分かりました。試合開始!」


「ふん!力の差をーー」


 パキン。スパッ。ーードサッ。


「?」


 何が起こったか分からず、後ろを振り返るケディ。


 ステージ上には、ケディの右肘から上と共に折れた剣が転がっている。


「アァァーーー!?」


 痛みで我に返るケディ。


「何を呆けている」


「ひっ!?」


 スパッ!スパッ!


 ケディが咄嗟に構えた大盾を十字に切り裂いた。


「さっきの威勢は、どうした?俺を殺してアイリスにも手を出すって言わなかったか?うん?」


「はっ、そっ、それは!?」


 国宝の盾すら、破壊されて再び呆けてやがる。


「ハッキリしろや!あぁ!!」


 英雄覇気を少し出す。


「ひぃ!?」


 英雄覇気により気絶しないが恐慌状態になった様だ。しかも、腰を抜かしている。


「殺すと言ったからには殺される覚悟はあるんだろうな?」


 スパッ。


 左足を刎ねる。


「アァーー!!すみません!すみません!コレを!コレを上げますのでどうか!!」


「あぁ?」


 懐から紙を取り出した。こんな時にまで持ってくるから余程の物なのだろう。


「私の奴隷の契約書です!これでも奴隷売買を一手に任されています!全て差し上げます!!だから、どうか命だけは!!」


「何処までクズなんだお前は?なぁ!!」


 スパッ。スパッ。


 紙と一緒に残りの手足も切り捨てた。


 契約書は、蒼い炎を放ち燃え尽きる。


「ひぐっ!?」


 こういう奴は生かす理由がない。今後の遺恨を断つべきだな。


 剣を突き刺そうとした瞬間、「そこまで!戦闘続行不可能により試合終了!」と、審判に止められた。


 ……仕方なく剣も止めた。


 じょわーーと、音と共にケディの股の間が湿っていくのが見えた。


 それを見て、気分が冷めていく。


「次は無いと思え」


「はっ、はい!!」


 そう言うと、ケディは気を失った。


 これを最後に、俺の竜王祭での試合は終わった。




 第10試合。


「対戦者トーマス氏の棄権により勝者ユーリ・シズ!」


 戦って戦って戦いまくったのに、最後は棄権だった。


「これを持ちましてユーリ様の全試合は終了!勝利数は、なんと破竹の10連勝!!既に優勝と言っても過言ではないでしょうか?」


「そうですね。我が冒険者ギルドとしても鼻が高いです」


 下の席にギルフォードとアンナさんの姿があった。


「ユーリ様は、まだ、力を隠しておいでのご様子でしたが如何でしょうか?」


「そうですね。第10試合で初めて剣を抜いた様ですし。まだまだ実力は未知数という事なんでしょう」


 あの2人、何やってんの?


「そういえば、大変切れ味鋭いものでした。国宝級の装備がまるでバターの様にスパッ!スパッ!と。また、見たことない変化を起こしていましたよね?剣からムチへ、ムチから剣みたいな?」


「アレは、ワイヤードランスと言うようですよ。通常は、剣ですが、遠距離対応時には、魔力によって刀身の延長が可能なのだとか。今まで使わなかったのは集団戦用で強過ぎるからなのかもしれません」


 よく見ると司会と解説という立札が置いてある。


 実は、ずっと解説していた様だ。


 次から次に試合だったから気付いていなかった。

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