竜王祭 本戦。俺の第4〜6試合
第四試合。
対戦者は、Sランク冒険者。
チーム『ローゼンセフィア』のリーダー。カトレア。
……女性だった。
女性でも参加するんだ。と、思った時期が俺にも有りました。
筋肉隆々の大男ならぬ大女。
巨人の血でも入ってるんじゃないかってくらいデカい。
俺が、170cm丁度くらいだから3mくらいか?
「なんだい。何か文句でも有るのかい?」
「いえ、全く。ただ、大剣がなかなかの業物だなと。さっきの魔剣の倍あるし」
武器は、これまた大剣。
さっきの魔剣よりデカいモノを装備している。
「良いところに気付くね。これは特注の品なのさ。普通のだと小さくていけねぇ」
「普通サイズですら俺からしたらデカいんですけど」
「私からしたらアンタらが小さ過ぎるだけさね」
まぁ、確かに、アンタからみたらそうだろうさ。
鑑定。
名称:カトレア
種族:半巨人
やっぱり巨人の血がはいっているな。
スキル:守護者。叛逆者。
なんか硬そうなスキルだな。
守護者は、英雄のような職業スキルみたいだな。
能力は、言葉通り防御特化スキル。耐久上昇の認識で大丈夫。
叛逆者は、巨人の固有スキルか。
魔法無効化と超回復。
……もう、ヒトじゃなくねぇ?
化け物だろ。
直接的な魔法は、無効化して、物理攻撃は、守護者でガード。
しかも、傷付いても直ぐに癒えますとな。
どう勝てと?
「試合開始!」
「焔」
ホントに無効化するのか確かめる。
「残念、私には魔法は効かないよ」
ホントに無傷で立っていた。
「直接的には無理そうですね」
「だったら、間接的にってかい?生憎、呪い等も耐性持ちさ」
知ってる。守護者の耐性だ。
「間接的なのは確かですが、ちょっと違うんですよね」
このステージは、結界により外界と完全に隔離されている。
煙がそうそう逃げない事から大気にも対応している事が分かるが、今回はその点を使わせてもらう。
だから、しっかり息を吸い込んで古代文字、『ニイド』。
このルーンは、欠乏を意味する。効果は、任意のモノの減少。
今回は、酸素を減らした。
「よく分からんが、やられる前にやれば良いって事だろ」
男勝りの口調で大剣の乱舞。それを避ける。
結界。これは、任意の範囲に結界を展開させる。
これで自分の頭を宇宙服のヘルメットの様に囲む。
風。結界内を空気で満たす。
息を止めながら避けるのが辛かったから切り替えた。
「頭に結界を張ったからって何なんだい!」
俺のしている事に気付いていない様だ。
「………」
極力喋らず、消費を減らす。
「無視だと!いい度胸さね!!」
2〜3mの距離を開けながら逃げ続ける。
「はぁ、はぁ、待てや!」
巨体なだけあって酸素の消費が激しいのだろう。
5分もしない内から足元がふらついている。
カノ。カノ。カノ。
火のルーンの連続使用。
カトレアは、足元で爆炎が起こるたびに、必死に避ける。
何かの罠を警戒しての事だろう。
先程、効かないのを確認しているのに俺が使うからだ。
「魔法は効かなーーっ!?」
とうとう、ふらついて膝を折った。
火の魔法を使ったのは、本人の息切れを加速させる為と更に酸素を減らす為だ。
火が燃えると酸素を消費する。
動く事で更に酸素を消費する。
ここで久しぶりに声を出す。
「降参しませんか?もう立てないでしょ?頭痛もしませんか?」
「誰が…する……もんか!」
残念だ。ニイド。
カトレアは、膝を付いたまま酸素欠乏で気を失った。
「意識消失!試合終了!」
審判の確認後。風魔法で空気を戻した。
第五試合。
対戦者、騎士。
ホントに普通の騎士。
片手剣と盾を携えている。
剣の腕はそこそこだった。決して、弱い訳ではない。
でも、今までの相手の中では最低ライン。
紙一重で避けながらスキを見せる。それだけ余裕のある相手だ。
ギリギリの回避にイケると思ったのだろう。
一撃必殺狙いで剣を振り降ろしてきた。
その瞬間、俺は転移。背後から腰を使い、剣の柄で思いっきり頭を殴打した。
騎士は、2m程吹き飛んで動かなくなった。
「気絶確認!試合終了!」
最初の騎士並みにあっさり終わった。
第六試合。
対戦者、騎士。
今回初めてのランス持ち。
騎馬なら分かるが、歩兵でランス。
何故にランス?性能を活かせないと思うが?
「私の槍から逃げられる事はない!降参せよ!!君を殺したくない!!」
槍って言ってるけど、ランスだよね?
円錐形の武器だし。
しかも、勝つ気満々らしい。何かランスに仕掛けでもあるのか?
鑑定。
名称:ジェットランス
レア度:A
性能:火の魔法により突進の威力を強化する。
「試合開始!」
「降参しないなら行くぞ!」
ドォーン!
構えたと思ったら、ロケットの様に猛スピードで突っ込んで来た。
横に避ける。通り過ぎていった。
振り返るとUターンして、また、突撃してきた。
思考加速。
世界がスローモーションに切り替わる。
この状態は思考が重要な魔法戦においては有利だが、行動においては身体が上手く動かない。
上手く動けないのは、命令が筋肉に伝わる伝達速度より頭の思考が先行しているからだ。
しかし、敏捷が高いのでそこそこ動く事が出来る。
ただ、走っているのに歩く感じだが。
目前に迫るランスに合わせて武器を置き、セット完了。
思考加速を解除。
ゴン!
「ぐぎっ!?」
鈍い音と共に騎士が吹き飛ぶ。
高速で移動中に、剣の柄という障害物に当たったのだ。
高速で移動していたのでガラドの時より威力が出た。
ピクリとも動かない。
柄にしたのはせめてもの手加減。
剣なら真っ二つだったろうし。
「意識消失で戦闘続行不可能!試合終了!」
残り4人になった。