創造神タナトス
第一印象は、年寄りの真似をした少年というイメージだった。見た目は若いのに、醸し出す雰囲気が若者では無いと感じさせる。
「貴方は?」
「タナトス。創造神と呼ばれる存在さ。君を呼んだ張本人でもある。此処は狭間だよ」
ここが何処か気になっていた俺にそう声をかけた。
「狭間?死後の世界ではなくて?」
「ここは、死後の世界でもあるね。君は先程病室で死んだよ。だから来ることが出来た」
「そうですか、そんな気はしていました。それで、狭間とは?」
唐突な話ではあるが、意外にもすんなり入ってくるもんだ。
「世界と世界の狭間だよ。ちなみに、上が君のいた世界で、下が俗に言う異世界だね」
「異世界」
上ではなく、下に目を向けた。自分のいた世界なんかに興味はなかったからだ。
「君に話があるんだけど、その前にーー」
腰を曲げ、頭を下げると「済まなかった」と言ってきた。
俺は、突然の事で何がなんだか、意味が分からない。
「君が苦労したのは私のせいだ」
そこからタナトス様の謝罪が始まった。
要約すると俺は5人分の不幸を背負っていたから人並み以上に不幸だったという事らしい。そのせいで色々大変な目にあったとの事だ。
でも、途中からある思いが心を埋め尽くしあまり理解出来なかった。
「……両親が死んだ原因は、俺なんですか?」
両親の死因は、ブレーキ故障による交通事故。加害者の車のブレーキが故障し、その車にはねられ両親は死亡した。
加害者を恨みたかったが、事故によりその人も亡くなった。それにより、怒りの矛先はなくなってしまった。
そして、これらの原因は俺の不幸に巻き込まれたからではないのか?
「それは違う!!」
タナトス様は、ハッキリと断言した。
「君のせいではない!確かに不幸にもご両親は亡くなったが、それは相手の人が原因だ!君は、一切関与していない!」
その言い方に必死さが伝わってきた。どうやら本当らしい。
それを聞いて、俺はホッと胸を撫で下ろし、安心した。
「そうですか」
原因を聞いて、思う所が無くはなかったが仕方ない事だろう。
「それでは、本題に入っていいだろうか?」
タナトス様は、俺が落ち着いたのを見計らって話を切り出した。
「異世界で暮らさないか?向こうなら色々融通を利かせる事が出来る。記憶や知識も残すからスキルを使って冒険したり、あぁ、普通に生活して貰っても構わないよ。どうだろうか?」
そこから詳しく色々説明を受けた。
異世界は、魔力の満ちた世界の為、魔法が発達しており、色々なモンスターが存在する事。人だけではなく、エルフ、獣人、ドワーフなどの亜人もいる事。
文化は、中世くらいではあるが、魔法のおかげであまり不便さはないとの事。
今なら職業スキルというものを5つ与えられる事など。
特に未練もなかった俺はこう告げた。
「はい、喜んで行きます」
「それは良かった!」
タナトス様は、ほっとした様だ。
「でも、俺にも羞恥心があるから子供からやり直しはちょっと……」
それは、なかなかに辛い。
「転生にはなるが成長した状態からスタート出来る様にする。言語などの知識は当然必要だよね?スキル以外で要望はないかな?」
「そうですね。知識は欲しいです。それから病気にならず、デバフとかの状態異常を無効化する身体が欲しいです。ただ、バフとかは受けれる様にして下さい」
知識がないと街に行った時、周囲から浮いて怪しまれる。また、よくある肉体強化とかのバフをかけれないと異世界では不便そうだし。
「なら、活性化した肉体に私の加護を付けよう。活性化した肉体で病気にならず怪我も直ぐに癒える。加護によりあらゆる状態異常を無効化出来る。バフは、君が拒否しなければ効果がある筈だ。他には?」
「いえ、特には……」
あまり与えられ過ぎるのは、怖いな。いい話には、裏が有る。これまでの経験からそう思ってしまう。
「遠慮しなくてもいいんだが……。なら、スキルの話に移ろう」
そんな自分の事を知ってか、苦笑いしながら話はスキルについて進められる。