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2度目の夏が来た

 ミ〜〜ン♪ ミンミン♪ ミ〜〜ン♪ ミンミン♪


 青く澄み渡った大空には、とっても大きな入道雲が出来ていた。日に日に増してくる暑さとセミたちの大合唱が夏の到来を告げていた。

 異世界で過ごす2度目の夏がやって来た。

 しかし、どうやら今年は去年より暑いらしい。初夏だというのに室内に設置された気温計では既に30度近くになっていた。これが外ならもっと暑いだろう。


「ユ〜リ……暑いよぉ〜……」


 目の前には、暑さに負けて溶けきったアイリスの姿があった。スライム特有の透き通った青い肌が涼しさを感じさせていた。気休めだが。


「アイリス、仕方ないですよ。地下水が配管を流れるスピードよりも日光で温まる方が強いみたいですから」


 我が家のメインである配管を使った空調は、元々寒さ対策の為の物だ。そのせいで、去年より太陽の影響を諸に受けていた。


「それじゃあ、クーラーを増やしてよ〜」


「クーラーの使い過ぎは身体に悪いからダメ。談話室ので我慢して下さい」


「でも、涼しさを求めて皆が来たから室温が上がってるんだよぉ〜。下げれないの?」


 アイリスが言うように部屋に人が多くてごった返している。そのせいで外より暑くはないのだが、28度くらいとそこそこ暑いのだ。


「生憎温度調整の機能は付いてるが、冷気を制限するだけでこれ以上下げれないんだよな」


「え〜〜っ……」


 凄く残念そうな顔をしながら仰向けになるアイリス。


「本当に無理なの? この暑さで胸が結構蒸れるんだよ?」


 そう言うとアイリスは襟元を何度も引っ張り、パタパタと服の中に入れる。時折見えるアイリスの谷間が絶景だ。


「そうですね。私も下が蒸れて困ってます。配管の水を以前みたいに冷却出来ないんですか?」


「マリー……。スカートを俺に向けてパタパタするのは良いけど、下着はちゃんと付けようね。とりあえず、隣の部屋に行こうか」


 ちょっと退室。暑さにはまだ負けてないけど、誘惑に負けたからね。マリーも分かってやった気がする。わざわざこっちに向けてパタパタしてたし。


「えっ? アイリスの胸元をガン見してたから?」


 さすがは、女の子。そういう視線には敏感なのですね。通りで周りにいる他の嫁さんたちもパタパタを始めた訳だよ。


「もういっその事、裸で過ごしませんか?」


『いや、ダメでしょ』


「………」


 皆に否定されて、マリーはしょぼーんとしていた。

 そういうのは、夜まで待ちなさい。やりやすい季節だからね。

 その内、身内から通報されるのではと少しビクビクしてます。


「配管を通る水を去年みたいに冷却できないですか?」


「したいのは山々だけど……」


 俺は部屋から逃げ出そうとした人物を捕まえて連れてきた。そして、その子を皆の前に放り出した。


「てへっ♪」


『………』


 リリンが舌を出して誤魔化した。それを見て皆も何かを察した様だ。


「昨日、実験用の魔剣が壊れたからって設置してた魔剣を持ち出した挙げ句壊しました」


「おっ、美味しいフルーツシャーベットを作ろうと思って……」


 嘘か本当か分からないけどそういう事らしい。昨日の夜、妙に積極的だったから問い詰めたらこれだったよ。


「作り直しても調整に時間がかかるんだよ。そのままだと冷え過ぎるし。とりあえず、冷たい物でも食うか。ラズリ、厨房からペンギンを取ってきて」


「ペンギン……? あの青い器具ですか? そういえば、アレは何をする器具なんでしょう?」


「ペンギン!? かき氷を作るの!?」


 アイリスが目を輝かせて飛び起きた。


『かき氷!』


 アイリスのかき氷という言葉を聞いて去年いたメンバーも思い出したのか目を輝かせた。


「久しぶりですね」


「かき氷は基本夏に食べるものだからね」


「私は、イチゴのシロップをお願いします」


「あっ、私は青いやつ! ブルーハワイ!」


『私は……』


 次々に飛び出すシロップの希望を聞きながら全部用意出来るかなと思った。


「という訳で頼めないか?」


「分かりました。直ぐに用意しますね」


「じゃあ、私が氷を持って来るよ!」


「分かった。アイリス頼んだよ」


 それから数分後にペンギン型のかき氷器が持って来られた。やはり、かき氷と言えばこれだろ。頭の所に入れてゴリゴリゴリと削る奴だ。

 久しぶりの登場だな。


「うん、コイツが良いんだよね。氷と言えばペンギンって感じで!」


「ペンギン。知らない生き物だけど可愛いですね」


 初めて見る子たちはペンギンかき氷器に興味津々で見ていた。するとそこへアイリスが帰ってくる。


「ユーリ! 大変!」


「どうした?」


 何やら少し慌てている様だった。当然アイリスの手には氷が握られていなかった。


「氷が殆どないの!」


「えっ?」


「おかしいな。毎日出来てるし、結構あった筈だけど……?」


「あっ、すみません!報告し忘れてました」


 そう言ったのは如月だった。俺は、詳しく聞いてみる事にした。

 原因はこうだ。夏場の為、セリシールの持ち帰りの為の冷却が必要だった。その為、家で作られている氷を使っていたのだそうだ。


「今朝も店に持って行ったから無い訳か……」


「すみません。一応、お茶等に入れる分くらいは残していたのですが……」


 確かに俺も確認して来たが氷自体はあった。しかし、あの大きさでは食事中の飲食では大丈夫だけど、かき氷として皆に振る舞うなら足りなくなる


「どうしようか?」


 俺も皆もかき氷を食べる気分になっている。だから、なんとかしたい所だ。


「如月姉様。()()区画の氷を分けて頂くのはどうです?」


「それだわ!ユーリさん、今から和国に行きましょう! 美味しい天然の氷が手に入る場所が有るんです。案内は、弥生にさせますので!」


「天然氷か……」


 確か天然氷で作るかき氷は美味しいと聞いたことがある。一度それを使ったかき氷を食べてみたいと思っていた。


「良いな。よし、行こう」


 こうして、俺たちは氷を求めて和国へと移動した。

 そこで目的の地の事を聞くとギルドが封鎖している氷のエリアだという事が分かった。何でも行方不明者や死者が多いそうだ。


「夏になったからそのエリアの調査をお願いしようと思ってたのよ。ついでに宜しくね。一応、案内人を付けるから安心してね」


 睦月さんにクエストも出されてしまい軽い気持ちが本格的に挑む事になった。そして、肝心の同行者とは……


「は〜い、皆さん。こんにちは。娘たちがお世話になってます。あそこは、何度も行ってるので任せてね」


「宜しく、牡丹さん」


「それじゃあ、出発しましょう」


 俺たちは、牡丹さんの後について禁止区画に挑むのだった。

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