山神様の器
完全に投稿するのが遅れてしまいました、すみません。前回のアペフチたちとのおやつタイム後からになります。
「ありがとう。美味しかった」
食べ終えた後のアペフチの顔は、また眠たそうな感じに戻っていたが、今度のは満足して眠くなった感じに見える。
「それは良かった。また、御馳走するよ」
「…………」
ペチ!ペチ!ペチ!ペチ!
アペフチは、嬉しさを顔に出すのが苦手なのかもしれない。でも、声や表現に出さなくても彼女の尻尾が全力で表現してくれていた。
「私も満足〜」
「エリスは、食べ過ぎ。まさか、俺のアイテムボックスに入れていた金平糖とかも請求されるとは思わなかったよ」
「有るかなと思ったら有ったんだもん。当然言うわよね? それにアペフチにも食べさせたかったんだもん」
「アレも美味しかった」
「なら、少し分けて上げるよ」
金平糖の入った瓶を耐熱袋に入れて渡した。この環境だと湿気る事はないだろうが、溶ける事はありそうだ。
「………ありがとう」
「えっ、良いな! 私も私も!金平糖欲しい!」
「たまには店で買ったら? お金は持ってるでしょ?」
エリスには、力を貰っているので、給与を支払っていたりする。その上、うちの関係者なら店の商品は全て取り置きが出来るのだ。
だから、おやつタイム以外で欲しくなった人は、店で買って貰っている。
「え〜っ、店の子たちのじゃなくて、ユーリが作った奴が食べたいんだけど」
「そう言われると悪い気はしないな」
こういう事を皆素で言ってくるから、ついつい作ってしまうという自覚があるものの、食べ物を美味しいそうに食べる女の子って可愛いよね。
多分、この気持ちは一生変わる気がしないよ。
「………お店が有るの?」
「あぁ、竜王国の首都に出したんだ」
「さっき食べた物だけじゃないよ!他にも沢山有るの!」
「他にも……」
アペフチは、先程食べたお菓子を思い出しながらどんなお菓子が有るのか想像しているのかもしれない。
彼女の尻尾が右行ったり、左に行ったりとうろちょろしている。
「良ければ、連れて行こうか? 出し入れ自由な転移門を上げても良いよ。行き先は、固定になるけど」
「う〜ん……」
アペフチは、とても困った顔になっていた。
「ねぇ、前々から思ってたんだけどさ。そんなに軽くあげて良いの?」
「うん? 何を?」
「転移門の鍵とかよ。あんな高価なマジックアイテムを自分が作っているからと言って簡単にホイってあげるなんて」
「それ、カリスさんにも言われたんだよな……」
以前、馬車に刻印したことを筆頭にカリスさんへ色々してあげていた。
最初の頃は、普通に受け取ってくれていたのだが、最近では「技術のタダ売りはいけません」と言って買い取る様になったのだ。
しかも、ホイホイあげると需要と供給のバランスが壊れる可能性が有るので、自重してくれとまで言われた。
「まぁ、当然よね。改良して登録者しか使えない様にしてるとはいえ、それ自体に価値があるのだから」
使えないマジックアイテムだとしてもそれを持っているだけで、ステータスになったりするのだ。
「これでも自重してるよ。昔ほどあげてないし。それに信頼出来る人しか渡さない」
「まぁ、ユーリの物だ。好きにすれば良いわ」
「はいよ。そうする」
「でも、アペフチが首都に来るのは無理よ」
「なんで?」
「彼女が実体化出来るのは、この火山が魔力供給してくれるからよ。もし、彼女が山から離れれば実体化を保って居られないわ」
「確かに、それだと無理だな」
外部魔力である魔石を渡す事も考えたが、上位精霊の身体を維持するだけの魔力だと高純度かつ特大の魔石でないと務まらない。
しかも、魔石は常時気化しているので、辿り着く前に消えてしまうかもしれない。
「私としては、もっと色んなお菓子を食べたい。誰かと契約すれば問題はない」
「そうなのか?」
「私が湖からユーリたちへと契約を移した時と同じよ」
「でも、食べたいのを我慢している山神の手前、私は食べれるからといってこの場を離れられない」
うん。今、なんて言った?
「山神もたべたがっているのか?」
「いる。特に、アイスを食べてみたいって言ってる」
「あぁ、確かに言ってるわね」
「………」
俺は耳をすませてみたけれど、そんな声は一切聞こえて来なかった。どうやら、世界に溶け込んでいる精霊でないと無理なのかもしれない。
「2人には聞こえてるみたいだけど、俺には聞こえないぞ?」
「まぁ、魂の状態だし。仕方ないわよ」
「魂の状態なのか?」
「魂で……良いと思うわよ? 神殿が出来た事で、散らばっていた山神の意思がそこへ集結したみたいだし。そのお陰か、今では1つに集約して存在しているわ」
「一応、君の側にいる」
「ユーリの周りを飛び回っているわね」
「確かに周囲に精霊の様な何かを感じるけど、コレが魂なのか?」
「そうよ / うん」
2人曰く、そうなのだそうだ。俺は今回の為に精霊対策はしているので、通常よりも感知し易い。
でも、周囲には気配を感じる。それは、精霊感知にも引っかからないので、存在だけを感じていた。
「魂があるのなら……」
俺は、直ぐにある事を思い付いた。それは、ネフェルタたちが行っていたことだ。
あの魔法によると魂といえるものが存在するのなら、無垢な人工生命体を生み出せる。後は、それに憑依して定着すれば良いのではというものだ。
早速、2人に話してみた。
「確かに、それなら失敗のリスクは特に無いわね」
「失敗しても失うのは器だけだ」
アペフチに説明すると直ぐに山神から返事が返って来たようだ。
「………うん……でも、あまり期待し………ベースには私の………分かった」
どうやら、山神とアペフチとの間で話がついた様だ。
「山神は、是非にだって」
「よし。なら、早速作るとするか」
「必要なのは、山神の魂の一部と雄の魂の一部よね? 山神の魂は……」
「私たちがなんとかする」
「なら、もう片方は当然ユーリね」
俺では山神の魂に干渉出来ない。なので、アペフチがなんとかする様だ。俺は、俺のできる事をするとしよう。
「はいよ。他は全て任せてくれ」
魔法陣を設置するのと魂の一部を用意するだけだ。
「ありがとう」
「それじゃあ、開始ね!」
エリスの合図で俺たちは動き出した。
俺は魔法陣の準備と自分の魂の一部。簡単に言うと、血肉の一部を用意する。特に、遺伝子データが多く含まれる物が適しているらしい。
なので、彼女たちはアレを使っていた訳だ。
「当然、エリスが手伝ってくれるんだよね?」
俺は、自分の魂の一部を回収する為にエリスへとにじり寄った。
「ええっ!? なんで、私が!?」
「だって、エリスは何もしてないし。それに、昔子供作っても良いって言ったよね?」
「そっ、それはっ……!」
エリスは昔の事を思い出したのか?
目は泳ぎ、顔は真っ赤にしてオロオロし始めた。
「何、少し手伝うだけだよ。少しね……」
「えっ、えっと、あの……」
どうやらエリスは押しに弱い様だ。俺は、エリスを連れて岩影に向かった。
数分後。
パンパンパーン! ユーリの魂の一部をゲットし〜た!
「用意した」
「それじゃあ、始めようか」
「うん。………エリスは?」
「少ししたら来るから大丈夫だよ!」
俺は、アペフチから魂の一部らしい結晶を受け取って魔法を発動させるのだった。




