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初めての火山散策

 改めて思ったのだが、竜王国は裕福かつ広大な土地の国だなと思った。


 人の寄り付かない深い森林、農業に適した広大な平野、豊富な水源、稀少鉱石の取れる山々。


 今回向かう先であるエピスト山脈もその1つだ。


 溶岩が絶えず煮えたぎり、夜でも明るいその場所は、有名な火山地帯だ。


 良質な火の魔石の発掘場所としてだけでなく、温泉の名所としても有名だったりする。


 現在、俺はエリスと2人だけで火山を登っている。


 珍しい事に、俺の側にはアイリスたちはいない。


 その理由は、エリスがアイリスの同行を相性の問題から拒否したのだ。


 だから、皆でお出かけする予定を組んだ為にいない。


 その為、俺は仕方なくエリスだけを連れてやってきたのだ。


「ここに火の精霊がいるのか?」


「ええ、そうよ」


 ここに来た目的は、エリスが火の精霊に会うためだ。


「まだまだ、頂上は遠いな。今でやっと半分か……」


「何、疲れたの? 男の子でしょ?」


「……男関係なしに今の状況なら疲れるとおもうよ。だから、今すぐ降りないか?」


「嫌よ。私の歩幅だと何時間かかると思うの?」


 エリスは、火山を登り始めて早々にリタイアしてしまった。


 だから、どうにかしてエリスを運ぼうか考えた結果、肩車になった。


 抱っこして登るにしては、足元が不安定なので見えないのは辛い。


 背中に担ぐにしては、火山対策などの荷物を背負っている為に無理だった。


 その結果が、今なのだ。


「まぁ、今は多少役得だし。良いかな?」


 ピタッと触れるエリスの感覚。そこに布の感じは全くしない。


「役得?」


「ああ、役得。エリス、お前パンツ履き忘れただろ? しっかり密着した感じが伝わるぞ」


「っ!?」


 エリスは、慌てて俺の目を隠した。


 しかし、そんな所を隠しても全く意味がない。


「残念だったな! そんなじゃ、誤魔化せねぇよ!」


「変態! 変態! 変態!」


 エリスは、変態と罵りながら子供の様に俺の頭を叩き始めた。


「そうやって私を孕み袋にするつもりなのね!? 以前の様に、騙されたりしないわよ!!」


 そういえば、一回だけやりかけたんだっけ?


 ダフネがエリスを騙した挙げ句、縛り上げて連れて来たのだ。


「ダフネに騙された方も悪いと思うが?」


「だって、ユーリが美味しいプリンを用意したって言うから……」


「あははっ、何だそれ? なら、おやつはプリンにするか? ストックならアイテムボックスにあるぞ?」


 プリンは人気なので、常にアイテムボックスへ収納している。


「良いの!?」


「ああ、とりあえず叩くの止めたらおやつで出すよ」


 そう言うとエリスは俺を叩くのを止めた。


 子供の様な力だが、何度も叩かれると結構痛かったのだ。


 まぁ、そもそもの話だ。


 アイリスみたいに魔力で服を作ったり、大人に戻れば問題ないと思う。


 あっ、でも、大人になったからと言って、ノーパンなのは変わりないか。


 むしろ、その状態で見せられたら襲ってしまうかもしれない。それだけにエリスの大人版は魅力的なのだ。


 でも、どちらの選択も気付いてないみたいだな?


 俺は、彼女が気付くまで首筋の感触を楽しむ事にした。


「しかし、けっこう登ったな」


 早朝から登り始めて、既に4時間程が経過した。


 転移での移動が可能なら良かったのだが、火山から溢れ出す魔力によって転移座標が常に乱れていた。


 その為、エピスト山脈の下までしか移動は出来ない。


 なので、山脈の下にある竜人族(ドラゴンニュート)火蜥蜴族(サラマンダー)が暮らす街に転移した。


 そこは、温泉街な事もあり、移動歴があったので転移出来た。


「マジで、転移が出来れば速いんだが……」


「それか、空を飛ぶとかよね?」


「………」


「どうしたの?」


「エリス……今のもう一回言って?」


「えっ? え〜っと……空を飛ぶとか?」


「何で忘れてたんだよ、俺!?」


 俺、魔法で飛べるじゃん! 最近、滅多に飛ばないからすっかり忘れてた!


「どっ、どうしたの?」


空間制御(エリアコントロール)!」


 俺たちの周囲を空間魔法の領域で覆った。後は、重力の向きを変えて飛翔する。


「えっ、飛べたの!?」


「最近飛んでないけど、実は飛べた」


 主に、クエストや狩り、訓練でしか使わないからな。


 長距離飛行が必要ならマリーだし、短距離ならアイリスやエロースがなんとかしてくれる。


 個人で飛ぶことはそうそうなかったのだ。


「着いたぞ」


 俺たちは、火山口側の岩場に降り立った。


結界(ソーン)+(ラド)!」


 一応、火山ガス対策のマスクなどを持って来たが、念の為、周囲に結界を張って新鮮な空気を満たした。


「水精霊魔法!アクアドロップ!」


 エリスの精霊魔法が、結界ごと包み、周囲の気温が低下した。


「これで少しは快適だと思うわ」


「俺が、これを抜かなくて良かったな」


 俺の手に握られているのは、氷魔剣アブソリュート。


 一応、効果として、凍結効果がある。


「いやいや、使うなら熱操作系でしょ。凍結地帯じゃないんだから」


 エリスに指摘された。もう1本に切り替えよう。


「なら、これか。炎魔剣イフリート」


 これには、熱操作の効果がある。


 でも、火壁を作ったり、火柱を立てたりと戦闘で使った記憶が多い。


「とりあえず、試してみよう」


 俺は、イフリートを前方で横にして構え、スイッチの入切をイメージしてONにした。


「良いじゃない。さっきより涼しいわ!」


「上手く行ったな」


 エリスの結界でも暑かったが、今は陽光の様な温かさまで落ち着いた。


「さて、精霊に会いに行きます……」


 ボチャッ! ジュッ……。


 俺がエリスに行こうと告げようとしたら、ある物が溶岩から飛び出して来た。


 それは、溶岩の塊の様にも見えるが、たまに形状が変化する。


「ジュッ……ジュッ………」


 しかも、ゆっくりだが、こちらへと近付いてきていた。


「マグマスライム!?」


 スライム?


 俺は、その塊を鑑定する事にした。


 名称:マグマスライム

 レア度:S

 危険度:S

 説明:マグマスライムは特性上、触れたものを高温で燃やしてしまう。その為、常に空腹であらゆる物を捕食しようと試みる。遭遇したら直ぐに対処せねば死ぬ。動きは速く、水に弱い。しかし……。


「ジュッ…。ボチャッ!」


 鑑定を見ている途中で、マグマスライムは俊敏な動きで飛びかかってきた。


(ラング)!」


「あっ、ダメ!? ソイツに水はーー」


 エリスの忠告を他所に、俺の水弾が命中した。


 そして、触れた水がマグマスライムの高温により急激に蒸発して……。


「っ!?」


「きゃあぁぁーー!」


 水蒸気爆発が起こり、強い衝撃が俺たちの結界を揺さぶった。


 それが収まった頃には、マグマスライムは跡形もなく消し飛んでいた。


 そして、その威力の凄まじさは大きなクレーターから想像する事が出来た。


 もし、結界を多重にしていなかったらと考えて、ゾッとした。


「誰? 私を起こしたのは……?」


 衝撃を受けて呆けていた俺たちに声が聞こえてきた。


 見ると溶岩の上をゆっくりと裸足で歩いてくるドラゴンニュートのお姉さんがいた。


「あっ、フッチー!」


「えっ、アレが!?」


 それは、エリスから事前に教えられた火の精霊の愛称だった。

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