全ての原因は、嫉妬だった
エルヴァスの情報を聞きにベルの実家へやって来てた俺たち。
ベルの弟から情報を貰おうとした時、アイリスから緊急念話が聞こえてきたのだ。
二手に分かれて情報を収集すると意外な事が判明した。
「つまり、エルヴァスが刺されたのは事実だけど、今はぴんぴんしてる。現在は、新居でベルが来るのを待ち構えていると?」
「はい、そうです。エルヴァス的には、ベル姉さんが心配して来た所を押し倒し既成事実を作れば、一応実家も認めてくれるという腹積もりの様です」
「そもそも、何で家追い出されてるの?」
フォルテとアイリスからの情報によるとラグス国王は、エルヴァスの悪事をベルの両親に教えはしたが、エルヴァスの家には関与してない様なのだ。
「そういえば、そうですね。彼は、ご両親との仲は良かったですし、親戚や周囲の貴族にも上手く誤魔化してたのに……?」
「何でも身内から嫉妬が原因みたいですよ」
「「嫉妬?」」
「ええ、嫉妬です。確か、アフロディーテという天使でしたか? 彼女を取り合ったからだそうです」
「あっ、察し……」
アディさんの名前が出てきた時点で俺は全てを察した。
「アフロディーテさん?」
どうやら、ベルはまだ分かっていない様だ。俺は、確認の為にも話の続きを聞くことにした。
「エルヴァスは、彼女に相当熱を入れていたのか、付き合い出してからは自慢しまくったそうだす。そのせいで、彼女の本名は直ぐに露呈し、彼女へと好意を寄せていた男性たちから嫉妬を招く形になったみたいですね。
その後、エルヴァスを引きずり降ろそうと考えた男性陣が、彼の悪い噂を広げる事にしました。正確には、蓋をしてあった噂を解放した形です。その為、他の彼女たちの耳にも入り刺されました」
「なるほどね。悪評が立ち過ぎて、家はエルヴァスを排除する事にしたのか」
「いえ、それだけなら更生させるってことで家に隔離する事もあるでしょう」
「なら、別にも要因があったのか?」
「ええ、そうです。実は、エルヴァスの父親と親戚。彼らもアフロディーテさんに好意を寄せていたそうです」
「えっ?」
「エルヴァスが自慢しに来た時に一目惚れしたみたいですよ。だから、家族内で争いになって上から下までめちゃくちゃになりました。そこへラグス国王からの話も漏れて絶縁されたそうです」
「なら、エルヴァスは完全に孤立している訳か」
「そうですね。もう、寄り添ってくれる貴族もいないでしょうし。今後は、新居に引き籠るしかないかと」
完全にアディさんに手を出した事で人が離れて行ったんだな。
アディさんも本気を出したみたいだし、こうなる事を予想して動いたのかもしれない。
「アフロディーテさんって、そんなにモテるんですか?」
「異常な程にモテる。恋文がひっきりなしに来るくらい」
見た目は最高のプロポーションだし、何より胸がデカい。
性格は、おっとりしていて弱そうだから庇護欲をそそられる。
そして、脱げ癖が有るので良く肌を晒す。その為、自分にもチャンスが有るのではと錯覚しやすいのだ。
「師匠。アフロディーテさんとは……その……」
「一切手を出してない」
ベルの反応から何が言いたいのか分かったので、直ぐに否定した。
「本当ですか?」
「本当です。娘であるエロースに聞いて下さい」
俺とアディさんはそういう関係になってはいない。
確かに、二組の母娘に手を出した俺だが、アディさんに出す気はない。断言してもいい。
「そうですか。安心しました」
「とりあえず、現状が把握出来て良かったよ。対処としては、エルヴァスのいる新居に近寄らないで大丈夫そうだな」
「それで問題ないかと。彼は、家の敷地から出られないように、契約されているそうなので」
「なら、ベルは安全だな。良かったよ」
「私もホッとしました。これで、こっちに帰って来ても大丈夫そうですね」
「そうか。俺と結婚するから前より帰りやすくなるのか」
「ええ、前より気が楽です」
「ベル姉さんは、ずっと帰って来なかったので、年一位は帰る様にして下さい」
「うん、そうするわ」
「さて、俺たちは学校に戻ろうか。アイリスたちも心配してるだろうし。それに学校にいるアディさんを回収するべきだと改めて思ったよ」
アディさん効果による破壊力は、異常だと学ぶ事が出来た。次からは、最終手段として考えておこう。
「それじゃあ、今度うちに招待するから皆で遊びに来てよ」
「ありがとうございます。ベル姉さんの事は、ホントによろしくお願いします」
俺は、フォルテと握手して別れた。彼とはいい関係を築けそうだ。
ベルの件など全てが終わった数日後。
久しぶりにカトレアがやって来た。
「よう。とうとうベルも娶ったんだって?」
「カトレア!?」
突然の来訪に、俺たちはびっくりした。
でも、それ以上にびっくりしたのは彼女の手にある物だった。
「えっ? 赤ちゃん?」
「今、妊娠中なんじゃ……?」
「普通のお腹に戻ってる!? まさか、その赤ちゃんって!?」
「おうよ。アタイの赤ちゃんだよ」
そう言って、カトレアは自分の赤ちゃんを見せびらかした。
「でも、早すぎなんじゃ?」
まだ、カトレアが妊娠したと聞いてから6ヶ月ほどしか経っていない。
「巨人の血のせいさね。成長が速くて、まともに産むと母体への影響が出るのさ」
どうやら、最悪死に至るのだそうだ。
「今日は、産まれたから自慢しに来たのと皆の様子見にさ。当然、全員抱いたんだろ? どんな感じだった? 性欲が強かったろう?」
ニヤニヤしながら俺たちをからかってくるカトレア。それに対して、セレナたちは顔を真っ赤にしていた。
どこぞのオジサンか!
とりあえず、素直に伝える事にした。
「セレナが妊娠中。シオンとベルは、今作る予定なし。最低でも、ベルが教師をやめるまでは作らない予定だ。どんな感じかは、彼女たちから聞いてくれ。俺の口から言えない」
「まぁ、計画的にする事さな。子供が多いと大変そうだしな」
「分かってるよ」
子供が増え過ぎて、育児担当者への負担が大きくなっているのだ。気を付けねばならない。妊娠は計画的に!
「さて、ユーリの許可も貰ったし。詳しく聞かせて貰おうか」
そう言って、カトレアはセレナたちを連れていった。セレナたちが、変な事まで喋らない様に祈ろう。
しかし、嫁がホントに増えた。
そろそろ、しっかりと把握し直すべきではないかと思うのだった。




