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ベルの実家に行ってみた

 ベルの実家は、以前調査した時に寄ったので、転移で行く事が出来た。


「うわ〜っ、懐かしいです。私、家に帰るの凄く久しぶりなんですよね……」


 ベルは、自分の家を見ながら嬉しい様な困った様な微妙な表情を浮かべていた。


「どのくらい戻ってなかったの?」


「そうですね。冒険者を始めた時からですので、4年くらいですかね? それ以来は、居場所を転々としてました」


「でも、両親は居場所を知っていたと?」


「ええ、どういう訳か。それで、毎度手紙を送って来るんですよね。そういえば、どうやって知ってたんでしょう?」


 ベル自身は、バレないように居場所を転々と変えたりと色々していたみたいだが、それでも両親は把握していた。


 探偵みたいな者を雇っていたりしたのかな?


 まぁ、それだったらエルヴァスの情報とか得ていると思うので違うかもしれないけど。


「それじゃ、入ろうか」


「………」


 ベルの家に入ろうした瞬間、ベルの足がピタリと止まってしまった。


「どうしたの?」


「いや、なんて言って入れば良いかと……」


 久しぶりの我が家に遠慮でもしているのかな?


「なら、俺が呼び鈴を鳴らすから一緒に入ろう?」


「……すみません。お願いします」


 俺は、ドアに付けられている鐘を鳴らす。


 カラーン♪ カラーン♪ カラーン♪ パタパタパタ!


 綺麗な音色が数回した所で、扉の向こう側が足音が聞こえて来た。


「は〜い。今、お開けします!」


 優しそうな声と共に妙齢の女性が扉から姿を現した。


 髪をしっかり纏め上げて帽子に入れており、露出を抑えたエプロンドレスに身を包んでいた。


 そのことからベルの家のメイドだと直ぐに分かった。


「いらっしゃいませ、お客様。当家に何か御用でも……あら?」


「えっと……コレットさん。お久しぶりです……」


「ベルフォートお嬢様!?」


 コレットさんに対して、苦笑いを浮かべるベル。コレットさんは、俺の事はそっちのけでベルの元まで駆け寄った。


「あらあら、まぁまぁ、こんなに大きくなって! 私は、とても感激です! 旦那様たちにも知らせない……あれ? 今は、魔法学校に行っていると仰っていた気がするのですが……?」


「ええ、それで合ってます。色々有りまして……。それより、フォルテは、今居ますか?」


「フォルテお坊ちゃまならいらっしゃいますよ。お呼びしますか?」


「お願いします。色々聞きたい事が有るので」


「分かりました」


「それでは、彼を来賓室へ案内して下さい。粗相の無い様に。私は、一度自室に寄ろうと思います」


「えっ……?」


 そこで、コレットさんは俺に気付いた様だ。凄く驚いた顔をしている。


「おっ、お嬢様が……!? だっ、男性を……!?」


 そう言うとコレットさんは踵を返して屋敷へ入ると叫び出した。


「お嬢様がーっ!ベルお嬢様が婚約者をお連れしたわよーーっ!」


「ちょっ、コレットさん!?」


 ベルが顔を真っ赤にして凄く慌て出す。


「なっ、何だって!?」


「ベルお嬢様が戻ったの!?」


 屋敷の中が次第に騒がしくなる。どうやら、コレットさんの叫びを聞いて様子を見に来た様だ。


「ちょっ、師匠! 来賓室! 来賓室まで行きます!」


「えっ、ちょっ、ベル!?」


 俺は、ベルに引きずられる様に来賓室へ案内されるのだった。






「あの、お嬢様がねぇ〜」


 来賓室へ通された後、ニヤニヤ顔のメイドさんにお茶を出された。その後、部屋を出て行った。


 しかし、他の従者たちと同じ様にこちらを伺っていると思う。


 少し開いた扉からは、こちらを見詰める多くの目が見えていた。


「すみません。師匠。うちの従者たちが……」


「仲が良さそうでいいじゃないか。家族みたいだな」


「そう言って貰えると嬉しいです」


 申し訳なさそうにしていたベルも従者を家族みたいと言われて嬉しくなったのか、笑顔に変わっていた。


「しくしく……お嬢様……」


 その影響なのか、扉の向こうからは、嬉し泣きも聞こえて来た。


 だが、その空気も一瞬で静まり返る。


「ベル姉!」


 扉が開かれるとベルの弟が慌てた様子で転がり込んで来たのだ。


「フォルテ。久しぶりね。ちょっと聞きたいーー」


 ベルは立ち上がり、弟へ再会の挨拶をしようとした所。


「無事だったんだな!良かった!!」


 弟のフォルテから大切に抱き締められた。


「ここに居るって事は、まだ行って無いんだよな? 変な事されてないんだよな?」


「「はい?」」


 困惑する俺達を他所に姉を心配するフォルテ。


 どうやら、本気で姉の事を心配していた様だ。何か、気になることがあったのかもしれない。


「何かあったのか、ベルの弟?」


「えっ……あっ、申し訳有りません!お客様の目の前で!」


 フォルテは、居住まいを正すと自己紹介された。


「ベルフォートの弟。フォルテッシモ・ミューズと申します」


「あっ、俺は、ユリシーズ・ヴァーミリオンです」


「お話はかねてより聞いております。ユリシーズ公に置かれましては、姉であるベルフォートと結婚して頂けるとの事。父に代わり、感謝を言わせて頂きます。また、今後は気軽にフォルテとお呼び下さい」


「あぁ、よろし……えっ?」


「結婚? 私と師匠が?」


 ベルと結婚するとは公表していないのだが、何故か弟が知っていた。


 ベルの方は、まだ言ってないので普通に驚いている。


「はて? 父からその様に伺っていましたが?」


「私、師匠とそうなるのも有りかなと考えたけど。迷惑になりそうだから言ってないんだけど……?」


「しかし、ラグス国王からも祝福の書状を頂きましたよ」


「ラグス国王が!?」


 なるほど。バラした人は、ラグス国王な訳か。


 口止めしたのにバラすとは、ラグス国王との俺との繋がりを作りたかったのかな?


 有力冒険者の減少や土地柄とこの国は色々あるから。


「あ〜っ、ベル。多分、俺が原因みたいだわ。さっき話しておくべきだった」 


「師匠?」


 俺は意を決して、ベルに言う事にした。


「もしの話だったんだけど、ベルがさえ良ければ俺の嫁にならないか? 俺もベルとならそうなりたいと思ってた」


「……アイリスさんたちは?」


「ベルなら歓迎って言ってたよ。勿論、セレナやシオンも」


「……でしたら、私に断る理由は有りませんね。相手も居れば、エルヴァスも両親も諦めるでしょうし。それに今まで通り好きにして良いんですよね?」


「あぁ、ベルを養うだけの甲斐性は有る。これまで通りにして貰って良いよ」


「なら、よろしくお願いします。私、意外と我がままですけど受け止めて下さいね」


「あぁ、全力で受け止めるよ」


 こうして、俺達は夫婦になった。


「僕は、何を見せられていたのでしょう……?」


 俺達の隣で、一部始終見ていたフォルテは付いて行けなかったみたいだ。困惑して苦笑いを浮かべていた。すまぬ。


「悪い。とりあえず、色々聞きたい事が有るんだ。教えてくれないか?」


 とりあえず、フォルテを席に座らせて話を聞くことに……。


「(ユーリ!)」


「おっ、アイリス?」


「アイリスさんから連絡ですか?」


「ああ、少し念話するからフォルテから話を聞いててくれ」


「分かりました」


 俺はアイリスから、ベルはフォルテから話を聞くことにした。

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