約束
「ごめんって、マリー」
「俺もすまん」
場所を移してマリーの部屋。
天蓋付きの大きなベッドとシックなテーブル。
豪華な化粧台等とお嬢様の部屋って分かる構成だ。
「#$%%$##$%」
マリーは、部屋に帰るなりベッドに潜り込んだ。
恥ずかしさの悲鳴だろう?
潜っているから、何を言っているか聞こえん。
「ど、どうしてプライベートルームの鍵を持ってるんですか!」
布団からマリーが頭を出してきた。
「ガイアスの爺さんに渡された。こっちを使えって」
「お父様!!」
よく考えたら、この状態はガイアスの爺さんのせいでは?
「先客がいた時点で引き返すべきだったな。すまん」
「見られた。見られたのです。ううっ」
顔を赤くして唸っている。
「まぁ、マリーもユーリのを見た訳だし。水に流そう。ねっ?」
アイリスは、ベッドに腰掛けてマリーを撫でる。
「それは……そうですね」
マリーもなんか納得してる。
視線が俺のナニに向いているが。
安心しろ。俺のナニは、立派だ。
見られても苦ではない。
「女の子としてそれでいいんかい!」
「見られて減るものでもないし。お互いに見ちゃった訳だから、妥当じゃない?ワザとな訳でもないし」
ワザとではないが、悪意を感じはする。
主に、ガイアスの爺さんから。
「そりゃあ、そうだが。ホントにいいのか?」
「私は、大丈夫」
そりゃあ、見慣れてますしね。
「私ももう気にしません。竜の時は裸な訳ですし」
確かにそうなんだろうが、人型は別だろ?
「でもな、俺の罪悪感が拭えないんだよな。どっちかってぇと、俺が得しただけだし」
それに向こうの慣習で、見たら罪って意識が強いし。
「俺に出来る事があったら言ってくれよ。何でも良いからさ。それが罰って事でどうよ」
とはいえ、出来る事は限られるし。
何でもいいって約束だが、そうそう無茶な要求はしないだろう。
「良いんですか?」
「良いよ。アイリスも良いよな?」
男に二言はない。だが、他の人が納得するかは別問題。
「それでユーリが納得するなら良いんじゃない?」
アイリスの合意も得た訳だ。
「という事で、何かないか?」
「今の所は特に……」
まぁ、直ぐには無理だな。
「出来たら言えよ。あっ、できれば先にアイリスに伝えて貰うと助かる」
先に誰かに判断させた方が、後に問題が起こっても対処しやすい。
「分かりましたわ。お願いが出来たらアイリスに伝えます」
マリーの同意も確認出来た。
これで、この件は解決。
「それより、明日の準備は良いのですか?」
決着がついたので本戦の話に切り替わる。
「準備って言ってもな〜。何をするよ」
本戦の内容は、こうだ。
11名による連続勝ち抜き戦。
勝った方が残り、次の対戦者と戦う。
予選と違って、武器の使用に制限なし。
トーナメントにしない理由は、国の代表って事もあり、誰が勝っても負けても納得しなかったのだそうだ。
要は、『コイツには負けたが他の奴らには勝てる』みたいな、いちゃもんを付けられるのだと。
それで、総当たり戦にしたら人数の関係上、開催日数が伸びたのだという。
これもまた、判定で決めると納得せず、時間制限の撤廃によるものが原因だった。
それを解消する為に勝ち抜き戦へと切り替えたそうだ。
「何故、連続勝ち抜き戦なら問題にならないんだ?」
「それは、勝ち抜いている者以外に負けた場合、再度挑戦出来るルールを足したからです」
なるほど。
他の対戦者に負けたが、今勝ってる奴とは戦っていないので挑めるという感じか。
結局、総当たり戦と変わらないが決定的な違いがある。
「連戦が必要な為、1試合に時間をかけられない。お互いに短期決戦を望むという事か?」
手の内を極力見せずに終わらせたい。
だから、一撃でってこと。
一撃必殺でやった方が力を温存して妙に戦うより最適だからな。
「はい、中にはまともにやる方もいますが、そういう方は勝てて4回が良いところですね。再度挑戦しても前の戦いで手の内がバレてますし」
手の内が知れるって事もあり、後半組が有利そうだが、それはクジの結果次第。
戦っていない者に挑めるから初回の順番は運だがそこまで問題にならないんだと。
俺が何番目に決まるかは、明日のクジで決まる。