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浮気の結果、刺されることもある

 最初に正気に戻ったのは、アイリスだった。


「ねぇ、ベルちゃん。新居なんて持ってたの?」


 俺達の記憶が確かなら持ってなかった筈だ。


 なんせ、うちの屋敷にベルが帰る場所としての部屋があるくらいだしな。


「持ってない!持ってない!お金は有るけど建てた記憶はない!」


 ブンブンと首を横に振るベルの姿からもそれは真実だろう。


「じゃあ、この新居ってのは?」


「おそらく、エルヴァスが建てたとかでは?」


 可能性としてならそれが有力に思える。


 他に挙げるならベルの両親だろうけど、嫁にやる親がわざわざ建てるかね?


「あの〜っ、皆さん。私、何か変な事を言ったでしょうか?」


 それは、先程の緊急連絡を告げた男性だった。


 突拍子も無い話が原因で、彼の存在をすっかりと忘れていた。


 彼は、緊急連絡をしたにもかかわらず、慌てた素振りがない俺たちを見て心配になった様だ。


「すみません。今の話があまりにも変な話だったので。先程の話をもう一度、詳しくお願いします」


「えっ? あっ、はい。実は、先程事務室へーー」


 彼の話はこうだ。


 ベルの両親の代理を名乗る者が学校宛の手紙を持ってきた。


 その内容は、主に3つ。


 まずは、ベルの婚約者が危篤だという話。


 なので、ベルには至急彼の住む新居へと向かって欲しいという話。


 また、自分たちは既に引き返している為、学校には来られないとの話だった。


 ちなみに、新居の場所はベルバラード領、つまりエルヴァスの家の領地だ。


 そこへ、ベルと2人で暮らす為の新居をエルヴァスが建てたらしい。お金に物を言わせて作った事で、3日程で完成したとまで書かれていた。


「なんで、断りもなく家を建てているのよ……」


 これには、ベルも呆れていた。


「それで、危篤の理由は聞いてますか?」


「はい。何でも昔付き合っていた女性に刺されたとか」


「………」


 話を聞いた瞬間、マジで洒落にならねぇと思った。


 なんせ、俺もいつ刺されてもおかしくないからな。


 嫁たちを大事にすれば………大丈夫だよね?


「ユーリ、どうしたの? 変な汗をかいてるよ」


「……何でもないです」


 それより、この後の行動の方が重要だ。


「とりあえず、情報を仕入れにベルの実家に行こうか。お前の弟なら何か知ってるだろ?」


 ベルには、家督を継ぐ弟がいる。


 その為、ベルへの督促は多いものの、家から強制的に回収される事はなかった。


「そうですね。両親は引き返しているので何処にいるか分かりませんが、あの子なら参加リストに名前が乗って無いので家に居ると思います。それに、我が家に関する情報は全て伝わっている筈ですよ」


「なら、早速帰ろう。家は、知ってるから大丈夫」


「いつの間に……」


「エルヴァスを調べた時に、ついでにね」


 新居の場所は知らないが、ベルとエルヴァスの実家は把握している。


「それじゃあ、私は残るね。私とユーリは、距離が関係なしに喋れるからこっちでも情報を調べてみるよ」


「マジか、助かる。何か、進展があったら伝えてくれ」


「ok。任せて」


「それじゃ、ベル。行くよ」


「あっ、はい。師匠」


 俺はベルと2人で彼女の実家へと転移した。




 *******************




「行ってらっしゃい」


 ユーリが去った後、マリーと合流する事にした。彼女にも事情を伝える必要があるからだ。


 私は、自分の懐を探り、ユーリが作ったイヤリングを取り出した。これは、以前から使っていたインカムをユーリが女性用に改良し、可愛くしたものだ。


 普段から使っても問題ないのだが、かなり貴重なマジックアイテムなので、離れた状態でかつ密な連絡が必要な時にしか使わない様に私達で決めた。


 今は、その時なので遠慮なく使う。


「あっ、マリー? 聞こえる?」


「あっ、アイリス! 丁度、連絡しようとしてたんです!」


「そっちでも何か起こったの?」


「実は、ベルさんのご両親が今着いたので、これから挨拶して同行するとの連絡をーー」


「ちょっと待って、マリー!?」


 私は、マリーの言葉に疑問が生じた。


「ベルのご両親が来たの!?」


「はい? ええ、今しがたいらっしゃいましたよ?」


「だって、おかしいよ! 私達は、ベルのご両親が引き返したって聞いたのに!」


「えっ? ……ちょっと、来た目的を聞いてみます」


「お願い! 私もそっちに合流するから!」


 学校の中庭に居るとの事なので、急いで向かう事にした。





 中庭に向かうと直ぐに2人を発見する事が出来た。


 ルイさんの美貌に惹かれて集まった人たちによって集団が出来ていた。側には、緑髪をした幼女の姿もちらりと見えた。


 見間違う筈がない。アレは、マリーだ。


「ルイさん! マリー!」


 2人に声をかけつつ、私は彼女たちに駆け寄った。


「アイリス! ここです!」


 マリーが飛びながら手を振る中、私は人混みを縫うように進んだ。


「あら、アイリスちゃん。お疲れ様」


「ルイさんもお疲れ様です。協力、ありがとうございます」


「良いのよ。あの子の知名度が上がれば上がる程に、周囲への破壊力が増すのだから」


 のほほんと語るルイさんだが、言ってる事は鬼の様な発言である。


 そうやって、多くの男をアディさんのハニートラップにハメて来たんですね。


「それで、何か分かった?」


「それは、こちらのお二人から聞いた方が早いかもしれません」


 マリーが手で示した方を見ると貴族の夫婦がそこにいた。


「ベルちゃんのご両親?」


「はい、そうです。お初にお目にかかります。アイリスさん」


「娘がお世話になっています」


 ベルのご両親は、凄く丁寧な挨拶をしてくれた。


「あっ、こちらこそ。ベルちゃんには色々と助けられてます」


 私も釣られて、きちんと挨拶をする。


「そんな畏まらないで下さい。これからは、娘も嫁ぎます。だから、貴方がたも我が娘の様に接したいと考えています」


「……娘?」


「はい。ラグス国王よりユーリさんの所へ嫁がせよとのお達しを頂きました。なんでも、竜王国とラグス王国の架け橋にと。娘もユーリさんを慕っていると聞いてましたので、嫁がせる事を決めました」


「どうやら、ラグス国王が手を回して下さった様なんです」


 ユーリ。貴方が秘密にしても国王が普通に喋ったみたいだよ。


「エルヴァスは、良いの?」


「ああ、彼ですか? ラグス国王や他の貴族から聞きました。全く、我が息子の様に見ていたのに、裏ではあんな酷い事を色々していたなんて知りませんでしたよ」


 ベルのご両親は、私たちより情報を持っていた。


 浮気によって多くの子を孕ませた挙げ句、無理やり堕胎させたなどは、初耳だったので正直驚いた。


「そんなことまで伝えたんだ」


 国王の力を使って調べたって感じだね。


 私たちが行動を起こして2週間くらいだけど、情報が詳細過ぎる。


「ええ、国王様より直接お聞かせ頂きました。これが、同じ貴族なのかと恥ずかしくなりましたよ。なので、そんな奴に娘はやらないと思いましたよ。

 そう思っていたら、エルヴァスはこの件で実家から絶縁されたじゃないですか。なら、絶対にやる事はないですね。

 今頃、追い出す為に急ピッチで建て始めた別邸にでも引き篭もってるんじゃないですか?」


「ちょっと待って! 情報が多過ぎる! えっ、エルヴァスって絶縁されて貴族じゃないの?」


「ええ、そうです。今頃、彼を追い出す為に急ピッチで建て始めた別邸にでも引き篭もってるんじゃないですか? 3日くらいで建つと聞きましたよ」


「………」


 ベルの話だと実家からここまで普通にきたら一週間かかるそうだ。


 急いだ場合は、4日とかからないらしい。それは、エルヴァスも同じだそうだ。


 もし、ベルの両親が出発する日に家を作り始めたら3日目に終わる。そこから急いで学校へ来たとしたら4日以内。


 合計で、1週間かかる計算だ。


 この場合、ベルの両親は急いでない分、途中で追い越せるかもしれない。


「マズい! ベルが危ないかも!」


 私は、直ぐにユーリへ伝える事にした。

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