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コレって誰得?

 異界へと意気揚々に足を踏み入れた俺たち。


 何が起ころうとも対処出来る様に、防御陣形を敷いて行動した。


 しかし、それから数分後。俺たちの陣形は壊滅した。


「ちょっ、キモっ!? ヌルヌルが!? ヌルヌルがぁああっ!?」


「ちょっ、何処に入ってっ!? やっ、止めっ!?」


「いやぁああーー!掘られるぅううーー!」


 触手に蹂躙される男連中。メンバー編成を間違ったか?


 やはり、ベティを連れてくるべきだったか?


「でも、これは誰得なんだ?」


 どうやら触手たちには絞め殺す意思はないらしい。ただの愛情表現なのか身体を触手で撫で回している。


 分泌されている粘液がローションの様に纏わり付き、彼らは全身ヌルヌルだ。


 それに対してうちの嫁さんたちは酷い物だ。


 スパッ!


 アイリスに切り刻まれる触手。


 ブチッ!


 マリーに引き千切られる触手。


 バチッ!


 ネフェルタの放電で丸焦げになる触手。


 本来、触手に絡まれるべきなのは、彼女たちだと思うのだが?


 しかも、挙げ句の果てにこんな事を言っているし。


「ねぇ、これ、ユーリが持ってきたタコ? アレに似てるから食べられそうじゃない?」


「確かに、香ばしい匂いがしますね」


「妾の記憶が正しければ、食せる筈じゃ」


 名称:テンタクルリーフ

 レア度:A-

 説明:異界に生息する医療植物。動く物に反応し捕らえ、全身隈無く診断する。副次現象として植物が分泌する粘液が全身に塗りたくられることになる。また、植物の触手は茹でたり焼いたりし、食用にする事も可能。切ってもまた生えて来るので安心して採取して良い。

 オススメ:たこ焼きの具材にしましょう。もしくは、茹でた後に刺し身にして、味噌酢で召し上がる事をお勧めします。


 確かに食せる事が書いてある。


「帰ったらタコ焼きパーティーでもするか?」


「「やったーー!」」


 アイリスとマリーは、ハイタッチしていた。相当気にいっているらしい。


『和んで無いで、助けてくれませんかね!?』


 必死な形相で助けを求めるグレイたち。


 己の尻がピンチなのだ。当然といえば当然か。


「親切に診断してくれてるんだよ。鑑定でも死ぬことは無いみたいに書いてあったから」


 治療と称して全身ヌルヌルにされるみたいだけどね。


「というか、何で捕まってるの? 普通に感知出来たでしょ?」


「足元まで感知してませんよ!」


「仕方ないな。助けてあげるよ。でも、その前に……」


 アイテムボックスからカメラを取り出します。


 レンズをグレイたちに向けます。


 シャッターを押します。


 グレイたちのブロマイドが完成します。


『何に使うの!?』


「えっ? 君たちの嫁にプレゼントしようかと?」


 俺には、野郎の醜態なんて見る気はない。


『鬼か!?』


「喜ぶと思うけど?」


 裏でBL本とか出回っているくらいだしね。


 俺が知っている事は気付いていない様だが。


「以前に渡した奴も……忘れてくれ」


『何を渡したの!?』


 あははっ、ちょっと寝技の稽古をしていたから連写しただけじゃないか。


 嫁さんたちには、好評だったぞ。


「とりあえず、降りて来いよ」


『降りられないから助けを求めてるの!!』


 やれやれ、降ろしてやるか。


 彼らに巻き付いた触手をフラガラッハで斬り刻む。


 流石に、野郎に絡み付いた触手は食いたくないな。


 なので、穴を掘って埋める事にした。その内、復活してくるだろう。






『酷い目にあった……』


「もぐもぐ……まぁ、経験不足だな。俺やアイリスたちは大丈夫だったし。もぐもぐ……」


「もぐもぐ……リリスたちが居なくて良かったね。居たら、訓練増やされるよ……もぐもぐ」


「もぐもぐ……最近、警備しかしてないからでは? もぐもぐ……」


「もぐもぐ……焼いただけでも美味いのう」


『とりあえず、食べるの止めて下さい』


 げっそりとした男連中を他所に焼きゲソならぬ焼き触手を食べる俺たち。


 コレが、思いの外美味いのだ。


 持って帰って、家で育てようかな?


 一応、生き物じゃないからアイテム扱いでボックスに入れらるし。


「よくそんなモノ食えますねぇ……」


「コレが意外に美味いんだよ」


「あははっ、そんなまさ……無理やり食わそう……もごっ!? 美味っ!?」


 無理やりグレイの口に突っ込んでみた。


 どうやら彼もコレの美味さを知った様だ。


「コレは色々使い用が有りそうだよな!」


 俺は、アイテムボックスに収納するのだった。






「それで、ルイさんは何処まで行ったんだ? 後、ついでにリリンは?」


「リリンさんはついで何ですね……」


「危険はないみたいだしな。これで反省してくれれば良いんだが……」


 そもそも、何で俺の部屋をこんなにしたんだろう?


 普通のイタズラなまだしも空間拡張をするレベルって……?


「うん? あっ、いたいた。ルイさんの位置を把握したよ」


「ほんとか、アイリス」


「うん。側にリリンも居るよ」


「よし、直ぐに合流だ。最後まで気を抜くなよ。次拘束されたら動画を撮って売るから」


『全力で気を付けます!』


 全員が気合を入れた所で、ルイさんたちの所へ向かう。





 着いた所は、戦場跡だった。


 陥没した地面。燃えた木々。更に、触手を生やした魔物が引き千切られて大量に転がっている。


 それから………………血塗れのルイさん。


 うん。犯人は、ルイさんですね!


 そして、粘液塗れで両手を地面に付き落ち込んでいるリリン。


「どういう状況?」


「美味しくないって……美味しくないって言われた……」


「リリンちゃん。触手の魔物に食べられたみたいなんだけど、腐葉土みたいで美味しくないって言われたみたいなの」


「あぁ、そういう事ね」


「それは、仕方ないよ。リリンさんは、200年近く生きてますから」


「分かる者は、分かるからのう」


 どうやら女性陣に分かる事の様だ。


 男性陣はというと俺みたいに首を傾げて……ロギアたちエルフは例外だな。目を反らしているから絶対何か知ってる気がする。


「説明ヘルプ。俺も含め分かって無い人が多過ぎる」


「あ〜っ、簡単に言うと歳を取り過ぎてて加齢臭のあまり抱きたく無いって言われたみたいな?」


「深く言うなら体内の魔力が濁っていて嫌厭された形ですね」


「クンクン……この薬草の匂いも原因じゃな。これは奴らが好まぬものじゃ」


 薬草の匂いは、リリンが調合で遊んだ結果付いたのだろう。


「そんな感じで助けに来た時からこうよ。お陰で無事なのだけど、まさか私が襲われるなんてね」


 リリンはダメで、ルイさんは有りだったのか。


 年齢的には、ルイさんが断然上の筈だが、見た目に騙されたか?


「ユーリ君。今、失礼な事考えなかった?」


「ノー! マム!」


「竜種の魔力は何歳になっても純粋じゃからな。仕方なかろう」


「あら、そうなの? それは嬉しいわね。所で、お嬢さんは何方?初めて見る気がするのだけど? 新しいお嫁さん?」


「その通りといえば、その通りなんじゃが……。妾は、魔女王をしていたネフェルタじゃ。忘れたかえ、ルイーズ殿?」


「………あっ、あのネフェルタちゃん! 遊びに行く度、よく後ろをついて来てた! まさか、生きてたの!?」


「生きておった。まぁ、こんな身体になったがのう」


「あら、大変ね。でも、ユーリ君の性癖ならイケるわよ!」


 どうやら、2人は知り合いらしい。


 そして、ルイさん。俺の性癖について何処まで知っているのか?


 今度、じっくり聞く必要が出てきた気がする。


「とりあえず、帰るか。お〜い、リリン。帰るぞ〜!」


「うぅ〜〜っ」


 ショックが大きかった様で未だに動く気がしない。


 これは、罰を止めてやろうかな?


「もう、リリン。帰らないと魔力の淀みを解消しないよ」


「えっ、出来るの?」


 予想外の言葉にアイリスへ聞き返した。


 希望が見えたのか、リリンも顔を上げる。


「発散と補充を繰り返せば良いだけだよ。純粋な魔力を注いで貰って、垂れ流す感じ? 言い換えるなら俺色に染まれ的な? ユーリが頑張れば済む話だよ」


「はい?」


 アイリスの言ってる事が良く分からない。


「いつもの事だよ。いつもの。頑張って、腰振ってね」


「………」


 それを聞いて全てを察する俺なのだった。


「………フッ、とりあえず何回?」


 もう、悟りの境地だなこれ。


「20回くらい?」


「………頑張ります」


 俺たちは、リリンとルイさんを回収し帰路に着いた。

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