落ちた先での鎖プレイ?
ダンジョンの落とし穴にかかり、落下する俺とセレナ。
「空間制御!」
直ぐ様、重力を制御して上に戻ろうとした。
「チッ、間に合わなかった!」
俺たちが落ちて来た穴は既に閉じており、上に登る事が出来ない。
天井に手を当て、魔力感知を試みる。ある程度の厚さなら壊す事も可能だろうと思った。
しかし、魔力を拡散させる効果があるのか魔力感知で正確に見る事が出来ない。
構造や厚さが分からない以上、無理やり壊すのも難しいそうだ。
………仕方ない。
俺は諦めて、素直に下へ降りる事にした。
「ごめん!私のせいで!」
「気にするなって、ダンジョンはこれからだからな」
下には、剣山や毒沼などは無く、普通に降りる事が出来た。
それから俺は、気落ちしているセレナを元気付ける。
「この状態で離れ離れになるのは余計に不味いな。だから、お互いに手を繋ごう。剣は右で振るうんだっけ?」
セレナの左に立ち、その手を握った。
「そうだけど、両手じゃないと威力が……」
「大丈夫。銃でサポートするから」
剣より銃の方が威力が強いから牽制して貰えれば、大抵の敵は大丈夫だろう。
「あっ、そういえばアレがあった筈……」
ガサガサと自分の荷物を漁りだすセレナ。
「あったあった!はい、コレ」
セレナが取出した物が、俺の右腕でガチャッと音を立てた。
「ガチャッ?」
何やら妙な重さを腕に感じる。
視線を向けると鎖付きの腕輪が付けられていた。
「………ナニコレ?」
「…………」
笑顔で自分の右腕を見せてくるセレナ。
彼女の腕にも同じ様な物が付けられていた。
「これで逃さ……離れ離れにならないね♪」
「いやいや、なんでこんなの有るの!?」
「犯罪者を捕まえる為?」
「なんで疑問系!?」
「あっ、そんなに引っ張ったら……あん!」
「うおっ!?」
俺の腕に引っ張られて、セレナが倒れてきた。その影響は、俺にも来る。
俺たちは、抱き合う方で倒れてしまった。
「イタタタッ………」
「ユーリ君は積極的ね」
「えっ?」
むにゅ。
手が何かの塊に埋もれている。動かすとむにゅとした感触が伝わってくる。
「あん!そんなに激しく掴まなくても……」
「悪い!」
直ぐに把握した。この手の感触がセレナのおっぱいだという事を。
「あっ……そのまま続けても良いのに」
俺がセレナから手を離し立ち上がると残念そうな顔をしてセレナも立ち上がった。
こっ、これは誘っているのか……?
だが、ここはダンジョンだ。気合いを入れ直さないと!
頬を叩いて、現状を把握する。
ここは通路の一部で、行き先は前後に2つ。
ただし、何故か壁に矢印が付けられており、前に進む様に示している。
「これは、前に進めという事なのか?」
「あからさまに罠な気がするけど、覚悟できる分、こっちの方が良いかも?」
「そうだな。前に進もう」
矢印通りに進んだ結果、ある部屋に辿り着いた。
「「何の部屋だ?」」
その部屋には、レースのカーテンに包まれたキングサイズのベットが置かれていた。
しかも、その上には黄金に輝く等身大の卵が置いてあった。
「何の卵だ?」
この卵も鑑定による情報が得られない。
「私も初めて見るわ」
俺たちは、卵の調査を始めた。
最初は黄金色の為、ただの置物なのかと思っていた。
しかし、実際に触ってみると金属の感触が無かった。
「音の感じから内部に空洞があるわね」
セレナが内部の確認で卵を軽く何度か叩く。
ピキッ!
「「えっ?」」
セレナが原因なのか分からない。だが、卵の頂上にヒビが入った。
ピキッ! ユラユラ。ピキッピキッ! ユラユラ。
どうやら、何かが産まれる様だ。
ヒビが広がると共に卵が左右に揺れだした。
「何が産まれるって言うの!」
「分からない。でも、警戒を怠るな!」
俺たちは武器を構え、卵を見据えた。
そして、卵の上部がぽ〜んっと吹き飛んだ。
「「おっ、女の子!?」」
金色の髪をなびかせ、ケモ耳が良く似合う女の子の上半身が姿を現した。
産まれたばかりでナニも身に着けおらず、目に映る2つのサクランボが綺麗だった。
「きっ、君は……?」
魔物なのか、獣人なのか確認する為に声を掛けた。
すると彼女は、閉じていた目を見開き、翡翠の瞳でこちらを見据えた。
「ほう。そなたたちが……」
そう言って卵から出て来た彼女。
「スフィンクス!?」
彼女の下半身は、獅子の肢体をしていた。
「妾の名は、ネフェルタ。この国の皇女だった者じゃ。我が身は、かの戦争で傷付き朽ちかけていた。なので、スフィンクスとの一体化をはかった結果がこの姿になる」
俺たちの警戒を余所に彼女はどんどん近づいて来た。
「聖なる剣を携えし勇者が、まさかオナゴとは……」
彼女は、セレナを見て残念そうに呟いた。
それより、今勇者って言わなかった?
「だが、神の叡智を携えし者がオノコだったのは僥倖じゃ。賢き者の子は、賢くなる」
俺に対しては、嬉しそうに微笑むのだった。
「故に、妾は汝らに問わねばならぬ。もし、正しく答えられば、お主たちの望みは叶おう。じゃが、間違った場合は……」
そこから先は何も言わなかった。多分、死だと思う。
「「はぁ……」」
一方的に進行する彼女に俺たちは完全に置いて行かれるのだった。
とりあえず把握出来たのは、質問に答えると望みが叶うらしい。
なら、このダンジョンから脱出する事も容易だろう。
「まずは、オナゴに問う。始まりは1人。ある時に2人。また、ある時は3人となる。これは何ぞ?」
「…………えっ?」
問いとは、謎掛けの事らしい。とりあえず、考えよう。
1人から2人になって、更に3人になるねぇ……。
「むっ、難しいわ!ヒントは無いの!?」
「妾からは与えられぬ」
「俺が与える分には良いのか?」
「分かるの!?」
まぁ、考えたら意外にあっさり出た。多分、あってる気がする。
「答えを言わぬ限り、汝の好きにするが良い」
「どうも。それじゃあ、ヒント。両親と子供」
答えを言わなければ良いのだろう?
「そうか!家族ね!最初は、お一人様。旦那が出来て2人。子供が産まれて3人ね!」
「正解。少しズルい気もするがオナゴなら構わぬか……」
どうやら、男に対する質問は難しいものらしい。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三……」
「人間」
「…………」
どうやら正解らしく、ネフェルタは黙ってしまった。
まさか、こんな定番な謎掛けが来るとは俺も思わなかったんだよ!
「まさか、即答するとはのう……」
ベットにとぼとぼ戻って行くネフェルタ。
即答してしまったからショックを受けたのかもしれない。
彼女は、ベットに横たわるとこう告げた。
「望み通り、妾を好きにするが良い。しかと汝の子を孕んでみせよう」
「「なっ!?」」
報酬は、ネフェルタ。これが今回の結末の様だ。




