見ちゃった
「なぁ、ガイアスの爺さんよぉ。アンタに言いたい事がある」
「奇遇じゃのう。儂もじゃ。で、何じゃ?」
「俺、楽しみにしてた訳よ。なのに、なのにだ。なんで、ジジィと一緒に入浴せにゃならん!!」
予選終了後、お城の浴室を貸し切り、アイリスと2人っきりで入浴する予定だった。
ちゃんと許可もこの爺さんから取った。
「そりゃあ、お主に文句と渡すモノがあったからの」
「外で渡せよ!アイリスだと期待して振り返ったらジジィだったとか!返せ!俺の期待を返せ!!」
振り返って、ジジィを見たときのあの絶望感っないわ〜。
「まず、文句なんじゃが」
「続けるんかい!!」
空気読めや、ジジィ。
「お主、今後英雄覇気禁止な。お主でも分かっとるじゃろ?」
「……分かってるよ」
試合後の大混乱が思い出される。
********************
「医療班、急げ!!呼吸が止まっている!!」
「誰か手を貸して!医務室に搬入するから!!」
「既に医務室は、気絶者で満員だぞ!!」
「廊下にでも寝かせなさい!!」
100人もの治療に、待機していた医療班が走りまわる。
ただ、予定より忙しく動いている。
何故なら気絶者と恐慌状態の者の一部が、心肺停止しているのだ。
安堵して気が抜けたせいか?
試合終了後、倒れ伏した。
気絶者も意識が戻ったが、俺を見て再び気絶して倒れた。
今後、使用しない事を祈ろう。
なんとも言えない気持ちになる。
で、降参した人たち。俺を崇めるの止めない?
鬱陶しいんだけど。
********************
「アレは、精神系のダメージだからタチが悪い」
「エリクサーを数滴飲ませるか?というか、効くのか?」
「効くぞ。傷とかと違うからあまり知られておらん。じゃが、そこまではいらんて。起きても2、3日悪夢を見るだけじゃろうから」
エリクサーって、本当に万能薬なのな。
「なら、いいや」
野郎がどうなろうと知った事ではない。
「という訳で、本戦では使用禁止の項目を足すからな」
「はいよ。それで、渡すモノって?」
「ほれ、鍵じゃ」
パシッ。
ガイアスの爺さんから鍵が投げ渡された。
細かな細工が施されており特別な鍵だと分かる。
「何の鍵?」
「浴室入口に扉があったじゃろ?あそこの鍵じゃ。使うならあっちを使え」
え〜っと、はいはい、確かに有りました。
何やら厳重にロックされた部屋が大浴場の隣に。
「あっちは儂ら個人用のじゃ。儂の鍵をやろう」
「良いのか?」
「貸すと言ったが、こっちじゃない。そっちを使え」
大浴場じゃなくて、個室温泉って事か。
「ちなみに、アイリスの嬢ちゃんには、お菓子を与えて儂が出るまで待機してもらっとる」
そりゃあ、入って来ねぇわな。
でも、楽しみが出来た。
「……有り難く使わせて貰う」
鍵を手にアイリスの所へ向かう事にした。
カチャ。
「開いたぞ。奥に行こう」
「ここ気になってたんだよね」
アイリスと直ぐに合流出来たので行く事にした。
バタン。
入ったら扉が自動で閉じた。
押しても引いても開かないので調べると中にも鍵穴があった。
差して確認すると開いた事からオートロックみたいなものだった。
先へ進む。
「おっ、脱衣場だ」
少し行くとカゴの置かれた棚を見つけた。
俺達は脱衣を済ませ、奥へと進む。
「はぐれない様に手を繋ごう」
「うん」
奥に行くほど、湯気が立ち込めてくる。
「アイリス居るか?」
「居るよ。湯気が凄くてあまり見えないけど」
手を繋いでいるが確認したくなる。
湯気の隙間からも見えたので居るようだ。
「しかし、凄い湯気だな。先がなかなか見えやしない」
「魔力感知で足場確認した方がいいかも」
確かにそうだな。
「私がするね。こっち」
魔力感知はアイリスの方が上手い。
繋いだ手を引かれるまま奥へと進む。
ドドドドッ。
お湯の出る音がした。
「あれ?」
「何かあったか?」
「う〜んとね。おそらく誰かいるみたい」
先客が居るようだ。
「出るか?」
「見知った気配だし、大丈夫でしょ」
ガイアス爺さんのイタズラじゃないだろうな?
野郎にアイリスの身体は見せたくない。
「俺が先行する。野郎だったらスライム化な。場所は何処だ?」
「了解。場所は、真っ直ぐ行った所」
俺たちは気配を殺しながら目標へと近付く。
ピチャーン、ピチャーン。
「〜♪〜〜♪」
水滴の音に混ざり鼻歌が聞こえてきた。
距離が近い様だ。
「あっ、これは。ユーリ、ストップ!ストップ!!」
「はい?」
アイリスの静止も虚しく目標へと近付いてしまった。
そこには、水滴で翡翠の髪を濡らした少女がいた。
「………んっ。んんっ!?」
向こうも俺たちに気付いたらしく目が合った。
そこにいたのは、風呂故に何も身に着けていないマリーだった。
火照った白い肌がなんとも言えない妖艶さを生み出している。
「………」
急いで視線を外す。
合法ロリとか好きだからヤバイ。
奥さん居るのに。
「鼻歌がね。いつもと同じだったから……」
元気が取り柄のアイリスが、バツの悪そうな顔をしているのが目に入った。
「%$%#%#%%!?」
そして、マリーは声にならない悲鳴を上げた。